六代目山口組vs.神戸山口組 分裂抗争最終局面「緊迫の内幕」 | FRIDAYデジタル

六代目山口組vs.神戸山口組 分裂抗争最終局面「緊迫の内幕」

背景にあるのは司令塔である六代目山口組 高山清司若頭の「焦り」 膠着状態が続いているが、背後ではさまざまな作戦が進行していた

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’20年6月、東京・六本木の稲川会総本部を訪れた高山若頭。’19年10月に高山若頭が出所した後、抗争は終結に向け一気に動き出した

山口組の分裂抗争はロシアのウクライナ侵攻とは違ってドンパチのない膠着(こうちゃく)状態に入っている。

そうしたなか、警察庁は六代目山口組は去年末時点で構成員と準構成員を合わせて8500人。前年より300人増えた一方、神戸山口組は1500人減って1000人になったと発表している。

六代目山口組だけが勢力増になったわけだが、抗争の司令塔である六代目山口組・高山清司若頭は「なぜか焦っている」と愛知県警の刑事OBが指摘する。

「分裂の原因が高山の強権政治にあったことは本人も自覚しているだろうから、高山が抗争に終止符を打たないことには山口組の代替わりもあり得ない。しかし神戸山口組の井上邦雄(組長)は『ワシ一人になっても組は解散しないし、引退もしない』と頑張っている。

勢力比でいえばもう勝負はついている。神戸が敗れたことはハッキリしているけど、なにしろ当の井上がご免なさいといわないのだから、高山とすれば攻め続けざるを得ない」

井上組長が六代目側に殺傷されれば話は簡単で、抗争終結になる。が、兵庫県警にすれば、むざむざ井上組長を討たせるわけにいかない。面子にかけて、山口組の中心を名古屋市に移すなど考えたくもないからだ。よって井上組長の周りをがっちり固めて、六代目側の強行突破、襲撃を許さない。

六代目側があくまで暴力的抹殺にこだわれば、高山若頭が殺人教唆に問われる危険さえ出てくる。最終段階に入って冒険はできない。高山若頭としては搦(から)め手から井上組長を攻めることになる。

先の刑事OBが続ける。

「神戸山口組の寺岡修(若頭)が去年から九州や山陽に飛び、道仁会・小林哲治、浅野組・中岡豊、侠道会・池澤望ら各地のトップと会談を重ねている。いずれも前から井上や寺岡と交際のある組織だけど、会談のテーマは分裂抗争の終結だ。要はいかにして井上に引退・解散を飲ませるか、井上を説得してくれということに尽きる。

しかし、他団体とすれば、男がいったん死ぬ覚悟で神戸山口組を旗揚げした以上、『あんたは負けたんだよ、いいかげん降参すれば』とは言い出しにくい。誰にしろ、井上に恨まれるだけの損な役は引き受けたくない。というわけで、寺岡の終結工作は高山の思うようには進まなかったから結局3月、六代目側は徳島の寺岡の愛人宅にトラックを突っ込み、西宮市の元関連施設に銃弾も撃ち込んだ」

寺岡若頭の終結工作ははかばかしく進まなかった。高山若頭がとった次の手は井上組長の神戸追い出し作戦である。

これは神戸山口組を脱退して六代目山口組に移った五代目山健組・中田浩司組長(殺人未遂などで起訴され勾留中)を通じて実施している。

中田組長は兵庫県警に勾留されていながら、使者を通じて高山若頭に命じられたのだろう。神戸市中央区花隈町の山健組関連施設や同北区の井上組長の自宅、兵庫県加古郡稲美町の別宅の所有権移転登記を求める裁判を神戸地裁に起こした。

いずれの不動産も井上組長や息のかかった者などが所有・管理している物件であることから、中田組長が井上組長を身ぐるみ剥(は)いで表に放り出す作戦と見られる。仮に所有権が移って井上組長が居住権を失えば、ジャングルに裸で放り出すのと同じになるし、所有権が中田組長側に移らなくても、裁判で係争中になれば不動産の売買をストップできる。土地、建物を換金できないから、神戸山口組側が金詰まりになる公算も強まる。

妙手といっていい。抗争に使えるのは暴力だけでなく、頭もそうだと高山若頭は胸を張るかもしれない。

若頭交代説が浮上したワケ

ところで最近、一部に突飛すぎる情報が流れた。高山若頭が六代目山口組若頭の座を退き、安東美樹若頭補佐(竹中組組長、姫路)にバトンタッチするというのだ。もちろん常識的にあり得る話ではない。六代目山口組のナンバースリーは竹内照明若頭補佐(弘道会会長、名古屋)と決まっている。あえて次の若頭は誰かと探せば、衆目の一致するところ、竹内若頭補佐になるだろう。

念のため弘道会関係者に質してみると、

「忌憚(きたん)のないところ、今、高山若頭が力量を認めているのは野内正博さん(弘道会若頭、野内組組長、岐阜)と安東美樹さんです。竹内照明さんはちょっと影が薄くなった。だから簡単に竹内さんが3番目とはいえない」

そういえばこういう情報もある。

「竹内会長の姐さんが最近姫路に行った。安東夫妻が姫路市魚町の懐石料理で接待したところ、姐さんが『うちの人は誤解されやすいんです。安東さん、うちの人をこれからもよろしくお願いしますね』と言ったようです」(竹中組に近い事業家)

が、これは世間にありふれた儀礼的口上であり、深い意味はないと見ることもできる。

いったいなぜ安東若頭説は浮上したのか。東京の中立系組長が言う。

「井上組長に引退、解散を迫る際、高山さんが『あんたに退いてもらう代わりに俺も若頭を退く。俺の後は安東美樹がやってくれる』といえば、井上組長にしたって引退話を飲みやすいじゃないですか。それに安東さんは弘道会系の人じゃないから、周りから弘道会の山口組支配が司、高山、竹内と三代続くといわれないで済む。

分裂抗争は六代目側が圧倒的に優勢で、井上組長になにも遠慮する必要はないんだけど、しかし『俺も退く』といえば、話が丸く収まり、まとまりやすい。もし、この話が気に食わなければ、分裂が終結した後、高山さんは若頭に復活してもいいし、七代目の組長に座ってもいい。抗争終結が一大テーマなんだから、そのためにはなんでもやるって話でしょう」

つまり安東若頭説は「当て馬」と考えられる。誰も本気で信じていないが、終結を進めるに当たって役に立つ話かもしれない。

他方、もっとまともな方策、高山若頭の焦りから生まれたような間に合わせ策ではないと受け取る向きもある。

神戸の組関係者が語る。

「安東さんが井上邦雄組長に直接会って話を詰めることは可能です。安東さんだけができる。死んだ四代目・竹中正久組長や岡山の竹中武組長は二人とも調停の名人だった。菅谷政雄の引退、中野太郎の引退、全部竹中兄弟が片づけた。

安東さんは仮にも竹中組の名を継いでいる。本人も自覚しているようだが、運のよさも持ち合わせている。そういう安東さんが若頭の肩書で井上さんに因果を含める。もともと神戸山口組では、六代目側ではなく、神戸側で竹中組を復活させようとした経緯がある。使者としての安東さんを受け入れます」

安東若頭説は抗争終結のどん詰まりで生まれた「冗談から出た駒」だろうが、笑い飛ばしを許さないリアリティを持つのかもしれない。

3月7日、品川駅に現れた司忍組長。窓越しに本誌カメラマンに手を挙げるなど、リラックスした様子だった
司忍組長と高山若頭(’13年撮影)。「代替わりは抗争に終止符を打たないことにはあり得ない」(愛知県警OB)という
神戸山口組・井上邦雄組長(中央)の周囲では、分裂抗争終結に向けたさまざまな工作が行われている

『FRIDAY』2022年5月6・13日号より

  • 取材・文溝口 敦

    ノンフィクション作家

  • PHOTO結束武郎(1枚目) 濱﨑慎治(2枚目)

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