横浜でカジノ反対運動を指揮したキーマンが大阪に伝えたいこと | FRIDAYデジタル

横浜でカジノ反対運動を指揮したキーマンが大阪に伝えたいこと

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 大阪府と大阪市が誘致を目指す、カジノを含む統合型リゾート(IR)の予定地、大阪市此花区の夢洲に土壌汚染問題が発覚。昨年12月には、大阪市・松井市長が土壌汚染や液状化、地中埋没物など地盤に問題が生じたことに関し、土地所有者として責任があるとして、790億円の支出を決めている。

3月16日の大阪市議会を経て、17日に参考人招致を受けて松井市長はこう語った。

「大阪市は土地所有者としてアッパー(負担上限)が790億円。地盤沈下は、土地の自然由来なので、事業者(大阪IR社)の負担。それが大阪市の埋め立てた土地に起因するものと、根拠のあるものがでてくればその時に大阪市の負担は考える」

この発言に対し、SNS上では「結局、理屈をつけて金を出すんだろう」「最終的に大阪の負担はどこまで膨らむのか」「大阪IR自体、大博打」といった指摘が続出している。

しかし、3月24日に大阪府議会では大阪IRの整備計画が大阪維新の会や公明党、自民党などの賛成多数により、可決。29日に行われる市議会で可決となることが見込まれ、後戻りできない状況になっている。

29日、大阪IRの整備計画は市議会で可決となることが見込まれ、後戻りできない状況になる(写真:アフロ)

横浜と大阪、なぜこんなに反応が違う?

ところで、不思議なのは、SNS上はともかく、大阪府民・大阪市民全体としては、IR問題があまり話題にのぼらず、関心を持たれていないように見えること。横浜市の場合、昨年8月22日に行われた市長選で山中竹春氏が「IR誘致は行わない」という旗を掲げて勝利したことで、現状IR誘致が止まっているが、横浜と大阪ではなぜこうもカジノに関する意識が違うのか。

「カジノの是非を決める横浜市民の会」で小林節氏と共同代表を務めた藤田みちる氏に聞いた。

「横浜市の場合、林文子元市長が2017年の市長選でIR誘致の白紙を掲げて3選を果たしました。彼女に投票した人たちには、IR誘致の是非を問いかけてくれることを期待した人たちがたくさんいたわけです。 

ところが、林文子元市長は19年8月22日にそれを覆し、IR誘致を表明したんです。IR誘致を国が決め、それを受けて説明するということでしたが、誘致の白紙を掲げて当選した末の『撤回』は、横浜市民にとってまさに青天の霹靂でした 

そこで、2020年にIR誘致の賛否を問う住民投票を実施すべきだとして、請求に必要な法定数の3倍を超える約20万人の署名を集め、当時の林市長に住民投票条例の制定を請求したんです」

そもそも林文子元市長は、IR誘致に前向きだったが、誘致反対を掲げる2氏と争った2017年の市長選を前に「白紙」に転じていた。さらに、3選後に「白紙」をまた撤回したという経緯があったわけだ。

そもそもなぜ横浜市民たちはIR誘致に反対したのか。横浜と大阪の反対運動の盛り上がりの違いについて、藤田氏はこんな分析をする。

「横浜の場合、それまでカジノを反対してきた人や、地域の活動をしていた人たちが、それぞれ主義主張が異なっても、IR誘致を止めたいという共通の目的により、ゆるやかなつながりとなったことは大きいと思います。 

それに、反対の声をあげる方の種類や広さが、大阪と違うこともあると思います。 例えば、菅義偉さん、二階俊博さんなど中央政界の要人と親しく、林文子元市長の後援会長も務めていた『ハマのドン』と呼ばれる保守の重鎮である藤木幸夫・横浜港運協会会長が、カジノを推し進める政権中枢に対して『命を張って反対をする』『ここで寝泊まりする』 と真っ向から反旗を翻しました。菅内閣の一角を担っていた小此木八郎(元)国家公安委員長も、菅首相肝いりのプロジェクトだった横浜のカジノ誘致に反対を表明しました。つまり、IRを呼び込んだ人も後悔しているわけです」

また、神戸生まれ、西宮育ちで、豊中で教職についていた時期もある藤田氏は、「土地柄の違いもあるのでは」と指摘する。

「横浜市では、横浜港・山下ふ頭で『ハーバーリゾート』というかたちで、みなとみらい地区の再開発が進められていました。さらに歴史を遡ると、関東大震災以降、復興事業で山下公園が作られ、のちにベイブリッジが作られました。港湾都市として市で開発を進めてきた歴史と文化があったところに、国が入ってきて、これまでの市の計画を反故にされてしまったんです。考え方の違いもある気はします。 

横浜に住む人たちには、地方から来た人や海外から来た人もたくさんいるものの、港湾文化を愛するスマートな人が多い印象があるのに対し、大阪では『面白いことやったらええやないか』といった感覚の人が多いのでは。 

同じ関西でも、例えば神戸の元町あたりにIRを作るとなると、反対の声はもっと大きくなると思います。それに、大阪のIRの誘致目的や数字などが当初と変わってきていることもあるんです」 

「カジノは日本が認めてこなかった賭博であり、依存症の大きな危険性を伴います」と藤田さんは言う

コロナ禍、カジノのターゲットは「インバウンド」から「大阪市民」に!?

当初は「世界基準・国内最大」のMICEを誘致することによるインバウンドを目的としていたはずが、コロナの影響もあり、いつの間にか大幅にカジノ中心の計画に様変わりしていることを、大阪市民、大阪府民はどの程度把握しているのだろうか。

例えば、2019年作成時の「大阪IR基本構想」ではIR全体の年間のべ利用者数2480万人のうち、カジノ利用者を590万人と見込んでいたものが、2021年12月23日公表の「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画(案)」では、IR全体の利用者数1987万人のうち、カジノ利用者が1610万人と、約3倍に。基本構想ではカジノ売り上げ想定の比率において外国人2200億円に対し、日本人1600億円だったところから、整備計画では外国人2200億円はかわらないものの、日本人2700億円と圧倒的に日本人をターゲットにしたものに変わっている。

ちなみに、カジノだけで黒字になっているのは世界的にもほとんどなく、カジノ収入で国家財政を支えているイメージがあるモナコも、カジノ・高級ホテル等を経営するSBM社(国が資本の約6割を保有)の業績は芳しくなく、コロナ禍の前にすでに赤字経営となっていたことが、財務省の広報誌「ファイナンス」(平成30年10月号)で記されている。

また、マカオ政府財政局が公表した最新の財政収支資料によれば、2020年1月下旬以降、新型コロナウイルス感染症の流行に伴うインバウンド激減により、カジノ粗利益(Gross Gaming Revenue)が激減。コロナ前2019年水準の3割程度にとどまっている。

加えて、IRそのものが悪いわけではなく、その中にカジノが必ず含まれることが問題なのだと藤田氏は強調する。

「パチンコや競馬は良いのに、カジノはダメなのかという人もいます。しかし、あえて新しいギャンブルを作る必要があるのかどうか。カジノは日本が認めてこなかった賭博であり、依存症などの大きな危険性も伴います。 

済州島にカジノを持ってきた影響を、国会議員の方が実際に済州島に行き、レポートした動画を見たことがあるんです。住まいの環境の変化によって、子育て世代などの若い人はみんな子どもへの影響を不安視し、済州島を出て行ってしまっていたり、全財産をカジノで失い、街中に乗り捨てられた車がいっぱいあったり……きらびやかな面や経済効果が仮にあるとしても、闇の部分があまりに大きすぎる。 儲かった人はいいですが、一部の人だけが楽に儲けている姿を、日々生活のために懸命に努力している人達に見せて良いのかどうか、はなはだ疑問です」 

藤田みちる 元「カジノの是非を決める市民」の会共同代表、NPO法人こだちの会理事長、認定NPO法人ホタルのふるさと瀬上沢基金副理事長、横浜栄・防災ボランティアネットワーク副代表、女性のための政治スクール事務局長、元横浜市議。精神福祉、自然環境保全、農家支援など地域活動を行う。

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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