熱量がヤバイ…『あさイチ』の名物企画「推し」特集誕生の舞台ウラ | FRIDAYデジタル

熱量がヤバイ…『あさイチ』の名物企画「推し」特集誕生の舞台ウラ

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「推し活」Dの企画+『沼ハマ』出身Pのノウハウが…

『あさイチ』(NHK総合)の名物企画ともなっている「推し」特集。

第1弾「人生が輝くヒケツ!“推しのいる生活”のススメ」(2020年10月5日放送)からスタートし、第2弾「人生&社会が変わる!すごいぞ“推し活”パワー」「俳優推し」「音楽アーティスト推し」「お笑い芸人推し」「アジア俳優推し」「舞台俳優推し」と続き、7月20、21日には第8弾「日本のドラマ推し」が放送される。

7月20日、21日のテーマは、「日本のドラマ推し」。ドラマの世界観推しもあれば、ドラマで演じた役推しもあり、80年代90年代ドラマもあれば、近年流行ったドラマも、NHK連続テレビ小説もある
7月20日、21日のテーマは、「日本のドラマ推し」。ドラマの世界観推しもあれば、ドラマで演じた役推しもあり、80年代90年代ドラマもあれば、近年流行ったドラマも、NHK連続テレビ小説もある

それにしても、『あさイチ』はなぜこんなにも「推し」企画を推すのか。同番組チーフプロデューサー・石塚利恵さん(以下 石塚P)は、企画のスタートについて、こう説明する。

「『あさイチ』にはプロデューサーが10名ほどいて、まずはディレクターがやりたい企画を提案する体制になっています。その中で、『推し』の企画は、ディレクターの井上が私の担当回でやってみたいと出してくれたものでした」(同番組チーフプロデューサー・石塚利恵さん 以下同)

石塚Pは、2020年8月に『あさイチ』に異動して来る前には、10代がハマる「沼」を調査し、共有する番組『沼にハマってきいてみた』を作ってきたプロデューサーだ。一方、井上紗佑里さん(以下井上D)は長年、様々なジャンルで「推し活」をしてきたという。つまり、井上Dのあたためてきた企画+『沼』ノウハウのある石塚Pの出会いで、企画が一気に動き出したのだ。

「私自身、『沼ハマ』での経験から、『推し』には絶対鉱脈があると思っていましたので、『あさイチ』のメイン視聴者である30代~50代女性に向けて、推しのいる生活を取り上げる企画をやるのは面白いだろうと思いました。好きなものを追求している人の前向きなパワーや人生の楽しみ方を視聴者の方々に提供できるのではないかと思ったんです」 

「今回すでにアンケート回答も4000件を超えていて、『もう1度見たいあのドラマの1シーン』として、朝ドラの名シーンも登場します。これまでは女性が中心でしたが、ドラマが職業選択に影響を与えたケースで男性の視聴者の方も取材しています」(石塚P)
「今回すでにアンケート回答も4000件を超えていて、『もう1度見たいあのドラマの1シーン』として、朝ドラの名シーンも登場します。これまでは女性が中心でしたが、ドラマが職業選択に影響を与えたケースで男性の視聴者の方も取材しています」(石塚P)

初回のアンケートは回答4万5000件にのぼる異例の事態に…

「推し」の企画は、初回放送前にTwitterでアンケートを行った時点で話題になり、1日目で2万件、最終的に約4万5000件の回答が来る異例の事態になった。

「『あさイチ』は10年以上続いている番組ですが、通常はどんな企画でも1000件まではいかないことが多いので、桁違いの反応でした。第1弾ではジャンルを絞らず、『あなたが情熱を注いでいる人、またはキャラクター』として幅広く聞いたこともあり、俳優やミュージシャン、芸人、タレント、アスリートなど、かなりの数があったため、シリーズ化したいなと考えました」

アンケートでは、番組の構成をある程度考え、後にロケで掘り下げることも想定し、「推しのジャンル」「推しの対象」「具体的な推し活」などを聞いた。さらに、アンケートがバズったのには、こんな理由も。

「アンケートの作り方も、ディレクター陣に俳優推しの井上の他、ミュージカル推しなど、様々なジャンルの推し活をしている人が多いので、回答例として挙げた文に角度をつけ、ニッチなものにしました。そうした具体例を見ることで、皆さんが具体的な推し活を書きやすかったようです」 

「スタッフを増員して6~7人体制で全部丁寧に読みました。視聴者とのコミュニケーションを大切にするため、お便り全てに目を通すのは『あさイチ』が大事にしているスタンスなので、いただいた熱量には応えないとね」(石塚P)
「スタッフを増員して6~7人体制で全部丁寧に読みました。視聴者とのコミュニケーションを大切にするため、お便り全てに目を通すのは『あさイチ』が大事にしているスタンスなので、いただいた熱量には応えないとね」(石塚P)

制作期間は3ヵ月! 「熱量のある人はアンケートにも時間をかけて…」

アンケート募集開始は、放送予定日の約3ヵ月前。『あさイチ』の「特集」は通常2ヵ月くらいかけてじっくり作るそうだが、推しの企画は、さらに長い時間をかけて作っている。

「推し企画は、アンケートが命なので。『沼ハマ』でわかったことですが、熱量のある人はアンケートにも時間をかけてじっくり答えたい人が多いようなんです。『私の推しの魅力はそんなに簡単には伝えられないから』と(笑)。 

それを全て読み込む作業も大変で、スタッフを増員して6~7人体制で全部丁寧に読みました。視聴者とのコミュニケーションを大切にするため、お便り全てに目を通すのは『あさイチ』が大事にしているスタンスなので、いただいた熱量には応えないとね、と。 

番組で取材させていただく方は、ディレクターの嗅覚で、推し活が半端ない・面白いと感じた方を4万5000件から抽出していくかたちです」

とはいえ、番組で紹介できるのは、ごく一部。そこで、様々な工夫をしている。

「なるべくたくさんの方々の思いをのせられるように、生放送中には画面下にできるだけ多くの推しメッセージをテロップで入れるようにしています。 

また、名物になっているのが、推しの名前を並べた『推し名書き』。せっかくだから、できるだけたくさんの名前をボードに出したいよねという話の流れで、『常に“いる”ことが大事だから、MCの後ろにボードを立てちゃおう』と。 

ちなみに、この『推し名書き』という名称も、Twitterで『推し名書き』と呼ばれているよと、当時、松岡(忠幸)アナが視聴者の方の投稿から見つけてくれたものなんです」 

「この『推し名書き』という名称も、Twitterで『推し名書き』と呼ばれているよと、当時、松岡(忠幸)アナが視聴者の方の投稿から見つけてくれたものなんです」(石塚P)写真は、推し企画初回放送(2020年10月5日)より
「この『推し名書き』という名称も、Twitterで『推し名書き』と呼ばれているよと、当時、松岡(忠幸)アナが視聴者の方の投稿から見つけてくれたものなんです」(石塚P)写真は、推し企画初回放送(2020年10月5日)より

3000の名前が並ぶ番組名物「推し名書き」

推し名書きに並ぶ名前は全部で約3000!

「名前の漢字が間違っていないか、ダブりがないかなど、チェックが非常に大変で、スタッフ泣かせの作業です。抽出の仕方は公平に、並びも無作為で行います。 

ただし、ゲストの方が入っている場合は、見つけやすい位置に調整したり、アジアの俳優で長い名前のときは、一列におさまるよう位置を考えたりして配置してもいます」

実は自分も、推しの「ネイサン・チェン」という文字をピンクのボードに発見した瞬間、心拍数が上がり、大急ぎで画面をスマホで撮影した経験がある。推しの名前を思いがけないところで見つける喜びって、いったい何なのだろうか。

「そこは狙い通りで、まさにやってほしかったことです(笑)。推しが文字になってテレビ画面にうつるというシンプルなことですが、皆さん非常に熱心に探してくださるんです」 

ここから、同企画の考案者でもある井上Dが「推し名書き」の作り方を教えてくれた。 

「アンケートから推しの方のお名前だけをエクセルのシートに流し込んで、一覧表を作り、コピー&ペーストしていくという、非常にアナログな方法で作っています。 

なかなか大変なのは、推しの方のお名前を皆さんは愛称で書かれることが多いこと。そもそも本名が何なのかをインターネットで調べたり、Twitterなどでファンの方が呼ぶ愛称を勉強させていただいたりしています」(井上D 以下同)

推し活は「クリエイティブ」

取材してみて、新たに発見したこと、意外だったことは?

「取材してみて驚くのは、皆さんが本当にクリエイティビティだということ。自分で空想したり、作り出したりする能力に長けていらっしゃって、例えば第1回放送では、『推しのお家で家政婦をしているつもりで、自宅の家事をやっている』という方がいらっしゃいました。『家政婦だったら、綺麗にするよね。だって、自分が好きな人の家だもん』と空想することで、実際に自宅が綺麗になる、空想の先に還元できる現実があるそうです」

さらに「推し活」には、様々なメリットがあるそうだ。

「推し活の楽しみ方は本当にバラバラで、無限ですが、お仕事も多岐にわたっていて、上場企業の部長の方やフリーランスの方、会社を立ち上げている方など、メリハリをつけつつ、自分のクリエイティビティを発揮していらっしゃいますね。 

行動力があり、周りを巻き込んでいく力のある方もいて、睡眠時間を削って推し活している方もいます。上場企業の部長の方などは、仕事に支障が出ると、推しが非難される可能性があるからということで、さらに頑張り、会社の実績も上がり、評価も上がって、推し仲間もできて、眠いけど、ウィンウィンだと。 

皆さんが揃っておっしゃるのは、推しがいるから潤う、頑張れるということです」

特に印象的だった推し活とは?

「お笑い芸人のオズワルドさんの推し活をしている方で、どこに公開するわけでもなく、ネタを全部書き起こしする方ですね。M-1のときのネタ、ABCグランプリのときのネタなど、全て文字で起こして、構成などを比べて分析するそうです。 

実は私自身、お笑い芸人の推し活をしていたときにやってみたいと思っていたことで、アンケートの例として書いたんですが、その方は『自分しかやっていないだろうな、人にはあまり言えないと思っていたけど、例にあったからいいんだと思って、自分も思いきって書きました』とおっしゃっていました(笑)」

それにしても、知らない誰かの知らない推しの話を聞くのが、なぜこんなにも面白いのか……と聞くと、自身も絶賛「推し活」中の井上Dが語ってくれた。

「私自身が取材を通してわかったことですが、皆さん、ご自身の推し活は確立されていても、他の人が家の中でどういう楽しみ方をして、どういう空想をしているのかは、意外と見えていないんですよね。 

そこをある意味、『あさイチ』が土足で踏み込んで取材させていただき、詳らかにしたことが一番大きいかと思います。自分のジャンルとは違っても、今後の推し活に取り入れられる、学べるところがある。なおかつ自分自身の推し活も肯定できるんです」 

■次回(10月5日放送予定)「声推し!」のアンケートはコチラから

■番組に登場した視聴者を深堀する「#教えて推しライフ」サイトも登場!

 

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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