『カムカムエヴリバディ』濱田岳の異次元すぎる年齢不詳感 | FRIDAYデジタル

『カムカムエヴリバディ』濱田岳の異次元すぎる年齢不詳感

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多くの視聴者が気にし続ける中、「謎の振付師」で再登場!

とうとう帰って来た。NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(以下『カムカム』)の初代ヒロイン・安子(上白石萌音)の兄であり、安子の貯金を持ち逃げしたことで、娘・るいとの仲を引き裂いた算太を演じる濱田岳のことである。

「安子編」では、クリスマスの日に戦地から復員したこともあり、「算太=サンタ」だけに、るい編でも「クリスマスの日に帰って来るのか?」と一部で囁かれていた。それでも戻らず、「絶対に来るぞ」「いつ帰って来るのか」と多くの視聴者が気にし続ける中、再登場は2月22日の第79話。

安子の孫・ひなた(川栄李奈)が就職した条映太秦映画村で、2代目“モモケン”こと桃山剣之介(尾上菊之介)が映画村のCM撮影をする中、唐突に「いけん!」と叫び、割り込んできた「謎の振付師」という老人が算太だったのだ。

ドラマチックな登場じゃなく、ヌルリと、それもなぜか偉くなった風情で調子よく入り込んでくるのはいかにも算太らしい。それにしても、白髪で背も少し曲がった老人姿でも、何の違和感もない濱田岳の凄まじさ。

安子編のときと全く変わらない風貌で現れても、なんならそれこそ未来人や宇宙人として現れても、不思議と納得してしまったかもしれない。それくらい濱田岳の“年齢不詳”感は異次元だからだ。

10年前の2012年、ドラマのプロモーションイベントに登場した濱田岳。現在とほとんど変わらない!? 役どころは“ モテない青年”、ここもブレない…(写真:アフロ)

最初の登場は「13歳の役」

『カムカム』第1話を思い出して欲しい。日本でラジオ放送が始まった1925年、安子が生まれた冒頭では、算太らしき少年が映っているが、子役時代の安子(網本唯舞葵)が8歳になったとき、13歳の算太として登場したのが濱田岳だった。

家族で食卓を囲む算太は、さすがにどう見ても13歳じゃない。ご本人もオリコンニュースのインタビュー(11月9日)で、参加が決まった際には13歳から演じることが提示されていなかったこと、幼少期は子役が演じるのが朝ドラの定番だから、算太もそうだと思っていたが、「しかし安子ちゃんだけ子役で、13歳の算太は僕でした。ムチャぶりのような気がしましたけど(笑)」と語っているし、最初は子役で良かったのではないかという声が多かった。

しかし、みんながラジオを欲しがる中、安子に甘い祖父が買ってくれた風を装い、商店街の荒物屋「あかにし」からラジオを盗んで来たくだりでは、膝を打った。

父・金太(甲本雅裕)が「あかにし」の主人・吉兵衛(堀部圭亮)に頭を下げる傍らで、「アンタが店先でつけっぱなしのラジオ置いて飛び出していったから、魔が差したんじゃな」と言ってのけるふてぶてしさ・悪知恵ぶりは、まるで古典落語か寓話の登場人物のよう。

あるいは、家族や職人たちの中に彼がいるだけで、自然と場が明るく楽しくなる「憎めない悪ガキ」ぶりは、永遠にトシをとらない『サザエさん』のカツオ的でもある。

一方こちらは、同じ2012年公開の映画『宇宙兄弟』のイベントでの一枚。霊長類の研究を専門とする強気な関西人の青年・古谷やすしを演じた(写真:アフロ)

昨年12月13日の奇妙な偶然…

思えば、昨年10月期のテレビ東京での主演ドラマ『じゃない方の彼女』でも、その年齢不詳感は存分に発揮されていた。

濱田が演じる主人公は、特別目立つことのない人生を送ってきた「じゃないほう」の男性で大学准教授の・小谷雅也だ。そんな彼が、「天然系魔性の女子大生」野々山怜子(山下美月)との出会いから、「じゃないほう」じゃないことに巻き込まれていくのだが……。

『じゃない方の彼女』は“不倫コメディ”であるため、女子大生に振り回されて右往左往する様が、不快感よりも可笑しさを与えなければならない。その点、濱田岳の過剰にならない目の泳ぎ方、戸惑い、うろたえぶりは絶品だったが、変な生々しさが出なかったのは、誰と並んでも等しくしっくりくる年齢不詳感も一役買っていた気がする。

なぜなら、童顔・長身の妻・小西真奈美と並んで普通に夫婦に見えるのに、大学生役の山下美月と並んでも「おじさんと女子大生」といういやらしさがなく、普通にカップルに見えたり、場合によっては山下のほうがしっかり者のお姉さんに見えたりするくらいだった。さらに、おかしいのは、母親役のYOUと並んでもやっぱり夫婦に見えること。

しかし、どういう運命のいたずらか、『カムカム』の算太の重要回で、奇妙な偶然が起こってしまっていた。それは、昨年12月13日放送分の第31話。

戦争から帰還した算太は、女中の雪衣(岡田結実)にちょっかいを出したり、父のことが話題にのぼると「死んだ親父が何思よろうが、知ったことじゃねえ」と悪態をついたり、荒んだ様子を見せる。しかし、そこに現れたのが安子の義母・美都里(YOU)で、算太を優しく抱きしめると、「お父さんとお母さんに会いとうてたまらんのじゃろう?」と問いかける。そして、「本当はこれまでのことを両親に謝りたかった」と涙する算太に、「生きとるだけでええんじゃ」と声をかけるのだ。

愛する長男・稔(松村北斗)を戦争で失い、心が壊れてしまったことから、やり場のない怒りや悲しみを嫁である安子にぶつけてきた美都里が、まさか算太の本音を引き出すとは。最愛の家族を失った者同士、互いに心から詫び、許し合うようなシーンは多くの視聴者の涙を誘った。

しかし、奇しくも同じ12月13日、朝には聖母のように抱きしめてくれた美都里が、夜には『じゃない方の彼女』の母として、濱田岳に「あんたは不倫してる……相手はバーベキューのときに来てたあの子……」と占い師のような口調で全てお見通しだと語るのだった。

こんな奇妙な偶然が起こってしまうのは、どんなシチュエーションでも、どんな距離からでも、どんな球でも受けられる濱田岳の捕球力の高さゆえ。西島秀俊主演の『シェフは名探偵』(テレビ東京系)では、原作の役はだいぶ年下だが、舞台的なワンシチュエーションの物語の真ん中に「ギャルソン」として濱田がいることで、店のスタッフと客をつなぐ抜群の安心感を与えていた。また、主演ドラマ『フルーツ宅配便』(テレビ東京系)では、デリヘル業界のディープな人間ドラマを、そこに飛び込んだ「普通の男」として切なく、ほろ苦く、しかしコミカルに演じていたのが印象的だった。

年齢や時代などの枠組みを超え、「いつの時代にもいる普通の人」として普遍的な煩悩や苦悩、おかしみ、人間臭さを表現する濱田岳。彼に演じられない時代も年齢もないのかもしれない。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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