年下の筋トレ仲間を快楽の道具に…既婚女性が知った「不倫の怖さ」
【実録シリーズ】「不倫にはワケがある」亀山早苗レポート
<8月25日に「離婚」を発表したryuchell&peco。ふたりは法律婚を解消、今後は「人生のパートナー」として、引き続きともに歩んでいくという。男女の関係は、それぞれだ。ライター・亀山早苗氏が、ある夫婦の形を取材した。>
恋する人妻がいてもいい
「男が不倫しても許してもらえるが、女がすると夫に許してはもらえない」と思っている人は多いだろう。実際に、そんなケースは少なくない。その裏には「男は浮気して当たり前」と男女ともに考えがちなこと、そして一般に、妻には経済力がないことなどの理由がある。だが、男が考えることは女も考えている。「結婚と恋愛は別もの」と感じる人が増えている今、女性の不倫も珍しくない。
「私の不倫が原因で離婚しました。離婚してから、元夫とはなんとなく仲良くなっていて、今は『家族』『友だち』として交流があります」
明るい口調で話してくれたのは、アキさん(49歳)だ。29歳目前に3歳年上のスグルさんと「デキ婚」、47歳で離婚した。現在、20歳になる長男、18歳の次男がいる。20年弱の結婚生活で、アキさんが婚外恋愛に走ったことは3回あった。
「思い切りバレたのは1回だけ。あとは隠し通せたと思っていたら、じつは夫はずっと怪しんでいたようです。離婚の話し合いをしている中で、そのことを知らされました」
9歳下の「筋トレ仲間」と
結婚して最初の「恋」は、次男が3歳のころだった。共働きで忙しく働いていたのだが、週末は基本的に家族で過ごすこと、お互い週に1日は息抜きをしようと夫婦で取り決めをしていた。
「その息抜き日には、夕飯のことも子どものことも考えずに終電まで好きなことをしていいんです。曜日は、お互いの仕事の都合によって変わりました。私はスポーツジムに通っていたので、そこで知り合ったフットサルや筋トレ仲間と飲みに行くことが多かった。ある日、筋トレ仲間と飲みに行こうとしたら、みんな都合が悪いとかで、行けたのがコウイチくんという若い子だけだったんです。彼とは一対一で話したことがあまりなかったので、どうすると聞いたら『アキさんと飲みたい』と。かわいいじゃないですか、そこでジム近くの居酒屋に行ったんです」
その居酒屋でアキさんは隣のテーブルにいたスーツ姿の3人組に絡まれた。最初は適当にあしらっていたのだが、酔いが回るにつれ、そのうちのひとりが「いい年したブスが、若い男をどうにかしようとしてるのかよ」とエスカレートしてきたのだ。
「あんまりしつこいから店の人に言ったんだけど、忙しかったのかきちんと注意してくれなくて。そのうち私も酔っているからブチッとキレて、ビール瓶をテーブルでたたき割って『ざけんなよ』と言ってしまった。相手はなにを、となって。周りは逃げ出すし、警察呼べという声も聞こえてきた。そのときコウイチくんが、非常に冷静に『アキさん、ダメですよ』とビール瓶を取り上げ、さらに相手に『だいたい、あなたたちが絡んできたのがいけないんです。女性に対してひどいことを言っていましたよ。侮辱罪で訴えてもいいですよ』と。弁護士を呼びますとまで言った。相手は急にビビっておとなしくなったんです。コウイチくんが名刺を求めると、その人たちは法律事務所に勤めていた。それがわかって大笑いでした」
アキさんは、コウイチさんの職業も知らなかったのだが、彼は司法試験を目指している院生で、アキさんより9歳年下だった。
お店に謝罪、会計をして店をあとにした。だが興奮さめやらなかったアキさんは、そのまま彼をホテルに連れ込んでしまったという。
「なんだかうれしくなっちゃって。彼の冷静沈着ぶりに燃えたというか。それに彼はブスと言われた私に、『アキさんはキレイです』と言い切った。今日はこの子を離したくないと思っちゃったんですよね」
居酒屋でのケンカが興奮材料となり、目の前のコウイチさんへの性的欲求につながった。このままでは帰れない。女にもそんな夜はある。ベッドでの時間は、彼を征服したような気持ちで身も心も燃えたという。
「自分から攻めるのが好きなんです。仕事もベッドも人生も」
そんな名言をさらりと言ってしまうかっこよさがアキさんにはある。コウイチさんとは、それから2年ほど関係が続いた。離婚する気はなかったから、彼が勉強の息抜きをしたいときに会えればいいと思っていた。ところが彼がアキさんにはまってしまった。
2年で「飽きてしまった」
「女性に慣れていないコウイチくんが、だんだん上手になっていったんですよ。私仕様の愛撫を覚えてくれて。楽しかったけど、このままでは彼にとってよくないと思うようになった。いや、それはきれいごとですね。正直言うと、2年で、彼のセックスの技術が頭打ちになった(笑)。それで私が飽きちゃったんです。私に合わせて一生懸命、大人になろうとしているのはかわいかったけど、私は夫とはできない濃厚なセックスを求めていた。彼は基本的には淡白な人だから、『もっと心の交流がほしい』と言い出して。申し訳ないけど、私はそういうのは求めていなかったのかもしれません」
自ら突っ走って彼を「捕獲」したものの、彼女は2年でこの恋に終止符を打った。これ以上、彼を「自分の快楽の道具」にしてはいけないとも思ったそうだ。
「私、独身時代にはひとりとしかつきあってないんですよ。夫がふたりめ。子どもを産んでから、急に性的欲求が強くなった。30代は、『好きだからしたい』のか『したいから好き』なのかわからない状態でした。でももちろん、常に最優先は家庭でしたよ」
家庭を大事にしながらも、外で恋愛してしまう。そういう人は男女関わらず、一定数いるのだろう。
その3年後、今度は同世代との恋をした。これは1年ほどしか続かなかったが、「穏やかな恋でした」と彼女は言う。その穏やかさに彼女は耐えられなくなった。
「穏やかな関係は夫とで満たされている。私は情熱に溺れたかったんだと思う」
だが離婚の原因ともなった3度目の恋愛で、彼女は「不倫の怖さ」を知ることになる。
<「情熱に溺れたかった」という彼女が選んだ次の恋は…。【後編】同年代との不倫に身も心も溺れた既婚女性が「失ったもの」に続く。>
- 取材・文:亀山早苗
フリーライター
1960年東京都出身、明治大学文学部卒業後、雑誌のフリーライターに。男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねる。女性の生き方を中心に恋愛、結婚、性の問題に積極的に取り組む。『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)、『女の残り時間』(中公文庫)など、著書は50冊以上にのぼる