初出場で銀メダル!恩師が明かす鍵山優真の「強さの源泉」
鍵山優真(18)が初出場とは思えない堂々たる演技で銀メダルを獲得した。
8日に行われた北京五輪フィギュアスケート男子ショートプログラムで鍵山が選曲したのは、米歌手マイケル・ブーブレの『When You’re Smiling』。4回転サルコー、4回転と3回転の連続トゥーループ、3回転アクセルとジャンプを完璧に成功させ、笑顔で氷上を舞った。108.12という高得点を叩き出し、2位につけた。
ショート後の会見では鍵山は「楽しまなきゃ損する。(五輪は)初めてなので、何事も楽しんでいきたいという気持ちがある」とコメント。その言葉通り、10日に行われたフリーでは『グラディエーター』のリズムに力みなく合わせ、スピードに乗ったダイナミックな演技を披露した。冒頭の4回転サルコーで危なげなく着氷すると、続く4回転ループ、4回転トゥーループと次々にジャンプを着氷させ、自己ベストを大きく更新する合計310.05点をマーク。勢いそのままに表彰台へ駆け上った。
氷上での堂々とした姿とは裏腹に素顔はシャイボーイだという鍵山。星槎国際高校スケート部監督で、恩師の松下清喜氏が振り返る。
「授業態度はいたって普通ですよ。本人も『学校では目立ちたくない』と言ってますからね。リンクの上ではアスリートですけど、学校にいる姿はまったく普通の子です(笑)。成績も優秀です」
鍵山にとって五輪の表彰台は父・正和コーチ(50)と二人三脚で目指した悲願だった。正和コーチは‘92年アルベールビル五輪、’94年リレハンメル五輪に出場し、2大会で最高12位。鍵山は「父よりいい結果を残して、感動させられるような演技をして、親孝行したい」と語っていた。若き銀メダリストの強さの源泉は「父の背中を追い続けてきたことにある」と松下氏は打ち明ける。
「彼とは高校に入学してきてからの付き合いですが、かねがねインターハイを獲りたいと言っていました。私としてはすでに高校2年からシニアの大会に出るようなレベルの選手なので、インターハイはいいんじゃないかと思ったんです。でも彼は『お父さんが獲った大会は獲りたい』とこだわった。
実際に出場してみると、音楽が止まったり、転倒したりとトラブル続きでした。結果的に優勝はしたものの、かなり悔しがっていたのを覚えています。どんなタイトルにも貪欲で、失敗を悔しがる姿勢を見て、この3年間で世界に出ていくアスリートに成長していくのだろうなと感じていました。羽生選手や宇野選手に比べると、どうしても華という面では劣る。でも、一つ一つの技の確実性や、堅実な演技では引けを取らないと思います」
鍵山の物語はまだ始まったばかりだ。
- 写真:JMPA