<figure id="attachment_267003" aria-describedby="caption-attachment-267003" style="width: 3500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fecfbc98"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/aflo_87065134.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-267003" class="wp-caption-text">18年に発売されたジムニーは、発売直後から納期の遅れが続いている/写真：アフロ</figcaption></figure>
最近は「クルマの納期が長い」といわれるが、この状況はさらにエスカレートしている。納期が延び過ぎて、販売店がユーザーから注文を受けるのを停止した車種も多い。
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トヨタの販売店では、以下のように説明する。
「受注の停止には2つのパターンがある。ひとつは納期が大幅に延びた結果、受注を停止するものだ。例えばランドクルーザーは、現行型になって納期が4年以上に遅延して、受注を停止した。ふたつめは、プリウスやアルファードのように、フルモデルチェンジや大幅なマイナーチェンジが近付き、受注を早々に停止するパターンだ」
納期の遅延に、フルモデルチェンジや大幅なマイナーチェンジが加わるとややこしい。例えばプリウスは2022年の末から2023年の初頭、アルファードは2023年の春にフルモデルチェンジを受ける。
アルファードの場合で言えば、通常であれば今ごろは従来型をモデル末期の好条件で販売している。ところが今は人気車を中心に納期が長く、アルファードも8ヵ月前後に延びた。そうなるとアルファードのフルモデルチェンジが2023年4月に実施される場合、2022年8月頃からは、フルモデルチェンジを受けた次期型の受注を行わねばならない。
しかしその準備は整っていないから、アルファードの受注を止めることになった。販売店では「アルファードの受注を再開できるのは次期型で2023年になる。プリウスも同様だ。2022年の末に、次期型の受注を開始するだろう」という。
そして受注の停止は、マイナーチェンジでも実施することがあるから、頻繁に発生する。トヨタの販売店では「売れ筋車種の受注が軒並み停止して、売るクルマがなくなる時期もある。仮に受注を再開しても、納期は大幅に遅れる。売れ筋車種では、ヤリスクロスの納期は2023年5月以降で、カローラクロスは8月以降だ。人気車を中心に、納期が約1年に延びた」と困っていた。
トヨタが展開する上級ブランドのレクサスも、納期が大幅に遅延している。販売店では次のように述べた。
「レクサスのNXとLXは、納期の遅れが極端に延びたから受注を停止した。NXはレクサスの売れ筋車種だが、納期が2023年の末に達して、受注を止めることになった。また新型になったRXは、現時点では価格も未定だ。2022年11月頃になると、価格を明らかにして予約受注も開始する。それでもNX、LX、RXという、人気の高いSUVの3車種を実質的に販売できないのは辛い」
<div data-friday-nextpage-lead="輸入車はさらに要注意"></div>
このほかホンダでは「今は新型車のステップワゴンから、売れ筋のフィットやN-BOXまで、大半の車種の納期が6ヵ月以上に延びている。以前は軽自動車は納期が比較的短かったが、今は小型車とほとんど同じ」という。
日産は次のように述べた。
「納期は全般的に長い。しかも2022年の末から2023年にかけて、売れ筋のセレナがフルモデルチェンジを行うため、今はノーマルエンジン車を廃止してハイブリッドのe-POWERに絞った。販売できるグレードも実質的にハイウェイスターだけだから、販売台数も減ってきた。新型になったエクストレイルは、2022年9月下旬に契約して、納車されるのは2023年の7月以降だ」
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輸入車は、もともと供給が不安定になりやすい。例えばフォルクスワーゲンゴルフのステーションワゴン「ヴァリアント」などは、納期が約1年遅延することもある。輸入車は日本車以上に注意が必要で、値上げも実施されている。
以上のように、各メーカー、ブランドともに納期を大きく遅らせている。その理由として「半導体の不足」が報道されるが、メーカーの関係者は「それほど単純な話ではない」という。
「確かに半導体は世界的に不足しているが、そのほかにも、各種の電気信号を伝えるワイヤーハーネス、樹脂パーツ、塗料など、いろいろな供給が滞っている」
供給が滞る背景には、新型コロナウイルスの影響と、ロシアのウクライナ侵攻が一因と言える。工場の閉鎖などが行われる一方、経済活動の活発化によって生産が上向いた地域もあり、世界的に半導体などが不足した。
ただし、納期の遅延が、すべて新型コロナウイルスと、ロシアのウクライナ侵攻に基づくとは限らない。車種によっては新型コロナウイルス以前から、需要に対して生産台数が大幅に少なく、納期が遅延していた。例えばスズキのジムニーは、コロナ禍前の2018年に発売した直後から、納期が約1年も延びた。その理由は、ジムニーの生産規模が根本的に少なかったからだ。
この後、ジムニーは生産台数を増やした。2018年の発売直後は、1ヵ月平均届け出台数が約1800台だったが、2022年1〜8月の1ヵ月平均は約3600台に達する。新型コロナウイルスの影響を受けながら、日本仕様の生産台数は約2倍に増えた。
それでも納期は縮まらない。販売店は「生産台数は、以前に比べると増えたが、納期は今でも1年以上だ。生産台数が増えるほど、受注台数も増えているように感じる」と言う。
<div data-friday-nextpage-lead="日本車なのに日本の割り当てが少ない"></div>
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ランドクルーザーは、先に述べた通り、現行型になって納期が4年以上に延びた。これも供給量が需要に対して少なかったからだ。ランドクルーザーは、生産総数の約50％を中東地域で販売する。オーストラリアなどにも供給され、日本国内への割り当ては10％以下だ。
そのために納期が大幅に遅れて受注停止に至った。以上のように納期が遅延する背景には、メーカーが需要を見誤ったり、生産設備が不足していることなども影響を与えている。
今後の見通しをメーカーに尋ねると、以下のような返答があった。
「部品を供給するサプライヤーとも連携を図り、可能な限り合理的かつ計画的な生産を行っている。しかし海外からの供給が突然止まることもあり、予測しにくい面もある」
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メーカーは、特定のグレードだけを優先して生産する対策も行っている。例えば新型トヨタシエンタは、最上級のZを優先させ、GやXに特定のメーカーオプションを装着したりすると、生産開始が2023年4月以降になる。
新型のトヨタクラウンクロスオーバーも「アドバンスト」の名称が付いたグレードが優先され、それ以外の生産は2023年1月以降だ。マツダCX-60では、直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボにマイルドハイブリッドを組み合わせたタイプの納期が早い。
メーカーの開発者は「すべての仕様を生産すると、全車の納期が遅れてしまう。そこで特定の仕様を優先させ、なるべく安定して供給できるようにした」という。
<div data-friday-nextpage-lead="納期を短くさせる「裏技」とは？"></div>
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購入者側が納期を短縮させるアプローチはほとんどないが、一部のサブスクリプション（定額制）によるカーリースでは、納期が短い場合もある。例えばトヨタのサブスクリプションサービス「KINTO」を利用すると、通常の購入に比べて納期が短い。
<figure id="attachment_267004" aria-describedby="caption-attachment-267004" style="width: 1432px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6db22f1e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/810c968357f09208dd527a45aa8772fb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-267004" class="wp-caption-text">KINTOのホームページには、各車の納期の目安も記載されている</figcaption></figure>
販売店では「ノアハイブリッドでは、納期が約1年を要する」というが、KINTOなら「1ヵ月半〜2ヵ月程度」に収まる。販売店では「KINTOは納期が大幅に短く、残価設定ローンを含めた一般の購入に比べると、明らかに優遇されている。正直にいえば愉快なことではない」という。
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KINTOはリースだから、ローンを含めた購入とは本質的に異なる。契約期間が満了したら、クルマを必ず返却せねばならず、ローンと違って買い取りはできない。従って購入と直接は比べられないが、今では人気車を中心に、納期の短さもKINTOの大きなメリットになっている。
特に最近は、新車の販売台数が下がったことで取り車も減り、中古車の流通台数まで減少してきた。需要と供給のバランスが変わり、中古車価格が高騰している。つまり新車の納期が長く、中古車も購入しにくい現状では、カーリースに魅力を感じなくても納期短縮のためにKINTOを選ぶ方法もある。
現代では、愛車を下取りに出して新車を買う乗り替え需要が約80％に達する。多くのユーザーは、愛車の車検満了時期に合わせて新車を買う。したがって新車の納期が遅れると、下取りに出す愛車の車検を改めて取り直すといった手間と出費が生じてしまう。
この状況では、商談を早めに開始して、愛車の車検が満了する1年以上前から契約を進めることが必要になってくる。自分の買い替えサイクルに合わないようであれば、KINTOのような納期の短いサービスを利用することも考えたい。

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がける。執筆の対象も、試乗記や車両の紹介、メカニズム解説だけでなく、価格設定やグレード構成、リセールバリュー、さらに値引き、保険、税金など、カーライフに関する事柄全般。ヒストリー関連の執筆も行っている。

渡辺陽一郎

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