史上最年少出場…野田樹潤が語る「JKとレーサーの2刀流生活」
「クラスメイトと遊んだり、体育祭などの行事に参加したり、普通の女子高生らしいことを経験してみたかった――という思いはあります。ですが、いま、私は幸せです。好きなことに全力を注ぐことができていますから」
世界が注目する日本の16歳は、「普通じゃない経験をたくさんさせてもらって、人間的に成長できているのではないかと思っています」と続けた。
元F1ドライバー、野田英樹(53)を父に持つ女子高生レーサー、Jujuこと野田樹潤(じゅじゅ)は、日本人はおろか、アジア人の女性では前人未到となるF1ドライバーに最も近い存在と言われている。
F1ドライバーは世界でたった20人という超狭き門だが、Jujuはこれまで多くの常識を覆してきた。
3歳の誕生日に父に買ってもらったカートに乗り始め、4歳でレースデビュー。9歳で世界最年少のフォーミュラ・ドライバーとなった。日本のサーキットには年齢制限があるため、14歳にして祖国を飛び出し、’20年から参加したデンマークF4レースのデビュー戦でいきなり優勝。活躍を認められ、今年から女性限定の「Wシリーズ」に世界最年少レーサーとして参戦している。
「レースに関する一番古い記憶は、4歳のときのものですね。まわりにいた小さな子たちが怖がるなか、私はガンガン、スピードを出して走っていたそうです。たしかにまったく怖くなく、むしろ楽しかったんですよね(笑)。父の引退レースを見に行ったのも4歳のとき。『父が走るのはこれが最後。後は自分が頑張ろう』と幼心に思ったのを覚えています」
女子高生とプロレーサー。いささかギャップのありすぎる2刀流だが、Jujuは「快適ですよ」と笑う。
「モーターホーム(キャンピングカー)で家族と世界を転々としながら暮らしています。『ソニック810』という車両なんですが、シャワー、キッチン、トイレがついていて、ベッドルームが2つもあってくつろげます。マンションと変わらないですよ。高校生なので、勉学は大事にしています。オンラインで授業を受けたり、まとめて送られてくる課題をやったり。レースやトレーニングのとき以外はモーターホームに缶詰めですね。シーズン中は練習、コースへ移動、レース本番、取材対応、身体のトレーニング、そして勉強の繰り返しです」
束の間のオフは友達とはしゃぎ、動物と戯(たわむ)れてリラックスする。
「モーターホームには野生のハリネズミくらいしかいませんが、日本では、犬6匹と猫を3匹、飼っています。よく『特殊な人生だね』って言われますが、家族も友達も、私にはいたって普通に接してくれています。プライベートではレースにはほとんど触れないので、少ないプライベートの時間を満喫させてもらっている感じですね」
いまの生活ではリアルに登校することはほとんどなく、級友や先輩と接する機会が限られるが、Jujuは「学校だと一番年齢が離れていても2歳ですが、レーサーだと、スポンサーさんやエンジニアなど、大人たちと話す機会が多いので、いろいろ学べる」とあくまで前向きだ。
心が折れたり、逃げ出したくなったりしたことはないのか。
「7歳のころに、レースに負けて泣いたことがあるんですが、そのとき、父にこう言われました。『負けてもいいんだよ。大事なのは、″負けても、負けても諦めないこと″だ』って。その言葉をいまもずっと大切にしています。実は勝ったときより、負けたときのほうが成長する上で大事な経験となるんですよね。負けたら、『これならもう負けない』と思えるまで練習や勉強をする。負けるわけがないという根拠を作ります」
「Wシリーズ」初戦は予選18位(最下位)から順位を上げ、レース2で15位。2戦目は13位でフィニッシュした。2年以内に表彰台に上ることができれば、F1ドライバーの夢がグッと近くなる。
「F1ドライバーになるにはケタ外れの努力と強い意思が必要だと思っています。他人は他人、自分が最大のライバルというのが私の考え方ですが、最善を尽くし続ければ、いつか夢にたどり着けるのではないかと思っています」
受け答えもパーフェクト。「苦手なことなんてないのでは?」と聞くと、恐るべき16歳は白い歯を見せた。
「片付け、ですかね(笑)」
スーパー女子高生の挑戦は、今年10月に鈴鹿サーキットで観戦可能だ。







『FRIDAY』2022年7月15日号より