男に褒められたい…エリート男性会社員”ホス狂い”が増えている訳 | FRIDAYデジタル

男に褒められたい…エリート男性会社員”ホス狂い”が増えている訳

現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和4年、歌舞伎町はいま…… 第31回

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ホストと談笑するタツキ(左)。エリートならではの苦しみから解放されるという
ホストと談笑するタツキ(左)。エリートならではの苦しみから解放されるという

ホストクラブといえば女性のための場所だと思っている方は多いだろうが、実は男性客も一定数いることをご存じだろうか。ほとんどは同業者かキャバクラ遊びに飽きた金持ちオジサンなのだが、なかには「キャバクラはまったくハマらなかったがホストは好き」という若い男性もいる。今年社会人2年目になるタツキ(仮名、25)もその一人だ。

両親ともに東大出身、姉も国立大の医学部に現役合格というエリート家庭で育ったタツキは、幼少期から勉強漬けの日々を送ってきたという。

「ゲームやテレビは禁止で、ずっと勉強ばかりでした。塾や習い事がない日に友達の家でゲームをするのが何よりも楽しみでしたね。小学校のときは不良に憧れて悪ガキグループに入っていたけど、どこか馴染めなかったのを覚えています」

高校は県内トップの進学校に進み、野球部に所属。そして、一浪して有名国立大学に入学した。タツキは大学でも野球を続け、卒業後は持ち前の勤勉さと体育会仕込みの体力を武器に誰もが知る超一流企業に就職する。

「古き良き日本企業と言えば聞こえはいいですが、セクハラやパワハラがとにかくひどくて……。しかも、会社の中でも一番ブラックな部署に配属されてしまって。『〇〇大卒のクセにこんなこともわからないのか』とか『へらへら笑ってボソボソしゃべるけどホントに野球部?』って言われたり。挙げ句の果てには、『今の子はこの程度でもパワハラになっちゃうんだよね(笑)』とか言われるんですよ。体育会出身なので全然大丈夫っす! って態度でいますが、実際はかなりキツいですね……」

合コンやキャバクラに行けば、大学や会社の名前でチヤホヤはしてもらえた。しかし、超がつく男社会な組織に置かれた自分の辛い気持ちをわかってくれる人はいなかった。

そんなとき知人女性から誘われたのが、歌舞伎町のホストクラブだった。単なる興味本位で訪れたホストクラブは、想像以上に楽しく刺激的だったという。

「まず、ホストってシンプルに話が面白いんですよ。俺みたいな陰キャには興味のないチャラ男ばかりだと思っていたんですが、キラキラした陽キャや意外とオタクな子もいて。寮生活をしているからか、ホスト同士の仲間意識も強くて、高校の野球部を思い出しました」

そんな居心地の良さに惹かれ、やがてタツキはホストクラブにハマるようになった。最大の魅力は、「男に褒められることの気持ち良さ」だという。

「男社会を知らない女性に仕事とか経歴のことを褒められてもまったく気持ちよくない。でも、競争社会を生きているホストに褒められると、ちゃんと俺を見てくれてるなって思えるんです。もちろん向こうは仕事でお世辞を言っているのはわかっているんですが、同じ男同士で色恋が通じないからこそ、本当の自分を評価してくれている気がする」

仕事の合間を縫って、月2回ほどホストクラブに通っているタツキ。さまざまな店舗を巡り、「推し」ホストもできた。

「同じ野球経験者のホストさんなんです。カッコいいのに気取っていないところが好きですね。彼が『シャンパン入れてもらうのって本当にありがたい。本気で声出して恩返ししたい』と言っていたので、ボーナスが出たらシャンパンを入れてあげるつもりです」

男だからこそ、女性とは違う視点で「ホス狂う」人間もいるのである。

佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。

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『FRIDAY』2022年10月14日号

  • 取材・文佐々木チワワ

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