26年熟成…!「1杯11万円」絶品コーヒーに隠された秘密
大阪・八尾市『ザ・ミュンヒ』 4時間以上かける特殊な抽出方法が秘訣 チョコレートのような味わいのなかにコーヒーの確かな苦み アラブ首長国連邦の皇太子が来店
ポタリ、ポタリ。
年季の入った樽の蛇口から、1滴ずつスプーンに落ちる黒い液体。溜まるまでしばらく待った後、こぼれないように慎重にスプーンを口へと運ぶ。
「う、旨(うま)い。旨すぎる……」
FRIDAY記者は思わず唸(うな)った。まず広がったのは、まるでチョコレートのような甘さだ。次の瞬間、とろみのなかにコーヒーのわずかな苦みが感じられた。濃厚でいて爽やか、そして、芳醇(ほうじゅん)な香りとコク。記者歴30年、さまざまな喫茶店を訪ねてきたが、こんなコーヒーは未だかつて味わったことがなかった。
「コーヒーは濃くすると、酸化して酸っぱくなるというのが常識。しかし私は、常識外れな抽出方法を見つけて今のコーヒーが生まれました。普通だとコーヒーは15gの豆から200ccを抽出します。でもうちは、最高級のさまざまな豆1.5kgから200ccだけ。4時間かけてじっくりと抽出しています」
そう語るのは、大阪・八尾市のコーヒー専門店『ザ・ミュンヒ』のオーナー・田中完枝さんだ。記者が驚愕したこの店の名物である「熟成コーヒー」は、マイナス3度の樽の中で現在、26年を超えて27年目に突入。そのお値段は、スプーン1杯で2500円、カップ1杯で11万円(税込み)という究極の逸品だ。
「『熟成コーヒー』を飲みに、日本中からお客さんが来てくれはりますね。10日熟成や熟成なしのコ—ヒーも出していますから、みなさん3種類くらい飲んでいかれます。27年モノのコーヒーを飲んで行く人は、みんな一生に一度。本物のコーヒー好きしかいないですね」
『ザ・ミュンヒ』の「熟成コーヒー」は、国内のみならず世界のコーヒーマニアの間でも有名だ。’19年10月には、なんとアラブ首長国連邦を構成する7つの首長国のうちの一つ、フジャイラ首長国から、ムハンマド・ビン・ハマド・ビン・ムハンマド・アル・シャルキー皇太子がお忍びで来店した。
「アメリカの有名なユーチューバーにうちの店が取り上げられて、皇太子はそれを観て興味を持ったらしいですわ。天皇陛下の即位の礼で来日したタイミングで、うちにも寄ってくれはった。通訳やらSPやら引き連れて、全部で8人で来てました。もちろん、飲んだのは11万円のコーヒー。えらい感動しはって、お土産にコーヒーカップをくれましたよ」
アル・シャルキー皇太子がほかのアラブの王族に伝えたのだろう。その後、ドバイの皇太子からも『ザ・ミュンヒ』に来店希望の連絡があったという。
「一昨年の4月と、去年やったかな。皇太子の来日をアテンドする旅行会社の人から電話があってね。『ドバイの皇太子が行きたがってる』と。でも、結局、コロナで来られなかった。オミクロンが落ち着いたら、来てくれはると思いますよ」
アラブの王族も認める「熟成コーヒー」。朝6時〜深夜3時半まで営業しているので、ご興味ある方はぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。
『FRIDAY』2022年2月25日号より
- PHOTO:加藤 慶