敏腕Pが世界に向け発信する日本発ドラマ『17才の帝国』の気炎 | FRIDAYデジタル

敏腕Pが世界に向け発信する日本発ドラマ『17才の帝国』の気炎

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海外では全くなかった「日本のドラマ」のイメージ… 

暗い森を歩く少女、鉄の扉を開けた先には巨大なAIがあり、少女の装着したメガネがチカチカ光る。すると、警報と共に3つの塔の先端から光が放たれ、リング状に連なり――。

『17才の帝国』(NHK総合)の第一話冒頭数分だけで、アニメのようなドラマのような映像と音の不思議な質感に、ぞくぞくする。

「NHK土曜ドラマが、今年度から、『NHKワールドJAPAN』で、海外向けにも放送・配信されることになりました。僕は土曜ドラマ枠の責任者でもあったので、今、世界に向かって何を出したら面白いのか、その第1弾として、海外のプロデューサーたちにリサーチをかけるプロセスからスタートしたんです。 

難しいと思ったのは、「日本のドラマと聞いて何を思いますか?」という質問に、『日本のドラマ』のイメージが海外では全くなかったこと。これは、何もない荒野に向かって何かを投げていくような作業になるな、と結構ビビりました(苦笑)。 

いろいろなモチーフを海外に提案する中で、日本のテクノロジー、AIを使ったものに興味が集まり、先行した蓄積のあるジャパンアニメのイメージを用いて『AI・SF・ジャパンアニメ』をキーワードに、アニメと実写の融合を目指すことになりました」

そう語るのは、本作の制作統括を務める訓覇圭氏。

クリエイターチームの一員には、『カルテット』(TBS)や『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ)などを手掛けた民放ドラマプロデューサー・佐野亜裕美氏(現・カンテレ)を迎え、『けいおん』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』などの吉田玲子氏が脚本を手掛ける“青春と政治、SFファンタジー”とあって、放送開始前からドラマ好き、アニメ好きの間では大いに注目されていた。

アニメと実写の融合を目指したという不思議な世界観に注目したい

舞台は「サンセット・ジャパン」と揶揄されている近未来の日本

SFといっても、舞台は202×年、人口の40%を高齢者が占め、経済は落ち込み、「サンセット・ジャパン」と揶揄されている近未来の日本だ。「政治」をテーマにしたのはなぜなのか。

「佐野さんのほうから、実写とアニメの融合を目指すなら、日頃お付き合いのある実写の脚本家ではなく、アニメ脚本家の吉田玲子さんが良いのではないかという案が出ました。 

それで、吉田さんにお会いしたとき、やってみたいと思っていたテーマとして、17才の人たちが国を作る話と『17才の帝国』というタイトルが出てきて、『だったら、政治の話になってきますね』と」

物語は、出口のない状況にある日本で、「Utopi-AI」(通称UA/ウーア)というプロジェクトが立ち上がるところから始まる。AIが実験都市・ウーアの総理大臣として選んだのは、17才の少年・真木亜蘭(神尾楓珠)で、他の閣僚も20才前後の若者ばかり(山田杏奈、河合優実、望月歩、染谷将太)。若者が政治を担う上での課題となる「経験」の少なさをAIが補うというのは、一見希望に満ちているが、背景にはリアルに今、日本が直面している危機と絶望がある。

「批評性のある作品を作るというのは、NHKドラマの伝統ではあるんです。ただ今回は、批評性、現代性といったジャーナルな側面を持ちつつ、子どもが観ても面白い、むしろ子どもの方が面白く観られるものとして作るトライではありました。 

実写で政治を描くとなると、難しく、重々しくなりがちですが、アニメタッチで描くなら、普段の重力、伝統、よどみのようなものから解放され、新しい青春ドラマが描けるんじゃないかという思いはありました」 

また、舞台を「202×年」という至近の未来に設定したところも、本作のキモだ。

「ディザスターなど、何かが起こった日本で大きな部分が変わってしまうというのが、普通のSF設定だと思うんですよ。 

でも、僕らの規模感で大作と同じようなことをやっても勝てないですし、吉田さんと話をしていて、『政治』を描くなら、政治は身近なものだから、今抱えている問題を地続きで捉えていくことで、ファンタジーとリアルの中間という面白さが出るのではないかということになったんです」 

とはいえ、あがってくる台本を最初はどう読んで良いかわからなかったと笑う。

「役者としても実験的なことで、答えが見えないことに向かっていく感覚があったと思います。 

でも、山田杏奈さんが、撮影初日に神社でお守りを買うシーンで、『キャラっぽいぞ』と僕は感動して。杏奈さんはアニメを見まくり、動きや表情を研究してきたそうで、そこにブルーの制服など、伊賀大介さんの素晴らしい衣装の力も加わって、撮影が進むうちに、日本のドラマで観たことのない世界ができるかもしれないと感じるようになりました」 

アニメを見まくり、動きや表情を研究したという山田杏奈さん

エリート政治家・星野源×AIに選ばれた17才の総理・神尾楓珠

また、ウーアのプロジェクトを主導するエリート政治家・平清志を演じる星野源、AIに選ばれた17才の総理・真木を演じる神尾楓珠の印象については、こう語る。

「星野さんのもつ吉田玲子さんの世界への理解力をとても信頼していたので、こちらの思いを伝えるための言葉を費やすよりも、星野さんが考え、出してくるものを待ち、そこを活かしていく方が絶対に豊かになるだろうと思い、何か引っかかりがあった際にだけ一言二言確認をする進め方にしました。 

神尾さんはこの作品の原点となる存在で、AIが選んだ17才の高校生という、とてつもなくスーパーな存在なので、相当重荷だったと思うんですよ。吉田さんは脚本を書かれるときに、『クールだけど少年のような人物』となる真木に、最初から神尾さんのイメージを持っていたそうで。AIの考えることなんてわかるわけがないし、それでも説得力を持たせなければいけない、ミステリアスな存在で。 

でも、第2話の脚本を読んだとき、びっくりしたんです。僕の中の真木はもっと大人のイメージだったんですが、中学生か、それよりもっと下の年齢の子どものような伸びやかさ、素直さがあって、ミステリアスさとの落差がすごいんですよ。 

その落差を表現するのが大変だったと思うのですが、神尾さんは見事にクリアーしてくれていると思います」 

土曜ドラマ『17才の帝国』は、NHK総合で毎週土曜 よる10時<全5回>

常に最も新しく、最もトガった挑戦をし続ける原動力

また、初めて一緒に仕事をした佐野氏の印象とは。

「佐野さんはエネルギーとピュアさと、テクニックを兼ね備えた、ものすごく優秀な方で、ビビりました。でも、脚本家さんや役者さんに対する距離の取り方、責任の取り方などが自分と近い感じがしたのは不思議で嬉しかったですね。 

僕自身も脚本家さん、役者さんに対して伴走型・寄り添い型のほうですが、佐野さんはその方法論が徹底していて、どんなときも疑いなく寄り添う、プロデューサーとしての芯の強さに驚きました。 

それに、スピード感もあって、例えば僕が2日で考えましょうかというところを、6時間でと佐野さんは言う。目の前の課題にどれくらいの時間を使うべきか? という判断はプロデューサーの超重要な部分で、同じ状況で同じ職業の人間が同時にいるのは、大変なことではあるのですが、とても幸せな経験でした」

それにしても、骨太な経済エンターテインメントドラマ『ハゲタカ』や、宮藤官九郎脚本のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』とNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』、20代の気鋭の劇作家・加藤拓也氏が脚本を手掛けるジュブナイルSF、ダークファンタジー『きれいのくに』など、これまで観たことのないドラマを作り続けている訓覇圭氏。なぜ常に最も新しく、最もトガった挑戦を続けているのだろうか。

「たぶん僕は、とっても“普通”なんですよ。常に新しいものを探して、莫大な数の作品を観ているような素敵なクリエイターでは、全くなくて。 

モノを作るとき、どうせなら見たことがないものを見たいという気持ちは誰にでもあると思うんです。出発点は、どうせ作るならという気持ちです。ただ、自分にとってはそういう見たことのないモノを目指して『この組み合わせは絶対やらないな』『これを組み合わせたらどうなるだろう』などと考えるのが、一番エネルギーが出ることで、その部分がない仕事は不思議とまったく力が湧き上がってこないのです。 

その心の在り方は、新しい土地に旅してみたいとか、決まりきった生活の中で新しい何かに出会ったときのワクワク感といったすごく”普通”な感じです。もう一つはNHKに育ててもらったことで、新しい表現や面白い表現を許してもらえるので、新しいこと・面白いことをやり続けなければという思いですね」

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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