皇室ジャーナリストが振り返る「愛子さま20歳、祝福の軌跡」
天皇・皇后が大切に育んできたひとり子「愛子さま」が、12月1日、20歳の誕生日を迎えた。学習院大学2年生になった愛子さま。誕生日当日は木曜日で「大学の授業がある」ため、成年行事は5日の日曜日に行われた。

「生まれてきてくれてありがとう」
子どもを授かり、出産することはとても大きな出来事だ。生まれるまでは「どうか無事にこの世に、この手に」と願う。
愛子さまが生まれたとき、母になった雅子さまは
「生まれてきてくれてありがとう」
と言った。幸福なみどりごとしてこの世に生を受けた愛子さま。けれども、その成長の過程は「順調なこと」ばかりではなかった。
「待ちに待ったお子様の誕生に、国中がお祝いムードに包まれました。が、そのうちに、マスコミに出る機会が少なかった愛子さまに対して『発達になにか遅れがあるのでは』という噂が流れたんです」
皇太后美智子さまのご結婚以来、60年あまり皇室の取材を続けている皇室ジャーナリストの渡邊みどりさんはこう証言する。
「公開される画像をみて『表情が乏しい』ですとか『言葉が話せないから動画が公開されないのだ』などという報道もみられました。皇太子だった殿下と雅子さまは、これにたいへん心を痛めたんです」
なぜ、そんないわれなき「噂」が出るのか。あるいは、もしそれが事実だったとして、それがなんだというのか。子をもつ親として、人として、そんな思いがあったことは想像に難くない。初めての子育てに向き合う母・雅子さまのお気持ちを思うと胸が痛む。

「そのためか、当時皇室の情報としては異例の『音声付き動画』が公開になりました。2004年の夏です。愛子さまが『かくれんぼ』をいう絵本を上手に読む声が可愛らしかったですね」
2006年、学習院幼稚園に入園、その年の夏にオランダを訪問する。
「それまで、カメラの前にでると身を硬くして表情を強ばらせ『笑顔がない』といわれていた愛子さまですが、このときは最高の笑顔を見せましたね。オランダ王室と皇室は深い親交があり、雅子さまも心がゆったりできたのでしょう。
愛子さまにとって、お母様のそんなご様子を感じ、また同世代のアマリア王女と過ごしたこの夏が、大きな転機になったのだと思います」
幼い子どもにとって、大勢の人の前に出たり、たくさんのカメラを向けられるのは決して嬉しいことではない。それまでの愛子さまのごようすは、幼児として当然の反応だったともいえる。
2008年、愛子さまは学習院初等科に進む。
「2年生のときに、あらたな試練がありました。雅子さまは遠足に日程を合わせたり、付き添い登校をすることも。このときも、いわゆるバッシングがありました」
マスコミは「甘やかしではないか」という論調で書き立てた。しかし一方、子育て中の母のなかには「子どもを守るため、わたしでも同じようにする」という声もあった。
動物好きの御一家は、犬や猫を飼っている。このころ、御所に迷い込んだキジトラ猫がいた。愛子さまはこの猫に「ニンゲン」と名付けてかわいがっていたという。愛猫を「ニンゲン」と呼ぶ少女の胸のうちは、いかばかりであったろうか。
「雅子さまご自身の体調もあって、苦しい時期だったと思います。が、ご夫婦の繋がりは強かったですし、なにより、愛子さまはお母さまが大好きなんです」
その後、愛子さまは学習院中等科、高等科に進む。成績がよく、外部進学を選ぶのではという声も聞こえるなか、愛子さまは、父の母校でもある学習院を選んだ。コロナ禍の2020年4月、文学部日本語日本文学科に入学する。
「お母さまは東大法学部を経て外交官になった方ですから、東大という選択肢もあったと思います。が、学習院を選ばれた。学びの場として、お父さまの母校を選び、お父さまも所属したオーケストラに所属して。愛子さまは本当に、ご両親を尊敬しています。いいご家族なんですね」
「天皇の娘」として結実した育児
5日の成年行事では、初めてのロングドレス姿を披露した。ティアラは、黒田清子さんのものを借りたという。
「ティアラを借りたことに、あれこれいう声が聞かれますけれども。『天皇の娘』である愛子さまが、同じく『天皇の娘』だった清子さんのティアラを身につける。皇室における『格式』を思えば、まったく不自然はありませんよ」
「天皇の娘」愛子さまが成人されたのだ。
「愛子さまは、そのお立場にふさわしい気品のある素晴らしいプリンセスに成長なさいました。成年皇族として、これからのご活躍が楽しみです」
1993年、29歳の「小和田雅子」さんが、当時の皇太子と婚約した。少しクセのあるショートカット、アーモンド型の大きな眼に強い力を宿した彼女は、その輝かしいキャリアから退き、皇室に入った。お世継ぎの重圧に耐え、幾多の困難を乗り越えた。雅子さまにも、心からの祝福を贈りたい。

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写真:ロイター/アフロ