<figure id="attachment_266768" aria-describedby="caption-attachment-266768" style="width: 3139px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e70a51d1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/c5dcacf5cc7092b751dc4e876bcb0353.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-266768" class="wp-caption-text">昨年10月上旬、ベイルート郊外の村でオリーブ狩りを楽しんだ。ワイナリーを買い取るなど悠々自適の生活を送る</figcaption></figure>
塀のない刑務所から脱走したのち、島の空き家に潜伏、その後海を縦断して本州へと上陸した“松山刑務所逃走犯”や、富田林署の面会室からアクリル板を蹴破り脱走したのち、自転車旅の若者になりきり、約1600kmもの逃走劇を繰り広げた“富田林署逃走犯”……6月1日に刊行された新書『<a href="https://www.amazon.co.jp/%E9%80%83%E3%81%92%E3%82%8B%E3%81%8C%E5%8B%9D%E3%81%A1-%E8%84%B1%E8%B5%B0%E7%8A%AF%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AE%E5%91%8A%E7%99%BD-%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E6%96%B0%E6%9B%B8-425-%E9%AB%98%E6%A9%8B/dp/4098254255">逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白</a>』（小学館）は、この2名の逃走犯に加え、保釈中にレバノンへと出国した元日産自動車会長、カルロス・ゴーン被告など、かつて世を大きく騒がせた逃走犯らがなぜ逃げたのか、なぜ逃げられたのかに着目して書かれたノンフィクションだ。
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逃走犯のニュースはいつも世を騒がす。かつて日本中の注目を集めた複数の逃走犯らに着目し、一部の逃走犯らに取材をしてまとめられた同書について、ジュンク堂書店池袋本店にて配信トークイベントが開催された。
登壇したのは、著者であるフリーライターの高橋ユキ氏と、第28回小学館ノンフィクション大賞を受賞したことにより刊行された『マイホーム山谷』（小学館）がのちに第21回新潮ドキュメント賞候補作品に選出されるなど注目を集めている介護ジャーナリスト・末並俊司氏。
末並　僕は両親を介護して看取った経験もあって介護の資格を取得し、介護ジャーナリストを名乗ったりもしていますが、お互い同じ週刊誌で仕事をしていたため、一緒に取材をして記事を書いたこともありましたね。
高橋　お互いのフィールドが重なる部分があり、高齢化する受刑者の処遇の現状を知るため取材し『刑務所の認知症対策』という記事にまとめました。日本各地の刑務所をふたりで取材しましたね
末並　『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』に収録している逃走犯たちに取材をするきっかけも、週刊誌だったんですね。
高橋　誌面の企画として何を取材しようかと編集さんと話している時期がちょうど2018年。塀のない刑務所といわれる開放型処遇施設のひとつ、松山刑務所大井造船作業場から脱走した男が逮捕されてメディアを騒がせている頃でした。『あの逃走犯に手記を書いてもらうのはどうか』といった話になり、取材して手記を得て、当時、記事を書きました。
その年は、もう1人、夏に富田林署の面会室から脱走して自転車の旅人を装い西に逃げていた男もいました。のちに周南市の道の駅で逮捕されたその男にも、手記を書いてもらおうとコンタクトを取り、逃走中の生活について綴ってもらったものを週刊誌に出しました。このふたつの取材がスタートになっています。
末並　手記を書いてもらおう、とは言っても、さあ、どうやって話聞こうか、となりますよね。当人は逮捕されて身柄が拘束されているわけでしょう。
高橋　刑事施設や警察署から逃走して逮捕された彼らは、また全国どこかの刑事施設や警察署に身柄があります。そこに手紙を送るか面会に行くかして取材を行いますが、問い合わせても教えてもらえるわけではないので、ひたすら各地の施設にコンタクトを取り続けることになります。
これらの取材は当時、週刊誌の記事として書いたのち、一旦は終わっていたのですが、のちにニュース配信会社であるスマートニュース株式会社の子会社、スローニュース株式会社が調査報道のサブスクリプションサイトをローンチするため、そこに長編を書いて欲しいというお話をいただいたんです。
ところが当時、新型コロナウイルス感染拡大が始まった頃で、取材がなかなか難しかった。前作『つけびの村』では山間部の集落を取材しましたが、そのように特定の地方でゼロから取材を行うことで、もし感染が拡大すれば大変なことになる。ある程度取材をすすめていたテーマの追加取材という形にしたほうがよいだろうと編集さんと相談して、当時の逃走犯の手記に肉付けをする形でいこう、と方向性が決まりました。こうして調査報道のサブスクリプション『SlowNews』に連載し、まとめたものが本書です。
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<div data-friday-nextpage-lead="逃走犯が潜伏していた空き家"></div>
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末並　松山刑務所逃走犯については現地でどんな取材をしたんですか？
高橋　愛媛県にある大井造船作業場から逃げた男は、すぐに車を盗んでしまなみ海道を北上し本州に渡ろうとしていたのですが、尾道に入ろうとするところに警察がいたためUターンして、本州のひとつ手前の向島というところに車を乗り捨てそこの空き家に潜伏していました。ただ、そのために島での検問が厳しくなった。これに申し訳なさを感じた彼は、向島から尾道水道を泳いで尾道に上陸するんです。取材ではこの向島で住民の皆さんからお話を聞かせていただいたりしてます。
<figure id="attachment_266770" aria-describedby="caption-attachment-266770" style="width: 5472px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d9d8473b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/77e4c5cfe1412c75f9aadc316765c7c5.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-266770" class="wp-caption-text">松山刑務所逃走犯が逃げ込んだ空き家（提供：高橋ユキ氏）</figcaption></figure>
末並　取材では潜伏していた空き家の場所なども明らかになったようですが、どうやって探り当てたんですか？
高橋　住民の皆さんから聞かせてもらいました。あるときは、取材の合間に休憩しようと入った喫茶店でも、店主が、こちらが聞いていないのに『あっちに行ったところに、逃走犯が潜伏していた家があるよ』と、仕上がったトークで教えてくれたりもしましたね。こういう感じで広まっているんだなというのは身をもって知りました。
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末並　これでひとつの形にできそうだ、と感じた取材はありましたか。
高橋　大井造船作業場から逃げた男は、本州に上陸してからはバイクを盗んで広島まで向かうのですが、立ち寄ったネットカフェで通報されてしまいます。退店後に近くの路上で確保されましたが、このネットカフェの方々に取材をさせてもらったとき、書籍としてまとめられるのではないかとようやく感じました。逮捕直前に、最後の時間をすごした場所でしたが、当時はネットカフェの方々のコメントなどは報道されていなかったので、初めて聞く話ばかりでした。
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末並　カルロス・ゴーン被告が国外に逃亡したことについても触れていますね？
高橋　2019年の末に、保釈されていたカルロス・ゴーン被告が制限住居である港区の自宅を出て、プライベートジェットでレバノンに逃亡したことは大ニュースになりました。現在も日本に戻る気配はありません。日本の刑事裁判の有罪率は99.9パーセントとも言われるので、無罪を主張するゴーン被告は裁判で戦うよりも逃げた方がいいと考えたのかもしれません。
日本の保釈制度は、“保釈保証金を没収されても構わないから逃げたい”と考える人にとっては全く意味がないんです。彼らにとっては、保釈保証金を支払うことは、逃走のためのパスポートを手に入れたことと同義になる。なぜそう言えるのか、ということについては著書の中で詳しく書かせていただいております。読んでいただいた方が『逃走罪』というものを知っていただく機会になればと思います。
<figure id="attachment_266769" aria-describedby="caption-attachment-266769" style="width: 5472px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3a1d6960"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/68bd98b565102d496d42341e4df8f13e.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-266769" class="wp-caption-text">松山刑務所逃走犯が夜に泳いで渡った尾道水道。大きな波は立っておらず、穏やかに見えるが、潮の流れは早い（提供：高橋ユキ氏）</figcaption></figure>

刑務所に入れられながら、世の中を騒がせた逃走犯たちは、なぜ逃げることができたのか。殺人事件や公判傍聴取材でFRIDAYデジタルに多数原稿を寄稿する高橋ユキ氏が「逃走犯」の深層心理に迫った。

ゴーンも”逃げ勝ち”なのか…脱走犯との文通でわかった「抜け穴」

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