FRIDAYデジタルが選んだ2018年ヒット商品大賞はこれだ!
単に“バズった”だけじゃない! あのヒット商品の秘密に迫る
2018年も残り僅か。今年も「あっ」と驚く様々な新商品が世に生み出され、SNSをはじめ世間の話題をさらっていった。そこで、 今年話題になった商品の中から、“クスッと笑える”ヒット商品5つに、FRIDAYデジタルが(勝手に)ヒット商品大賞を授け、その裏にある作り手の熱い思いや、誕生秘話とともに紹介する。
故郷を愛する一青年の地元愛が生んだ次世代ブランド
「高知の財布」
「COACHや思ったら高知やった」
あるお笑い芸人がこんな一言とともにSNSに投稿した呟きから、瞬く間に人気に火が付いた「高知の財布」。一見、よくあるブランドものの長財布に見えるのに、よく見てみると……ロゴが「高知」! 有名ブランド「COACH」の財布ならぬ、「高知」の財布というわけだ。
このインパクト抜群の「ブランド高知」商品を生み出したのは、アーティストでもあり、ブランド高知の代表でもある中島匠一さん。
モノづくりが好きだったこともあり、大阪芸術大学在学中から、「パンツを化石化させる」「銭湯にレーザー装置を取り付け、レーザー風呂を作る空間アートを産み出す」など、これ以前にも様々な作品を産み出していたのだが、「故郷である高知を盛り上げながらも、面白い作品を作りたい」という気持ちから、ブランド高知の作成に着手したという。
「お恥ずかしながら、学生時代から今まであまりお金と縁のない生活だったので、ブランド品の類は購入経験もありませんでした。その一方で、地元高知への想いや、そこで自分を支えてくれた人たちへの感謝を形にしたいという気持ちは強くなっていった。お金を稼ぐことがメインではなく、面白いこと、拡がることを最優先にしたので、人生一発勝負! と覚悟を決めて、バラまく勢いで作り始めました」(ブランド高知 代表・中島匠一さん)
そんな中島さんの産んだ「高知の財布」だが、4500円という低価格にも関わらず、驚きの高品質であることも実際に購入したユーザー発信で話題となり、販売数1万個をあっという間に達成するなど、着実にファンを増やしている。
「単なる面白さだけなら、オモチャのようなモノでも良かったのですが、それでは高知のイメージと違うし、何より高知を汚したくない、という強い想いがありました。2019年には高知県産の鹿皮モデルの発表も目指していますし、物流や製造拠点を高知に作り、地方活性化に繋げていければとも考えています」
大ヒットの理由について、「ずばり縁、運。そして高知愛」と語ってくれた中島さん。高知県内のみならず、全国に社会現象を巻き起こした「ブランド高知」は、故郷を愛する青年による限りない地元愛の結晶だった。
※ブランド高知は高知県をPRすることを目的としたオリジナル雑貨を展開しており、当ブランド以外の企業、団体、ブランドとは一切関係ありません
自社商品であろうが容赦なく粉々にする勇気
亀田製菓株式会社「FURIKAKIX(フリカキックス)」
抜群の人気と知名度を誇る自社商品を、わざわざ粉砕するためのマシンを自ら生み出してしまった企業。それが、日本で一番売れているお菓子「亀田の柿の種」でお馴染みの亀田製菓株式会社であり、大真面目に開発した商品が“柿の種専用ふりかけマシン”。その名も「FURIKAKIX(フリカキックス)」だ。
もともと、SNSなどでユーザーが自由に柿の種のアレンジレシピを楽しんでいるなか、殆どの人が柿の種を苦労して砕いていたことから、「専用のマシンがあればもっといろいろ楽しんで頂けるのでは」と開発をスタートしたという。
「構想に3年、開発に1年費やした」という本商品。固さの違う「柿の種」と「ピーナッツ」を同時に、しかも均一に削るというのは非常に難しいのだという。ふたの圧が均等になるよう、入れる場所を2つに分ける、歯のプレートの形状(穴の数、大きさ、向きなど)を調整し、柿の種とピーナッツがきっちり歯にかかるようにする……といった無数の工夫と研究の末、柿の種を簡単に削れるようにした。
「商品発売後、SNS上で多くのお客様がFURIKAKIXを使用したレシピを発信し、楽しんでくださっていたり、若年層のお客様が『亀田の柿の種』と接点を持ってくださっているのが大変嬉しかったです」(亀田製菓 広報・藤崎さん)
自社製品を、消費者がどう楽しんでいるのかを冷静に分析した上での、思い切りのいい発想が奏功したヒット商品と言えるだろう。
「まずい」のは、あくまでも味じゃなくて「経営状況」
銚子電鉄「まずい棒」
「まずいです! 経営状況が……」と苦しい表情で口にする、“火の車”ならぬ“火の電車”。漫画家・日野日出志先生描き下ろしのキャラクターまずえもん(魔図衛門)に、「まずい……もう一本!」を合い言葉にしたCM動画ーー何から何までツッコミどころだらけの商品、それが銚子電鉄の「まずい棒」である。
銚子電鉄といえば、「ぬれ煎餅を買って下さい、電車修理代を稼がなくちゃいけないんです」というホームページ上での必死の書き込みが人々の胸を打ち、爆発的な売り上げを記録し会社倒産の危機を脱した奇跡のエピソードが有名だが、その後も「イルミネーション電車」「お化け屋敷電車」など、運行存続の為にユニークな試みを行ってきた。「ぬれ煎餅」に次ぐ第二のヒット商品を、ということで生み出された「まずい棒」だが、実は開発に2年の歳月を要したのだという。
「『まずい棒』を名乗るからには本当にまずくしないと、と企画立案から2年の間、「まずさ」の探求に没頭しました。しかし、どれだけまずくしようと頑張っても、それなりに美味しくなってしまう。悩みに悩んだ結果、そもそもお客さんにまずいものを売ってはいけないのでは? という事に気付き、普通に美味しいものを作ることにしました」(「まずい棒」企画・考案 怪談蒐集家の寺井広樹さん)
発売からわずか4ヵ月で50万本を突破しただけでなく、キャラクターデザインの日野日出志先生が、今回の企画にインスパイアされ20年ぶりに画業再会宣言をするなど、正に”皆を幸せにした”と言える「まずい棒」。しかし、銚子電鉄の経営が依然としてまずいのには変わりない。
そこで、2018年12月末には「最近あった、まずいこと」を絵馬に書いて祈念できる、「まずえもん神社」が犬吠駅に誕生。更に2019年には、「まずい棒」第二弾・チーズ味の発売と、まずえもんの妹である新キャラクター「まずか(魔図華)ちゃん」のお披露目も控えているという。
飽くなき挑戦を続ける銚子電鉄「まずい棒」には、今後も我が道を走り続けていってほしい。
猫? それとも犬? 撫でられるロボットと暮らす時代
ユカイ工学株式会社「Qoobo(クーボ)」
クラウドファンディングでの資金調達は今や珍しいものではなくなったが、2017年にユカイ工学株式会社が発表したコミュニケーションロボット「Qoobo(クーボ)」の勢いは凄まじかった。
クッションにしっぽが生えた、「猫?」とも「犬?」とも思える摩訶不思議な外見。撫でるのに合わせて、フリフリと嬉しそうにしっぽを振る姿。動画公開から一週間で1000万回再生を記録しただけでなく、ファンドの目標額も僅か1週間で100%を達成した。SNS上で拡散され続け、国内外での注目が高まるなか、ついに2018年秋、満を持して発売されたのである。
元々は、実家で犬を沢山飼っている女性デザイナーの「こんなものがあったら……」という想いから産まれたという「Qoobo」。ペット不可のマンションで暮らす都会の人間や、アレルギーなどで飼えないといった悩みを抱える人でも、動物を飼っているような気持ちになれるものを届けたい、と開発がスタートした。
「まず、『部屋にあって、身近に感じられるものはなんだろう?』と考え、クッションなら抱っこしたりも出来るし、おうちの中でずっと使い続けていただけるのではないか、と思いました。しっぽだけにしたのは、使用者の方が思い思いのペットを想像して使っていただけるようにしたかったからです。それによって、どなたにも可愛がってもらえる商品になったと思います」(ユカイ工学株式会社 CMO・冨永翼さん)
「発売前、様々な展示会に参加しましたが、皆さん笑顔でブースに寄ってきてくれるのが印象的でした。ある介護施設にお邪魔した際には、Qooboを手に取ってくれた高齢の入居者さんが、昔飼っていた猫のお話をしてくれました。職員の方も他の入居者の方も『猫を飼っていたなんて知らなかった』『初めて聞いた』と驚いていて、なんだかその時、商品の可能性を見たように感じました」(冨永さん)
単に心を癒すだけではなく、人の思い出や、気持ちにもそっと寄り添ってくれるコミュニケーションロボット「Qoobo」。2019年には新たな試みも予定しているとのことで、今後更なる広がりを見せるだろうユカイ企画と「Qoobo」は、来年も要注目だ。
60年越しの「縁」が産んだコラボ企画
日清食品「MOMOFUKU NOODLE(モモフクヌードル)」
インスタ映え至上主義の昨今、ついに“盛れる”カップヌードルが誕生した。
阪急百貨店と日清食品株式会社のコラボによって2018年10月、阪急うめだ本店に登場した“未来のカップヌードル”「MOMOFUKU NOODLE」。
ユーザー自らスープと具材を好みで選べるというオーダーメイド型であることや、化学調味料を一切使用しないナチュラル志向であることも注目を集めただけでなく、そのスタイリッシュな見た目についても「オシャレ」「可愛い」「女子会にも使える」と多くの反響を呼び、オープン時には2時間待ちの列を作るほど大きな話題となった。
「阪急百貨店様から弊社にコラボ企画の話を頂き、『“新たなターゲットを獲得する”という大きなチャレンジに挑む』という両者の意志が合致した結果、企画の実現に至りました。実は、今から60年前に日清食品創業者の安藤百福が世界初のインスタントラーメン『チキンラーメン』を発明した際、最初に試食販売を実施したのが阪急うめだ本店様の地下食品売場だったんです。60年という時を経て、またご縁を頂いたということになります」(日清食品株式会社 広報部・青木さん)
「これまでの『カップめん』のイメージを覆そうと開発を始めましたが、正直、どこまでやって良いのか分からない部分もありました。『可愛い』『SNS映えする』『ナチュラル』など、従来の『カップヌードル』にはなかった価値を多く提案するチャレンジ商品。お客様にどう受け入れられるか最初は不安でしたが、連日行列ができ、『美味しい』というお声を頂戴するなど、ご好評を頂けていることがとても嬉しいです」
今後はギフト商品の拡充や、新しいスープや具材の投入などの展開を予定しているという。ますます進化していく「MOMOFUKU NOODLE」に、今後も大期待だ。
「MOMOFUKU NOODLE (モモフクヌードル)」日清食品公式ホームページはコチラ
良いものも悪いものもSNSですぐに拡散され、ネットで点数が付けられてしまう今日この頃。話題になった商品は、ただ面白さやウケを狙ったわけではなく、「こんな商品を人々に届けたい」「こんな新しいことに挑戦したい」という作り手側の熱い想いと、何よりも商品に対する「愛」に溢れていたのだ。
- 取材・文:大門磨央