冬季記録だけじゃない…!高木美帆がみせたスゴすぎる「神対応」
ゴール直前で転倒してしまった姉をきづかい……
「私だけの力では成し遂げることができなかったと強く思う。チームの力の強さを証明できた」
2月18日、スピードスケート女子1000mで金メダルを獲得した高木美帆(27)はそう語った。今大会、高木は5種目に出場し、4個のメダルを獲得した。これは98年長野五輪でのスキージャンプ・船木和喜の記録(3個)を超え、冬季五輪での日本勢の一大会での最多記録となる。さらに、今大会で通算メダル獲得数は7個となり、谷亮子などの記録(5個)を抜いて、女子選手として歴代で最多のメダル獲得者となった。
そんな押しも押されぬ「レジェンド」である高木だが、彼女は競技中以外でも「レジェンド対応」を見せていた。
2月15日、女子パシュート決勝。姉の高木菜那がゴール手前60mで転倒し、惜しくも金メダルを逃した。レース後、取材エリアに現れた日本チームは、声をかけるのがためらわれるほど、沈鬱とした雰囲気だった。特に菜那は目に見えるほど憔悴していて、まともに受け答えができるような状態ではなかった。
その様子を見て、高木はなるべく姉が喋らなくてもいいように、積極的に発言していた。一問だけ姉に質問が飛ぶと、受け答えしやすい位置に姉をさっと誘導するなど、気配りをみせていた。
「競技スポーツは結果がすべてなので」
高木はそう言いながら、目を少し潤ませていたが、最後まで気丈な態度を貫いていた。
そんな彼女が、すぐにまた百点満点の「結果」を出したのはご存知のとおりだ。2月17日、高木はスピードスケート女子1000mに出場した。第13組、ROCのアンゲリナ・ゴリコワと出走した高木は1分13秒19の五輪新記録で1位に立った。ゴールする瞬間、高木は大きくガッツポーズした。
高木のあと、リンクに立ったのは小平奈緒(35)。平昌五輪では金を含む2つのメダルを獲得したが、今大会では思ったような結果を出せていなかった。高木は前のレースですべてを出し切り、リンクのフチに腰かけて座っていた。小平が目の前を滑っていく際、まだ息も整っていない高木は大声をあげ、手を叩いて小平を応援していた。小平の滑りを見届けて、高木はようやく待機場所へと戻っていった。
高木は10年のバンクーバー五輪に15歳で初出場。「スーパー中学生」などともてはやされたが、結果は最下位。14年のソチ五輪では代表から落選するという憂き目にもあった。しかしそこから這い上がり、平昌五輪、そして今回の北京五輪で快挙を成し遂げた。
高木には単にエリート街道を歩いてきただけの選手にはない強さがある。それはこの「レジェンド対応」からも明らかだろう。彼女の偉業は、まだまだ続きそうだ。
- 撮影:日本雑誌協会