企業買収や学校経営も…「旧統一教会」本拠地・韓国での評判 | FRIDAYデジタル

企業買収や学校経営も…「旧統一教会」本拠地・韓国での評判

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「本場」韓国では、旧統一教会はもはや下火 

安倍晋三元首相暗殺をきっかけに、政治と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)とのつながりが明るみに出た。しかし、第2次岸田改造内閣においても、すでに7人の大臣が旧統一教会と関係があったことが明らかになっている。

その実、「本場」韓国では、旧統一教会はもはや下火だとも聞く。ソウル在住のフリーライター・原田みはねさんに韓国での旧統一教会や新興宗教事情について聞いた。

「韓国では暗殺事件によって、安倍元首相が英雄化されるのではないかと懸念する論調がありますね。 

また、自民党と旧統一教会のつながりが明らかになり、証拠となる動画もたくさんあるにもかかわらず、日本ではtwitterを中心に話題になるくらいで、自民党に説明を求めるような抗議の大規模デモや暴動などは起きないことから『日本人は大人しいね』と言われています(※8月16日に東京・新宿駅周辺で安倍元首相の国葬中止を求める約1200人のデモが開催されている)。 

韓国では朴槿恵とシャーマンのつながりが分かった時、強く弾劾され、引きずり下ろされました。安倍さんが現役ではなく、元首相ということ、暗殺されたこともあるかと思いますが、韓国でもし同じように政治と宗教とのつながりがわかったら、大変な騒動になっていると思います」

ちなみに、韓国での旧統一教会の注目度や評判はというと……。

「 韓国では“統一教”と呼ばれ、『安易な気持ちで近寄るべきではない』と認識している人がほとんどではないかと思います。 むしろ今はコロナの集団感染で話題になった『新天地イエス教会』など、他の新興宗教のほうが勢いがあると思います。ハーレムを作るなどにより、女性信者への性的被害で教祖と見られる鄭明析(チョン・ミョンソク)が懲役刑を受けていた旧統一教会から分離した教団『摂理』もたびたび団体名を変更して勧誘活動を続けているようです」

韓国では教会に行く人が多く、キリスト教が全体の30%程度、仏教が15%程度と、最もメジャーであり、他に巫堂(ムダン)と呼ばれる巫女のもとに占い感覚で通うような土着信仰も多数あるという。

ビジネスや教育分野で勢力拡大を図る韓国の旧統一教会。写真は、自民党の山本朋広衆院議員が「マザームーン」と讃えた統一教会の韓鶴子総裁(写真:アフロ)
ビジネスや教育分野で勢力拡大を図る韓国の旧統一教会。写真は、自民党の山本朋広衆院議員が「マザームーン」と讃えた統一教会の韓鶴子総裁(写真:アフロ)

韓国の旧統一教会で活動している人のほとんどは日本人!?

一方、現在、韓国の旧統一教会で活動している人については、「合同結婚式を経て韓国に来た日本の女性が中心になっている」「ターゲットを随分前に日本に移し、信者を増やしている」などと言われているとか。また、熱心な信者は推定2万人弱程度と言われている。

「合同結婚式があるからか、農村などの嫁不足の地域で、『信者になると日本から嫁がもらえるよ』などと言って信者集めをしていたこともあったようですまた、韓国では教会に通う人も多いですが、信仰心が特別に強いかというと、必ずしもそうではなく、人脈作りで行く人も多いんですよ。教会には富裕層が行くことが多いので、教会の行事とかで人脈を作ることもあり、日本より生活に宗教が根付いている気はします」

韓国で日本ほど旧統一教会が広まらなかった理由には、正当な「キリスト教」の信者が多いことが一因として挙げられるよう。

「新天地」のような新興宗教団体には、キリスト教の教会に潜り込み、布教活動をする団体や、紛らわしい団体が多いことから、大韓イエス教長老会などをはじめとした正当な「キリスト教」の韓国主要教団は、危険な新興宗教団体を名指しして一般市民への注意喚起を行っている。

専門誌「現代宗教」に発表された異端規定関係の決議一覧を見ると、旧統一教会に関しては、1971年の「カルト宗教/伝統的な神学思想とは極端に違う」から始まり、「不認定集団/加入禁止、関連新聞雑誌に投稿禁止「厳重処罰/教団和合・教会の使命に障害を起こし厳重警告」「非キリスト/キリスト教を偽装したカルト宗教集団」「不買運動/文鮮明集団関連製品を調査し不買運動展開」「調査処罰/統一教との関連者を徹底的に調査、探し出して処理」など、再三の警告メッセージが発表されてきたことがわかる。70年代から度々警告がされているのだ。

8月18日に韓国・ソウルで行われた安倍元首相銃撃巡る報道に抗議する旧統一教会信者らによるデモの様子
8月18日に韓国・ソウルで行われた安倍元首相銃撃巡る報道に抗議する旧統一教会信者らによるデモの様子

ビジネスや教育分野で勢力拡大

一方、新興宗教の中では下火とはいえ、ビジネスにおいては旧統一教会の勢力拡大は続いていると、原田さんは指摘する。

「韓国の中で旧統一教会は、団体化して、建設会社や石材会社など、広く展開しています。 また、学校経営も積極的に行っています。潤沢な予算があるからか、学校は設備も整っていて、偏差値も高めで、外国人留学生の受け入れにも積極的で。 

必ずしも信者を入れているわけではなく、学校自体のレベルが高く、良い環境の中でレベルの高い学びが得られる場としてブランディング化されているんですよ。芸術高校も運営していて、デビュー前からSNSで話題になるような可愛い子やカッコいい子が多いという噂がありますね 

2018年の「旧統一教会」の集団結婚式には世界中から4000組の新婚夫婦が集まった
2018年の「旧統一教会」の集団結婚式には世界中から4000組の新婚夫婦が集まった

韓流ドラマのテーマとして描かれる新興宗教問題

ちなみに、韓国の新興宗教事情が非常にリアルに描かれた作品として、原田さんは韓国ドラマ『君を守りたい~SAVE ME~』を勧める。これはアジアトップアイドル“2PM”テギョンの兵役入隊前最後の主演作だ。

「本格社会派サスペンスドラマ『約束の地~SAVE ME~』というドラマと同じ製作陣による作品で、怪しい詐欺師のようなインチキ新興宗教に騙された初恋の女の子を助けるために、田舎の男の子たちが奮闘する物語なんですが、新興宗教の人がいかに人の心を操っていくかが生々しく描かれていて。 

原作は漫画ですが、特に田舎では土着の結び付きが強く、ご近所づきあいなどの面倒さも強いから、例えば、町内会長のような権力を持っている人に何か言われると、断れずに取り込まれていくんだなあと思います」

日本では2015年の名称変更(出版物や公文書での改名の完成は2016年)以降、旧統一教会の報道は激減していた。そして今、安倍元首相暗殺事件により再び注目を浴びている一方、第二次岸田改造内閣では旧統一教会との関係があった者たちを大量に入閣させている。

韓国で創設されたにもかかわらず、韓国で下火になる一方、ターゲットを日本に移し拡大し続けた統一教会。人々の取り込み方のリアルを知るヒントが、もしかしたら韓国の映画やドラマの中にあるかもしれない。

原田みはね(はらだ・みはね) ソウル在住13年目のフリーライター。韓国カルチャー、観光情報などについて執筆。

  • 取材・文田幸和歌子

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