今も続く「教師のバトン」…国防強化の陰で疲弊する「教育現場」 | FRIDAYデジタル

今も続く「教師のバトン」…国防強化の陰で疲弊する「教育現場」

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岸田総理は「『教育』は国家の基本」と言うが…

「子育てが一段落して来たから、そろそろ講師でもしようかと思って登録を考えたけど、登録するとすぐに『来週から来て』みたいな連絡が来ると聞いて、怖くなって、結局やめたの。教職に就いたことのない人でもすぐに連絡来るから、何なら登録してみて」

そんな話を東京都の小学校で教員をしていた友人から聞いた。

また、別の友人からは「講師登録しようと思ったけど、待遇面を見てやめた。あのブラックさで、あの待遇は、ない」「募集リスト見たら、あまりの数にドン引きした」とも聞いた。

昨年、文部科学省が教員らにTwitterなどを通じて仕事の魅力を発信してほしいという意図で始めたプロジェクト「♯教師のバトン」。しかし、フタを開けてみると、本来の狙いに反して、過酷な労働環境を訴える内容ばかりが投稿される事態となり、教員不足はマスコミ等でも取り上げられ、大いに話題になった。

それを一過性のニュースとして触れ、過去の話題ととらえている人もいるだろう。

しかし、「♯教師のバトン」は今も続いていて、事態は改善されるどころか、ますます悪化している。

岸田総理は自民党の重点政策として「『誰一人残さない』『伸びる子はどんどん伸ばす』教育を実現。家庭や学校や地域社会で、豊かな学びの機会を提供します。」とツイートしたが…(写真:アフロ)

授業が「自習」に…。深刻化する教員不足

文部科学省は昨年度、全国の公立小中高校と特別支援学校を対象に、教員不足に関する全国調査を初めて実施。昨年4月始業日時点で、全国では2558人が計画通りに配置されていなかったものの、東京都は小中学校とも不足ゼロという結果が発表された。

その一方で、文科省は今年度も厳しい教員不足の状況が報告されていると全国の教育委員会に緊急で通知。教員免許がなくても知識や経験のある社会人を教員として採用できる「特別免許の制度」について積極的活用を促している。

さらに、今年7月1日からは、多忙な教員たちに大きな負担となっていた「教員免許更新制」が廃止になった。しかし、そのかわりに個々の教員が研修を記録することや校長による指導助言を義務付けられ、「現場の大変さを全く理解していない」という批判もすでに相次いでいる。

実際、教員不足は非常に深刻だ。

東京都教育委員会のHPを見ると、「【急募】東京都公立学校臨時的任用教員を募集しています!皆様のお力をお貸しください!」(6月13日)をはじめ、2022年だけでも講師募集のリリースが頻繁にされている。

6月16日には「東京都教育委員会」公式Twitterでこんな投稿もあった。

「(拍手のマーク)臨時の先生、大募集! 【臨時的任用教員ってなに?】お仕事内容は正規の先生と同じで、授業をはじめ、学級担任を担っていただくこともあります!(以下略)」

これには「いまの働かせ方は教師に対する人権侵害です」「3ヵ月経たずに、『臨時の先生、大募集!』とか言っちゃうあたりヤバイですよー」「臨時的任用の立場で正規と同等の仕事を3月までなんて、有りえませんから。それは虫が良すぎますよ」などの批判のリプが続出する事態になっていた。

教員不足は東京だけではなく、兵庫県内の公立学校では114人足りず、国語が自習になっていることが報じられたばかり。また、「学校だよりで教員募集されていた」「メールやチラシで教員の募集があった」「コンビニに教員募集のポスターが貼られていたことがあった」「宣伝カーで教員募集していた」など、各地で呟かれているが……。

主な原因は、就職氷河期世代の無計画な採用抑制

こうしたなりふり構わぬ施策に不安や不満を抱くのは、保護者ばかりではない。

筆者の出身大でもある国立の教員養成単科大・東京学芸大学教育学部を卒業した第二次ベビーブーム世代の会社員(40代)は言う。

「令和5年度の採用見込者数は2870人、令和4年は2640人、その前は3000人以上で、倍率も3倍台と発表されています。でも、私が受けた頃は東京都の小学校教員全体の募集が定員50人と発表され、大騒ぎになりました。確か、後に100人に変更されたのかな。 

それでも、ただでさえ人口の多い第二次ベビーブーム世代で、バブル崩壊による就職氷河期世代でもあって、なおかつ教員採用試験は少子化による採用抑制が図られた時期で、教員採用試験は高倍率の超難関でした。 

クラスの中で、現役で東京都の小学校教員になった人は一人いた程度。あまりに高倍率のため、出身地でもないのに、比較的倍率がゆるやかな地域の採用試験を受ける人もたくさんいました。民間に行くクラスメートを除き、卒業式の時に進路が決まっていた人はごくわずかで、ほとんどがプータローという『教員採用試験浪人』が当たり前だったんですよ」

実際、筆者の周りでも優秀な友人たちの多くが、採用試験浪人期間を経て、教員になった。なかには、塾講師のバイトなどを経て教員になった人、採用試験を途中で受けるのをやめて個人塾を始めた人、別の分野に就職した人、教員やめて別の道に行った人など、いろいろだ。

今は小中学校共に「ケータイ・スマホ使用など、ネットリテラシーの指導」「子ども同士のSNSトラブルの相談やその指導」「保護者からのクレーム」「近隣からのクレーム対応」など、授業外の仕事が大量にある(写真はイメージ:アフロ)

ますますブラック化する「教育現場」

「教員不足の現状は、一時の無計画な採用抑制によって、現在40代くらいの世代がごっそり抜けているせいが大きいですよ。 

全国的に見ても、今の平均倍率が3倍くらいなのに、ピークの2000年度は12.5倍ですから。私が教員になったときは、同世代の教員は学校に全くいなくて、だいぶ年上ばかりでした。先輩方には『あなたたちの世代は採用が少なすぎて、人が全然いないから、絶対に副校長とか来るからね』と言われて、実際やる人がいなくてやっています。 

教員不足のために、非常勤講師の先生がクラス担任になることは多々ありますが、副校長がクラス担任を兼ねているところもあるんですよ。もともと副校長は激務なのに、さらにクラス担任まで……正直、あまりに無理がありますが、本当に不足しているので、仕方ないんです」(40代・都内の小学校教諭) 

「産休育休の他に、心を病んだり体を悪くしたりして休む先生もたくさんいるので、常に教員不足です。 

あまりに不足しているので、育休や病気、うつなどで休んだばかりの先生にすら『もう戻れる?』とすぐに連絡が行くらしいですよ。全然休めないですよね。 

知り合いの副校長なんて多忙すぎて混乱気味で、教員不足を補うために講師の登録名簿を片っ端からあたったものの、全く見つからず、途中で『さっきもお断りしましたが』と言われたとか。気づいたら山ほどいる登録名簿の中で一人も見つからないまま、同じリストの2周目に入っていたそうですよ(苦笑)」(40代・都内の中学校副校長)

ちなみに、中学校では部活を外部委託するケースなども出てきているが、「休日に何かあったときに、教員が不在で誰が責任をとるのか」といった声が保護者から出ることもあり、「結局、外部委託しても責任者として教員が休日返上で出ている」というのが実態だ。今は小中学校共に「ケータイ・スマホ使用など、ネットリテラシーの指導」「子ども同士のSNSトラブルの相談やその指導」「保護者からのクレーム」「近隣からのクレーム対応」など、授業外の仕事が大量にある。

「しかも、行政からはかなりの頻度で、国の調査として、全職員の長期休業の過ごし方(行先)の調査とか、選挙のポスターの落書き調査とか、いつどこで何に活用するかわからない、結果も公表されない調査が大量に来るんですよ。 

忙しい先生方にその都度お願いするのも申し訳ないですし、それを集計する人がいないから、結局、自分(副校長)がやっています。(主事さんに頼むのは?)主事さんは、学校で一番忙しい人だから無理ですよ。 

事務専門の職員がいるだけでずいぶん助かるはずですし、残業代が出れば、教員不足も改善されると思うのですが」(都内の小学校副校長)

深刻な教員不足や教員の長時間労働が大きな問題となる中、事態を改善するには教員の待遇改善が喫緊の課題となっている。

7月10日には参議院選挙が実施されるが、「教育費」などを政策に掲げているかどうかも、各候補者や政党を選ぶ際の基準の一つにしてみてはいかがだろうか。

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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