10・8キングオブコントを10倍楽しむための「3つの視点」 | FRIDAYデジタル

10・8キングオブコントを10倍楽しむための「3つの視点」

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いよいよ10月8日、15回目となる『キングオブコント 2022』(TBS系)が放送される。昨年は審査員が一新され、大会史上最高得点で空気階段が優勝するなど話題性も高かった。今年も前回と同じく、初出場が5組。新鮮な顔触れが揃う中で、どんな戦いが繰り広げられるのか楽しみだ。

決勝メンバーは、いぬ、かが屋、クロコップ、コットン、最高の人間、ニッポンの社長、ネルソンズ、ビスケットブラザーズ、や団、ロングコートダディの10組。どの組も持ち味が異なり、得意とするスタイルもそれぞれだ。

『キングオブコント 2022』(TBS系)公式HPより
『キングオブコント 2022』(TBS系)公式HPより

まずは最高の人間。即席ユニットとして初の決勝進出を果たしたことでも話題となった。メンバーは2014年、2015年にコンビで同大会のファイナリストになった元巨匠・岡野陽一と2020年に「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝した吉住。実力者である彼らは、特有の世界観と狂気を放つネタを特徴としている。

そもそも巨匠が、「パチンコ玉を新聞紙で包んでおじさんを作る」というような突飛なコントを得意としており、その独特な世界に吉住は影響を受けたという。吉住に後味の悪いネタが多いのはこのためだろう。そんな2人は、準決勝でも抜群の相性の良さを感じさせた。

準決勝敗退も、個性光った「金の国」「青色1号」 

惜しくも準決勝で敗退してしまったものの、個人的にポテンシャルの高さを感じたグループもいる。それが、「金の国」と「青色1号」の2組だ。

金の国は、演技力と構成力に優れている。準決勝で披露された2ネタのうち、とくに感銘を受けたのはアニメTシャツを買いにきたコアなファン2人を巡るコントだった。

今後も賞レースにかける可能性もあるため詳しい内容は避けるが、エレベーターや階段での移動を表現する演出が素晴らしかった。とくに冒頭で客席を背に雑居ビルのエレベーターに乗り込み、ラストで客席に顔を向けマンションのエレベーターで移動するシーン。これは最初に背中を見せることでミステリアスな雰囲気を醸し出し、最後に表情とTシャツを見せることで緊迫感へとつなげていくテクニックだ。

ごく短いコントの中で、よくこれを形にできたものだと感心してしまった。まるで映画のワンシーンのような切り取り方だが、しっかりと笑いも起きていた。個人的に演出の新鮮さではトップのコンビだった。

もう1組、青色1号は新たな一面を垣間見た気がした。配信では1ネタしか見られず残念だったが、テレビ局の面接試験で就活生が自らの失敗を実況し巻き返していくコントは秀逸だった。

それまでは、ボケ・上村典弘がネタを引っ張っていくイメージが強かったのに対し、このコントでは仮屋想を中心に展開していく。私が彼らのネタを見ていたこともあるだろうが、トリオの新たな可能性を感じさせるコントだった。

独自の世界観を放つ関西勢3組 

こうした関東のコント師たちを抑え、決勝へと駒を進めたのが関西勢の3組だ。ロングコートダディニッポンの社長ビスケットブラザーズは、いずれも関西を拠点に活動する漫才とコントの両刀使いである。日常的なシチュエーションコントを中心とする関東勢に対し、彼らは独自の世界観を打ち出して勝ち上がった。

ロングコートダディは、昨年の「M-1グランプリ」決勝で4位となったことも記憶に新しい。ネタは「来世はワニになりたいのに、なぜか肉うどんに転生してしまう」という漫才コントだった。

どことなく、おぎやはぎ、POISON GIRL BANDなど関東芸人の雰囲気を持っているが、やり取りのポイントでわかりやすく逸脱したボケが機能する点はやはり関西の土壌を感じさせる。今年の『オールザッツ漫才 真夏のゴールデンSP』(MBS)で優勝。勢いづく彼らが、キングオブコントの頂点に立つ可能性は十分ある。

ニッポンの社長も爆発すればわからない。2020年は「ケンタウロス(上半身が人間で下半身が馬)とミノタウロス(上半身が牛で下半身が人間)の出会い」を描いたコント、2021年は「バッティングセンターで高校球児にアドバイスを送るおじさんにボールが当たり続ける」というコントでキングオブコント決勝に進出。

いずれも強烈なキャラクターで、ケツの“かわいげ”も相まっていつの間にか笑わされてしまう。今年の準決勝でも、その個性は健在だった。昨年の「NHK新人お笑い大賞」で大賞、今年の「上方漫才大賞」で新人賞を受賞。空気階段と同じく、3度目の正直でキングオブコント王者となるか。

ビスケットブラザーズも2020年の「ytv漫才新人賞」、昨年の「NHK上方漫才コンテスト」で優勝し、2019年に続いて2度目のキングオブコント決勝進出を果たすなど、数々の賞レースで結果を残している。このコンビの特徴は、何といっても原田泰雅のキャラクターにある。演者としての彼は、“笑いの腕力”とも言うべき圧倒的な強度を持っているのだ。

2019年のキングオブコントでは演劇的な手法を用いたコントを披露したが、今大会の準決勝ではシンプルに原田の腕力を前面に押し出していた。一つはある種禁じ手とも言えるコントだったが、これが爆発するようなら今大会は彼らのものになるだろう。

関西vs関東の熾烈な戦いに期待 

すでに東京で活動していたジャルジャルを除くと、キングオブコントで優勝した関西勢は2017年のかまいたち(2018年に東京進出)が最後になる。

それ以前を見ても、2015年のコロコロチキチキペッパーズ(2016年に東京進出)、2008年のバッファロー吾郎(2009年に東京進出)と数は少ない。あくまでも活動拠点の括りだが、キングオブコントおよびコントの主流は東京にあったことがわかる。

しかし、だからといって今後もこの状況が続くとは言い切れない。昨今、関西を拠点とする芸人が積極的に関東のコント師をゲストに呼ぶライブも増えているし、また関東のコント師に影響を受けた関西の芸人も珍しくなくなっている。東西それぞれの持ち味を残しながら、風通しの良い環境でレベルアップしている印象が強いのだ。

この件については、今年私が直接取材したかが屋・加賀翔の言葉がとても印象的に残っている。

「もちろんキャラの強さもありますけど、ロバートさんが大阪で死ぬほどウケてるところってやっぱり見ますし。逆に関西のロングコートダディさんが、ものすごく雰囲気のネタやったりするわけですよ。僕はロングコートダディさんのお客さんを信用してるし、そういう大阪の土壌で僕らがウケないとも思わない」(2022年8月25日に『FRIDAYデジタル』で公開された「コント職人・かが屋が明かす「他事務所芸人との交流が生む刺激」より)

ロングコートダディニッポンの社長は、セルライトスパとともにコントユニット「関西コント保安協会」を結成。昨年2021年7月にABCテレビで同名の特番も放送された。彼らは、漫才が支持される関西の土壌に本気でコントを根付かせようと奔走しているのだ。

今年は、活気づく関西勢がキングオブコントを制することになるのか。それとも、引き続き関東勢が王者となるのか。いずれにしろ、前回と同じく熱量の高い大会になるのは間違いないだろう。

  • 鈴木旭

    フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。2021年4月に『志村けん論』(朝日新聞出版)を出版。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/

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