ヤマト参入で話題!「マウスピース矯正」に学会が異論の仰天背景 | FRIDAYデジタル

ヤマト参入で話題!「マウスピース矯正」に学会が異論の仰天背景

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マスク生活が続くコロナ禍、関心が高まっている「歯科矯正」

マスク着用で口元を隠す生活が続くコロナ禍、歯列矯正への関心が高まっているらしい。東京都渋谷区のある矯正歯科が歯並びに悩みのある20~30代の男女1065人を対象に実施した調査によると、「マスク生活が続く今だからこそ積極的に取り組んでみたいこと」との問いに対し、31.5%が「歯列矯正」と回答した。

そんな中、ヤマト運輸がマウスピース矯正サービスを手がけるDRIPSと連携し、新たに3Dプリンターを活用した歯科矯正用マウスピースの製造、配送を始めた。

この新サービスでは、DRIPSが提携する矯正専門歯科から送られる患者の歯型スキャンデータをもとにヤマト運輸が3Dプリンターで歯型模型を造形し、マウスピースを作成。治療の進捗に合わせてマウスピースを作り発送するため、矯正期間を短縮できるという。

ヤマト運輸がマウスピース矯正サービスを手がけるDRIPSと連携し、新たに3Dプリンターを活用した歯科矯正用マウスピースの製造、配送を始めた(写真:アフロ)

アメリカで人気の「オンラインと宅配」で完結するマウスピース矯正サービス

マウスピース矯正は、オーダーメイドのマウスピース型矯正装置を段階的につけ替えることで歯を少しずつ動かして歯並びを整えていく方法で、主に軽中度の症状に用いられる。矯正治療先進国と言われるアメリカでは、従来のワイヤーと共にマウスピースも歯列矯正の主流になっているらしい。

「アメリカでは『インビザライン』がマウスピース矯正の代名詞のようになっていて、私が渡米した2015年にはすでに普及していました」

こう話すのはロサンゼルス在住の健康系ライター、廣田陽子さんだ。

廣田さんが言うインビザラインはアメリカで開発されたマウスピース型の歯科矯正装置。100を超える国や地域で導入され、日本でも2006年から提供されている。 

「アメリカ人はそもそも歯に対する意識が高く、歯並びが相当いい子でない限り子どもの頃に歯列矯正を済ませています。大人になって矯正する人は、ほとんどが軽症なんです。だからマウスピースが浸透しているんじゃないでしょうか。 

今は、歯科医に行かずにオンラインでマウスピースをオーダーできる歯列矯正サービスも登場しています。『スマイルダイレクトクラブ』は5年くらい前からかなり注目されていました」

そのオンライン矯正サービスの仕組みは――。

まずオンラインで申し込み、送られてくるキットを使って自分で歯型を取って返送。すると3Dの矯正プランがメールで送られてくるので、確認し了承。矯正に必要な分のマウスピースがまとめて届く。矯正歯科に通う必要がなく、オンラインと宅配で矯正が完結するというわけだ。 

「実は私もアメリカで矯正したんです。オンラインの矯正サービスに関心を持ちつつ、自己判断は危険だと思ったのと顎関節症の気があったので、ロサンゼルスで通っている一般歯科の日本人ドクターに矯正歯科を紹介してもらい、相談しました。その結果、私の歯と顎の状態にはワイヤーよりマウスピースが適しているということで、インビザラインで矯正することになったんです。歯の矯正状態に合わせて歯間のスペースや噛み合わせを丁寧に調整してもらえたので、対面診療を選んでよかったと思っています」

矯正歯科が介在しないオンラインの矯正サービスでは、歯の間を削ってスペースを作るなどの調整は当然のことながら受けられない。それで果たして、歯並びがきれいになるのだろうか。

「ロサンゼルスではインビザラインの費用は6000ドル前後が主流です。オンライン矯正だと通院不要で料金が3分の1以下と安いですが、歯が抜け落ちてしまう事例もあると聞きました。安全性に問題があるからか、歯科医師たちもオンライン矯正は勧めていません。 

日本人ドクターによると、日本人は顎が小さく歯が大きいために歯並びが悪くなるケースが多いそうです。本来は抜歯などでスペースを作って矯正するところを、オンラインの場合はそれができません。そのため歯を外側に押し出して歯並びを揃えることになり、歯が抜け落ちたり噛み合わせが悪くなったりするリスクがあるんだとか。 

その話を聞いて、オンラインのみの診療は危険な気がしました」

廣田さんは渡米前に東京の矯正歯科で見積もりを取ったところ、250万円を提示されたという。歯科矯正は保険適用外のため値段に幅が。費用のわかりにくさにつながっている

マウスピース矯正に後ろ向きな日本の専門医。患者のメリットよりも…

ヤマト運輸とDRIPSが始めたサービスでは、患者がDRIPSの提携歯科を受診するのは初期の診察時のみで、矯正期間中はオンラインでの遠隔経過診察となるようだ。

このシステムを日本の歯科医はどう見ているのだろう。医療行政アナリストとしても活動する歯科医師の中田智之さんに聞いた。

「矯正治療の進行と歯の動きに合わせて柔軟にマウスピースを作成できる点で、私自身は歯科医としていいシステムだと捉えています。患者さんにとっては、オンラインでの遠隔診療で価格と通院のハードルが下がることも魅力でしょう。 

ただ、日本矯正歯科学会はヤマト運輸のサービスに対して懸念を表明しています」

日本矯正歯科学会の見解はおおむねこうだ。

『歯科矯正用マウスピース装置を歯科医師による対面診療を基盤とせず患者に配送するサービスについて重大な懸念を抱いており、厚生労働省、経済産業省、公益社団法人日本歯科医師会等とも協議していく』

一見、「歯科医を介さない歯科矯正」を問題視しているように読み解けるが……。

ワイヤー矯正とマウスピース矯正のどちらが適しているか、患者ファーストで診断してくれる矯正歯科医を選ぼうにも、日本では出会うのが難しいかもしれない……

「日本矯正歯科学会はそもそもマウスピース矯正を推奨していません。『ワイヤーのほうが絶対にきれいに仕上がるのに、なぜマウスピース矯正をしたがるのか』と考える矯正医が少なくないということです。 

ワイヤーは確かにきれいに矯正できますが、軽度の症状であればマウスピースで対応できます。患者さんからすれば、マウスピースは目立たないし、自分で外すことができて抵抗感が小さい。歯並びに多少の不満があるという程度の人であれば、マウスピース矯正を選びたいはずです」

マウスピース矯正のニーズがあるにもかかわらず、矯正歯科はワイヤーを勧めたがる傾向があるという。

「学会が認めたがらなくても、ニーズが先行してマウスピース矯正が広がる可能性はあります。インプラントがそうだったんです。学会がインプラント治療に見向きもしない中、開業医とメーカーが先導して治療法を確立してきました。今では歯周病や入れ歯などの学会で大きなテーマとして扱われています」

もしかすると、ヤマト運輸の新サービスは歯科矯正の分野に一石を投じたのかもしれない。

「ただし一方で、ヤマトのような大手が参入したことで、オンライン診療でマウスピース矯正に対応する歯科医院を安易に選ぶ人が出てこないか心配です。 

専門の歯科医がほとんど関与しないクリニックほど矯正費用は安い。往々にして責任の所在が明確ではありません。中には失敗しても一切責任を取らないところもあります。治療を終えた時に後悔しないためにも、価格だけで歯科医院を選んでほしくないですね」

では、歯列矯正をする場合、何を基準に歯科医を選べばいいのか。

「実は、矯正歯科医は専門医資格として厚労省に認定されていません。ただ日本矯正歯科学会、日本歯科矯正専門医認定機構、日本成人矯正歯科学会に認定資格があり、この3つの資格については歯科医の間でも信頼の目安になっています。こういった専門医がマウスピース矯正を扱うのであれば安心です。認定された歯科医はホームページなどに明記できますので、確認してみるといいでしょう」

どの分野もそうだが、矯正歯科もまた玉石混淆の状態。矯正する際は慎重に選びたい。

「マウスピース矯正を検討する際は、治療に責任を持つ矯正専門の歯科医が常勤していて、氏名や連絡手段、トラブル対応などを明示しているところを選んでください」と中田さん

廣田陽子(ひろた・ようこ)健康系の編集ライター、ヘルスコーチ。1980年、新潟県生まれ。健康系雑誌の編集部を経て2015年に渡米しフリーランスに。現在はロサンゼルスに在住し、健康や美容、ダイエットなどをテーマに日本のメディアで執筆。ヘルスコーチとしてオンラインで個別のダイエットコーチングも行う。

中田智之(なかだ・ともゆき)歯科医師、医療行政アナリスト。1984年、埼玉県生まれ。ニュースサイト「SAKISIRU」にて執筆活動中。

  • 取材・文斉藤さゆり

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