歌舞伎町の住人がいま「足つぼ屋」に集うワケ | FRIDAYデジタル

歌舞伎町の住人がいま「足つぼ屋」に集うワケ

佐々木チワワ 現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和4年、歌舞伎町はいま……第13回

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歌舞伎町にはさまざまなディープスポットが存在する。ホストクラブ、風俗、シーシャバー……。多種多様な歌舞伎町の住人たちが一堂に会する場所といえば、喫茶店『ルノアール』がよく知られているが、実はもう一つある。「足つぼマッサージ屋」である。

歌舞伎町の住民たちにとって、数少ない癒しの場所、なのだろう…(AFLO)
歌舞伎町の住民たちにとって、数少ない癒しの場所、なのだろう…(AFLO)

歌舞伎町には10店舗近い足つぼをメインとするマッサージ屋があり(筆者調べ)、連日賑(にぎ)わっている。夕方の客層で多いのは、出勤前のホストやキャバ嬢だ。連勤終わりで疲れた風俗嬢も見かける。

「出勤前は毎日来ています。足つぼに通ってからわりと身体の調子が良くて、売り上げも上がっている(笑)」

そう語るのは、某店舗のナンバーワンホスト・ハルキ(仮名・24)である。

「全身やりたい気持ちもあるんですけど、足つぼだと両手が自由じゃないですか。足つぼを受けている間に一気にお客さんに営業をかけられる。出勤前のルーティーンになってますね」

歌舞伎町の足つぼマッサージは朝まで営業している店が多い。最も混雑するのは、深夜1時以降だ。アフター待ちのホスト狂いの女性や始発まで暇なホスト帰りの女性、キャッチが終わったスカウト、キャバクラの客、疲れたサラリーマンなど実に多様な人間がなだれ込む。

足の細いギャルメイクのキャバ嬢2人とその客のよれたスーツのサラリーマン4人が店に入ろうとし、「30分後なら」と言われて予約をして、ラーメン屋に向かう。その次にやってくるのは「ぴえん系」の女子2人組だ。彼女たちは常連らしく、「今日はいっぱい」と話す店主に「社長大儲かりじゃん!」「よかったねぇ繁盛して」「じゃあウチらはシーシャにするわ」と軽快に会話を重ねて店を後にする。

足つぼ常連のソープ嬢・ユイ(仮名・19)が言う。

「ソープの仕事って足がパンパンになるんですよ。肉体労働ですからね。だから仕事終わってホストクラブに行った後、担当から連絡あるまではよく来ちゃいます。スマホ依存がひどくて、携帯を30分見られないのがキツい。だから全身マッサージは無理。以前、全身マッサージを受けてるときに担当から連絡が来て、アフターしてくれようとしてたのにできなかったことがあって。それからはもう足つぼだけです」

ホストのハルキも言っていた通り、「手が自由になる」ことが足つぼ人気の理由の一つのようだ。一方、ユイの同僚のソープ嬢・リリ(仮名・19)はまた別の理由で足つぼに通っている。

「ソープが終わってから始発待ちまで、だいたい3〜4時間くらいある。ご飯食べて2時間くらい足つぼを受けるんですけど、私はスマホの電源を切って、完全におやすみモードです。寝るなら漫画喫茶でもいいんですけど、漫画喫茶だと起きられない。その点、足つぼは強制的に起こしてくれるんで(笑)。起きたら疲れ取れるし、一石二鳥?かなって。歌舞伎町の足つぼ屋さんって、優しいんですよね。『今日はもうちょっと寝たい』って言ったら、施術時間終わっても寝させてくれるときもあるし。そういう優しさがマジで好きです」

ちなみに、著者も始発待ちで足つぼに通うことが多々ある。ちょっと暗めの店内に、バラエティ豊かすぎる客が混在しているあの空間は少し癖になる。もしかしたら、歌舞伎町の「今」が一番知れる場所かもしれない。歌舞伎町に行く機会があれば、足つぼ屋に寄り、会話に耳を澄ましてみてはいかがだろうか。

佐々木チワワ

’00年、東京生まれ。
小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。
15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。
大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。
『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

FRIDAY2022年4月22日号より

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