同年代との不倫に身も心も溺れた既婚女性が「失ったもの」 | FRIDAYデジタル

同年代との不倫に身も心も溺れた既婚女性が「失ったもの」

【実録シリーズ】「不倫にはワケがある」亀山早苗レポート

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<20代の終わりに結婚したアキさんは、30代の時、9歳下の男性と恋に落ちた。「2年で飽きてしまった」が、その後も彼女の不倫は続いた…【前編】「年下の筋トレ仲間を快楽の道具に…既婚女性が知った「不倫の怖さ」は…>

20代で結婚、3度目の浮気がついに夫にバレて…。「私の人生に口を出さないで」と言い放った彼女の現在は
20代で結婚、3度目の浮気がついに夫にバレて…。「私の人生に口を出さないで」と言い放った彼女の現在は

彼の声が心地よくて

アキさんは結婚15年目のころ、3度目の婚外恋愛に落ちた。44歳、出会いからしてロマンティックだった。

「その日は仕事で部下が大きなミスをしたんです。あちこち電話をかけたり、直接、取引先に謝りに行ったりして、疲れ果てていた。部下のミスは私のミスですから、あんまり怒るわけにもいかない。仕事帰りに部下を誘って軽く一杯やり、『明日から気持ちを切り替えて頼むね』と明るく励まして別れました。その後、どうしてもそのまま帰る気になれなくて、ひとりでバーに立ち寄ったんです。通りすがりに入ったんですが、落ち着いたたたずまいの渋い店でした。そういうときに酔うとろくなことがないので、軽めのカクテルを1杯頼みました」

グラスががほぼ空になったころ、バーテンダーから「あちらのお客様から」と同じ飲み物が差し出された。その方向を見ると、ダンディな男性がアキさんに微笑んでいた。まるで映画のようだったと彼女は思い出しながら頬をゆるめた。空いていた隣の席を顎で示すと、彼がゆっくりとやってきて座った。

「当たり障りのない世間話をしながら、お互いに探りを入れる時間がすぎていった。素敵な時間でした。彼は私に名刺を渡して、『気が向いたら連絡ください』と30分くらいで引き上げていったんです。そのさらっとした感じもよかったですね。女を追わせるのに慣れているというか」

年齢は彼女と同世代、中肉中背だが引き締まった身体をしていた。なにより声が素敵だったと彼女は言う。

「カウンターで隣に座って耳から入ってくる彼の声が心地よくて。しばらく我慢しましたけど1週間後に私から電話しました。そうしたら彼は『待っていましたよ』って。その日のうちに食事に行って、別れがたくてホテルに行って」

寝ても覚めても

ホテルを出てからもさらに別れたくなかったが、彼がタクシーを拾って彼女を押し込んだ。家庭を大事にしないとダメだよと笑った彼に、アキさんは心を鷲づかみにされた。

「それからは寝ても覚めても彼のことが頭から離れない。性的な相性もよかったし、話していても楽しかった。彼は芸術関係の仕事をしていたんですが、私の好きな絵画の分野もよく知っていて。美術館や映画やコンサートによく誘ってくれました」

土日は家族で過ごすと決めていたアキさんだが、そのころすでに子どもたちは部活動に夢中で、土曜日はほとんど家にいなかった。部活がらみで保護者が必要な場合は夫が一手に引き受けてくれていたので、アキさんは土曜日はたいてい家でたまった家事をしたりジムに行ったりするようになっていた。その時間を彼との逢瀬に注いだ。

「恋に溺れるって、ああいうことを言うんでしょうね。彼といる時間が私のすべてだった。その時間だけは子どものことも仕事のことも頭になかった」

恋に家庭に仕事に全力を費やしている満足感と達成感で、彼女は充実していると思い込んでいた。ところが交際開始から3年目、彼の妻が関係に気づき、アキさんの夫に連絡、ふたりの恋は一気に発覚した。

「私に連絡すればいいのに、いきなり夫に連絡するって卑怯ですよね。そのとき思ったんです。個人で自立しているのに、常に妻は夫の付属物だと思われているんだと。彼の妻も『夫は私のもの』と思っているから激怒するわけでしょ。夫と妻って、夫婦であってもそれぞれ独立した個人のはずなのに」

彼からすぐに連絡が来た。巻き込んで申し訳ないと言われた。申し訳ないじゃすまないわよと彼女はつぶやいたという。

「私の人生に口を出さないで」

「うちの夫は激してはいなかった。私が『巻き込んでごめんね』と言ったら、『オレは悲しいよ』って。夫を悲しませたのは私の不徳のいたすところだと思います。でも私は私の人生を生きている。夫のことはとても大切だけど、恋に背を向けることはできなかったと言ったんです。そうしたら夫が『盛りがついたってわけか』と吐き捨てるように言ったんですよね。その言葉に私は傷つきました」

自ら不倫をしておいて夫の言葉に傷ついたなんて自分勝手だという声もあるだろう。だが、彼女は夫や子どもたちを心から愛していた。それと恋とは別ものなのだ。たとえ夫であっても、彼女の心を縛りつけることはできない。

「売り言葉に買い言葉で、『私の人生に口を出さないで』と夫に言ってしまったんです。夫はその言葉にじゅうぶん傷つくとわかっていた。彼はごく普通の男性で、不倫はいけないこと、心身を律するのが親たるものと思い込んでいるところがありましたから」

彼からは「もうつきあえない。ごめん」と連絡が来た。覚悟はしていたが、恋がこうやって「第三者」によって断ち切られるのが理不尽だと彼女は憤った。だからといって、本人がもうつきあえないと言っているのだから、どうしようもない。

「不倫ってこうやって第三者に後ろから刺されるようなものなんだと感じました。私にとって、彼の妻はあくまでも無関係の第三者なのに。本人の気持ちが変わって、もうつきあうのをやめようというならわかるけど、妻に関係を断てと言われるのは理不尽じゃないか…それを夫に言ったら『バカか』と言われました。一般的にはそうなんでしょうね」

彼女はそう言って、ふふふと笑った。その後、バレたものはしかたがない、命があっただけよかったとしようと気持ちを切り替えた。ところが切り替えられなかったのは夫だった。

「そのとき過去の不倫の件も指摘されました。なんとなく様子がおかしいから疑っていた、と。私は何もしてないと言い張りました。あなたの誤解だから、と。でもそれ以来、夫はなんかつらそうでしたね。私の顔を見ては何か言いかけ、やっぱりいいと口をつぐむ。それで気づいたんです。私は夫を不幸にしているんだと」

夫に「離婚しよう」と言ったのが1年前。夫はホッとしたような顔をした。アキさんは自宅近くにワンルームの賃貸マンションを借りた。

「私たちの信頼関係が崩れたので、ごめん、離婚するわと子どもたちには言いました。ふたりとも、薄々察していたんでしょうね。近所にいるから、あなたたちがいいなら来るけどと言ったら、『好きにすれば』って。子どもたちは、いつの間にか大人になっていました。引っ越しは子どもたちが手伝ってくれた。長男が『オヤジをあんまり泣かすなよな』とニヤッと笑っていましたね。あなたはどうしてそんなに寛容なのかと聞いたら、『おかあさんにはおかあさんの人生があるんでしょ。小さいときから耳がタコになるくらい聞かされていたからね』と。私、幼い子どもにそんなことを吹き込んでいたのかと思いました」

現在、家には元夫と子どもたちが住んでいる。3人で家事当番などを決めて、うまく生活しているようだ。元自宅の鍵をもっているアキさんは時間があくと家に戻り、ときには手料理を振る舞うこともある。

「子どもたちに特に変化が見られないのがいちばんの救いでした。最初はぎこちなかった夫も、だんだん普通に話すようになって。先日は元夫とデートしましたよ。突然連絡があって『今度の土曜日、暇だったら映画に行かない?』って。観たい映画があって、誰と観たいかと考えたら私だったんですって。これにはちょっとホロッときました。『アキの言いたい放題の感想が聞きたかった。夫婦だとむかつくけど、友だちとしてはアキはやっぱりおもしろいよ』って。褒め言葉かどうかわかりませんが」

そう言いながら、アキさんも楽しそうだ。

最近、さまざまな家族の形が伝えられるようになっている。こんな家族もあっていいのだろう。当事者が納得しているのなら。

  • 取材・文亀山早苗

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