新潟7歳女児殺害犯が「死刑判決」を言い渡されなかった意外な理由 | FRIDAYデジタル

新潟7歳女児殺害犯が「死刑判決」を言い渡されなかった意外な理由

小林遼被告は、被害者の頸部を圧迫して殺害し、線路内に遺体を遺棄。のち走行した電車にその遺体を轢過させたのだが…

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小林遼被告(撮影:幸多潤平)

新潟市で4年前、小学2年生の女児を殺害し、線路に遺体を遺棄したとして殺人などの罪に問われていた小林遼(はるか)被告に対する控訴審判決が3月17日に東京高裁で開かれ、大善文男裁判長は弁護側、検察側双方の控訴を棄却した。

一審・新潟地裁では検察側が小林被告に死刑を求刑し、無期懲役の判決が言い渡されていた。これを不服として弁護側、検察側双方が控訴し、審理が続いていた。弁護側のみが控訴を申し立てていれば、一審よりも重い判決が下されることはないが、検察側も控訴していたことにより、一審が破棄され死刑判決が言い渡される可能性もあった。そのため、公判には注目が集まっていた。

事件は2018年5月7日に起こった。小林被告は新潟市で小学2年生だった女児Aさん(当時7)を殺害し、その遺体を線路に遺棄したとして、殺人などの罪で起訴された。

起訴状によれば小林被告は同日15時20分ごろ、新潟市西区において運転中の軽自動車を、下校中のAさんの臀部に後ろから衝突させた。転倒したAさんを抱きかかえ軽自動車の後部座席に乗せたのち、その頸部を圧迫して気絶させ、車を発進。15時28分ごろから59分ごろまでの間、同区の通称『なぎさのふれあい広場』駐車場にて、Aさんの下半身に触れ、わいせつ行為に及び、意識を取り戻したAさんの頸部を圧迫し殺害した。

その後22時25分ごろ、JR東日本越後線の線路内にAさんの遺体を遺棄。のち走行した電車にその遺体を轢過させ、頸部を切断させたとされる。

事件当日の朝、小林被告は起きてすぐに無断欠勤を決めた。そして6時55分、スマホのグーグルアカウントからログアウト。その後事件直前まで、女児を物色しながら車を走行させていたことがわかっている。Aさんは小林被告の運転する車に撥ねられ、車内に連れ込まれたとき「頭が痛い、お母さんに連絡したい」と泣いたという。

女児の遺体が発見された場所。事件直後には献花台が設けられていた。この場所から女児の自宅は数百mしか離れていなかった

2019年に新潟地裁で開かれた一審の裁判員裁判において小林被告は、生前のAさんへのわいせつ行為、及び殺意は否認していた。対する検察側は、小林被告には殺意はあったと主張。「まれに見る悪逆非道な犯行」として死刑を求刑したが、新潟地裁が言い渡したのは無期懲役の判決であった。だが地裁は小林被告に犯行当時殺意があったことや、生前のわいせつ行為は認定していた。

「量刑」を決める基準とは…

控訴審でも小林被告の主張は認められなかったが、死刑を求める検察側の主張も同じく認められなかった。東京高裁はその理由の一つとして「他の事例と比べて悪質とまでいえない」と述べている。

検察側は「殺害行為の計画性の高さや残虐性」や、「徹頭徹尾、Aさんを人ではなくモノのように扱っている。殺害行為のみではなく全体として評価すべき」など主張し、他の裁判例を見た場合においても、死刑が科されるべきであると求めていた。しかし裁判所はまず殺害行為において「当初から殺そうと思っていたわけではなく、行為自体は計画性が高くない。場当たり的、偶発的だった」として、被告の殺害行為の計画性の高さは認めなかった。

また殺害行為のみではなく、事件全体を見た場合においても「際立って残虐ではない」との評価を下した。

「量刑の中心は殺害の方法であるところ、殺害の後に遺棄を思いついた。一審は、わいせつ目的で女児に車を衝突させたことや、死後に電車に轢かせた点などは、量刑上考慮している。わいせつな目的を抱き、女児に車を衝突させ、公園まで移動し、わいせつ行為に及んでいるところ、女児の意識が戻り、声を上げたことから首を絞めて殺害し、その遺体の処理に困り電車に轢過させた。場当たり的な行動を重ねており、際立って残虐なものともいえない」

さらに裁判所は、過去に死刑判決が下された、被害者1名の同種事案とも比較。だが「両手首を緊縛して灯油を浴びせ、点火して殺害」した事案や「拉致監禁後、強姦して絞殺したのち身代金を要求した」事案などを挙げ、いずれも今回の事件よりは重いものであるとして「これらの事例に匹敵する程度に極めて悪質とは評価できず、死刑を選択すべきとはいえない」とした。

殺害の行為自体が残虐なものではなく、計画性も高くない。さらに他の死刑事案と比べても重くない……という結論だ。刑事裁判ではあくまでも被害者が生きている間に与えた苦痛が重要になるのだろう。

高裁判決言い渡しの終盤で裁判長は、被告の供述態度について「反省を述べてはいるものの、必ずしも真摯に反省しているとは認められないと言わざるを得ない」と、反省のなさについても言及していた。

2021年9月の法廷では遺族に向かって土下座し「命をかけても一生かけて謝罪し償い続けます」と述べていた被告。一生償うために無期懲役という刑を受け入れるのかと思いきや、上告している。いっぽうの検察側は「適法な上告理由が見いだせなかった」として上告を断念。最高裁では被告に対し、無期懲役より重い「死刑」が言い渡される可能性はなくなった。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

  • 写真幸多潤平

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