EV大国中国の「光と影」価格10万円! 激安EVの気になる性能
EV大国・中国の「光と影」 最新レポート② 大ヒットした45万円のEVに続いて昨夏に登場した新商品 日本上陸もありえるのか?
世界の販売台数の半数近くを占めるEV大国となった中国。その最大の特徴は激しい価格競争だ。

なかでも世界を驚かせたのは昨年6月に発表された『宏光(ホングワン)MINI EV』である。値段は日本円で約45万円。昨年末に販売が始まったトヨタの超小型EV車『C+pod』の標準グレードが165万円であることから考えても、激安だ。
さらに中国の自動車メーカー『常力(チャンリー)』は昨年7月、世界最安と謳(うた)うEVを発売。一台約10万円という価格破壊を実現した。今年春からはアメリカでも発売がスタート。半年間の売れ行きは好調だという。自動車ジャーナリストの加藤久美子氏が、その性能を語る。
「車内は広く4人まで乗車可能。最高速度は時速35㎞、走行距離は一回の充電で約32㎞です。設備も充実しており、暖房器具やラジオなどの一般装備に加え、後方を映すバックモニターも付いている。10万円とは思えないクオリティです」
なぜこんな低価格で販売できるのか。その裏には徹底したコストカットがあるようだ。現地の大手自動車部品メーカーの中堅社員が明かす。
「驚いたのはグレードを上げないと、バックミラーさえ付いていないこと。少しでも不要なものはすべて排除されており、バッテリー容量も最低限です。また、衝突安全性や馬力が足りず、中国でもナンバーが交付されないため、自動車として公道を走れません。それでも10万円でEVを、普通車と変わらない装備で造れるという事実には驚きました。コスト管理と実用性の両立が今後の課題です」
日本で買うことができる日は来るのだろうか。前出の加藤氏が予想する。
「日本の安全基準は中国よりも高いので、乗用車として普及する可能性は低いです。ただゴルフカートのように私有地で使うなら可能。それでも輸送費や関税などで価格は3倍以上になるでしょう」
日々進化を遂げる中国のEVだが、日本上陸にはまだ時間が掛かりそうだ。

『FRIDAY』2021年11月26日号より
PHOTO:産経新聞社 Electric Import Motors