変なモノ好き熱視線の番組『キュレーターバトル!!』ってなに? | FRIDAYデジタル

変なモノ好き熱視線の番組『キュレーターバトル!!』ってなに?

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「#ナゾすぎる」美術作品がツイッター上に溢れた…

戦闘シーンを描いた浮世絵や、1つの頭に3つの顔がある「美人画」、葛飾北斎が描いた手すりのない危険な吊り橋などなど……。いま、Twitter上に「#ナゾすぎる」と共に投稿されている摩訶不思議な珍品の数々をご存じだろうか。

これは、NHKの番組『キュレーターバトル‼』の企画によるもの。第1回は今年2月に放送され、第2回(7月19日放送)に向けてNHKの「びじゅつ委員長」Twitterがお題を出し、全国の美術館・博物館のキュレーターや研究員たちが「倉庫に眠る、知られざる逸品」や「隠れファンの多い不可思議な珍品」などをTwitterに投稿。それらをもとに番組が作られるという。

Twitter上に「#ナゾすぎる」と共に投稿されている摩訶不思議な珍品の数々…
Twitter上に「#ナゾすぎる」と共に投稿されている摩訶不思議な珍品の数々…

なぜこんな素敵かつ珍妙な企画を? インタビューを申し込むと、同番組を担当する制作会社「ドキュメンタリージャパン」の麻生歩プロデューサー(以下 麻生P)と、NHKエデュケーショナルの西島昌子プロデューサー(以下 西島P)が対応してくれた。

「キュレーターバトルはコロナ禍の2020年4月にイギリスのヨークシャー博物館が始めたTwitter上のイベントで、『一番奇妙なもの』『美術史上に残るお尻』など、ハッシュタグをつけて出された『お題』に対して、各地のキュレーターさんたちが美術館や博物館などの所蔵品を投稿し、面白さを競うというものでした。 

私自身、Twitter上でこの盛り上がりを見て、一体何だろうと思い、クリックしたら、変なミイラとか、えぐいものがいっぱい出てきて。さらにたどっていくと、見たこともないような絵画作品もたくさんあって、面白いなと思い、以前からの友人・西島さんに相談したら、『日本でもやっちゃえばいいじゃん』と言われたんです」(麻生P) 

『キュレーターバトル』第2弾は、7月19日(火)22:45~Eテレで放送予定。第1弾の再放送は7月16日(土)16:00~(Eテレ)
『キュレーターバトル』第2弾は、7月19日(火)22:45~Eテレで放送予定。第1弾の再放送は7月16日(土)16:00~(Eテレ)

本家を超えた!? 「テレビ」との連動という新たな展開

2020年8月には、ヨークシャーのキュレーターバトルにも参加していた、浮世絵を多く収蔵する「太田記念美術館」(渋谷区)の日野原健司学芸員に相談に行き、「本家」のヨークシャー博物館にも許可を申請した。 

「最初は著作権など、難しい問題があるのではないかと思いましたが、意外にとんとん拍子で。ヨークシャーのミリセント・キャロルさんには『テレビでやるの?』と驚かれ、『素晴らしい』と言われました。 

ヨークシャーから始まった『キュレーターバトル』はブームになり、その模様をBBCが報道として取り上げたんですが、『テレビ番組と連動してやる発想は私たちにはなかった』とおっしゃっていましたね」(麻生P)

さらに、西島PがNHKに提案書をエントリーし、11月には企画が通過した。

第1回のお題は「#ヘンな生きもの」「#ナゾすぎる」の2本だったが、その選定理由とは?

「ヨークシャーのご本家で一番盛り上がったのが、一番奇妙な、クリーピーなものだったので、その翻訳版のイメージでした。ただ、最初の立ち上げではどれだけ投稿してもらえるかわからず、不安もあったので、どんなお題なら投稿しやすいか、日野原さんからもアドバイスいただきました。始まってからは、ュレーターさん同士の口コミで広げていただいたところもあります」(麻生P) 

さらに画期的だったのは、Twitter『NHK びじゅつ委員長』を活用したこと。

「我々がフォロワーゼロから始めても誰も見ないだろうから、『日曜美術館』『美の壺』など、NHKの美術番組が共同で運営している歴史あるTwitter『NHK びじゅつ委員長』の胸を借りようということで、間借りすることになりました。 

これまで基本的に告知にしか使っていなかったびじゅつ委員長を募集用に使うため、NHK内の地ならしを行いました。これまでにない試みでしたが、結果的に“番組側が取材に出かけていく、従来の手法”とは違う、“投稿により『集合知』として知らない情報が集まる”面白い仕組みが生まれました」(西島P)

また、募集時には、所蔵品を揶揄したり、ヘンなものとして出したりするのに抵抗を抱くキュレーターが多いのではないかと危惧していたそうだが……。

「フタを開けてみると、老舗の美術館なども面白がってくださったんですよ。数々の国宝などを所蔵する格式高い静嘉堂文庫さんなども、次から次へと出してくれて。 

蔵で眠っているよりは、見てもらえる機会ができた方がいいと考えるキュレーターさんたちが多いことを改めて感じました」(麻生P) 

泉屋博古館東京の野地館長
泉屋博古館東京の野地館長
日本妖怪博物館『神社姫』の顔のアップ
日本妖怪博物館『神社姫』の顔のアップ
愛知県陶磁美術館の田畑さん
愛知県陶磁美術館の田畑さん

第2回のゲストは「研ナオコ」さん…

第1回で特に印象的だった作品とは?

「板橋区立美術館さんが所蔵している『五百羅漢図』。一見細かい線で描かれたように見える羅漢さんの絵が、よく見ると、背景も含めて全部文字で一筆書きのように順番を崩さずにお経で書かれていて、実物を見るとものすごく狂気で気持ちが悪いんです。 

また、所蔵品数が圧倒的なのは、科博(国立科学博物館)ですね。蛇のペニスとか珍品がたくさんあって、たぶん関係者の方々も把握しきれないくらいあると思いますので、まだまだ掘り甲斐がありそうです」(麻生P)

第1回の反響はどうだったのだろうか。

「Twitterで盛り上がるのは、ビジュアルインパクトの強いもので、例えば徳川家光のフクロミミズクなどのヘタウマ系の絵や、不思議系・カワイイ系など、クスッと笑えるものが多いですね。 

一方、番組では、作品の背景にあるストーリーなどを深堀りできるものを多く取り上げています。また、視聴者の皆さんは私たち作り手と同様に楽しんでくれていましたが、美術界隈は『うちも投稿すれば良かった』『こんな募集、知らなかった』などと各所でざわざわしたらしいです(笑)。 

番組で紹介したり、Twitterで投稿されたりした実物を見たいと、美術館や博物館を訪ねる人も多かったようですよ」(麻生P)

第2回は第1回から出演している山田五郎さん、美術史家の安村敏信さんに加え、研ナオコさんがゲストとして参戦する。

「知的好奇心が高く、且つ、くだけた感じを出せるのは誰だろうという話をしている中で、研ナオコさんが良いんじゃないかと。 

アマビエのTwitterのコスプレがバズっていて、あの印象がそのまま前回のヘンな生き物と同じだなと思ったこと。着ていらっしゃるもののセンスなどがすごく良く、美的なことに対する関心の高さや、独特の感性が感じられることも決め手でした」(西島P) 

第2弾のゲストは研ナオコさん。「#ヘンな生き物」!? Twitterでバズったアマビエ…
第2弾のゲストは研ナオコさん。「#ヘンな生き物」!? Twitterでバズったアマビエ…

第2回のテーマは、第1回に引き続き「ナゾすぎる」。これは、前回「ヘンな生きもの」の投稿数が放送直前までで97で、「ナゾすぎる」が99と、集まり過ぎて一部しか紹介できなかったため。今回もまた同じ題材で新規に募集をかけたところ、6月23日時点で112、前回分も含めて210ほど集まっているという。

どんな投稿作品がありますか?

「第2回の投稿では、群を抜いて7600ぐらいのライク数をとっている『#ナゾすぎる』掛け軸があります。スカートを履いている仏像が花押を踏みつけていて、背景に十字架が描かれているものなんですが……。

投稿してくれたのは武具などを専門で扱う井伊美術館さんで、この正体を教えて欲しいと投稿したところ、図書館で花押の全集を見てきたという方が、花押を特定してくれて、さらにみんなの集合知で『鍋島藩の何代目かが隠れキリシタンだったんじゃないか』といった話にまでなっています。この作品はまだ謎解きが進行中なのでもっと謎が解明された時に放送できないかと思っています。 

投稿して楽しむだけじゃなく、見る側もインタラクティブに参加してくる、双方向の盛り上がりができているのが第2回の楽しみ方ですね。 

キュレーター同士のつながりもあって、『この図版のこの部分にはこういう意味が』と、ある美術館が投稿したら、他の美術館が『ずっと謎でしたが、今、謎が解けました』なんてやり取りがあり、それに対する一般の方からのコメントがまたすごくて……。 

Twitterで面白がり、深掘りのストーリーを番組で知るのも良いですし、番組を見てからTwitterを知り、さらにたくさんの作品を見るのも面白い。Twitterとテレビ番組と連動することで、何度も楽しめる内容になっています」(麻生P) 

7600ぐらいのライク数をとっている #ナゾすぎる 掛け軸
7600ぐらいのライク数をとっている #ナゾすぎる 掛け軸

■『キュレーターバトル!!』の情報ぺージ「キュレバト日記」はコチラ

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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