「ガキ使」が提示する”初老”という新たな笑いの境地

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『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)が、絶好調だ。

10月4日放送分では、「8歳なりきりコンテスト」を開催。芸人にとって忘れてはいけない童心をチェックするという趣旨で、レギュラーのココリコ・田中直樹、月亭方正のほか、ゲストにFUJIWARA藤本敏史、次長課長・河本準一、ロバート・山本博を迎え、“40歳オーバー芸人”たちが全力で8歳になりきるという「地獄絵図」を見せてくれた。

子どもの体力は恐ろしいもので、生産性ゼロの無意味なことを、億劫がらず、飽きることなく、永遠にやり続けられることに関しては、尊敬の念すら抱いてしまう。そんな子どもに40歳オーバーが「なりきる」のだから、しんどいにもほどがある。

「8歳」のみならず、「3歳タイム」「5歳タイム」まで飛び出し、汗が止まらないわ、心臓はバクバクするわ……「童心」どころか、途中からは疲労によって顔がだいぶ老け込んでいき、「老人」のようになり、しまいには「枯れ木」のようになっていた。

この回は「神回」とネット上で絶賛されていたが、彼らの心境に本当の意味で痛いほど共感し、本気で楽しむことができるのは、年齢の不可逆性を痛感するようになる「オーバー40歳」からの視聴者ではないかと勝手に思っている。

さらに翌週、11日放送分では、ダウンタウン・松本人志が「出前館のCMの浜田みたいになりたい!」と言い、「出前館」CM再現をするという、がっつりコント企画を放送。これがまた「神回」と言われる展開だった。

「で、で、出前館、出前がスイスイスーイイ」とカメラ目線で歌い、踊る動画をYouTubeで何度も予習し、月亭方正とココリコにアドバイスをもらいつつ、「浜田超え」を目指す松本。しかし、やればやるほど相方・浜田の偉大さに気づかされ、重い空気になる中、救世主のように現れたのは「本人」である浜田だった。

(画像:出前館)

そして、みんなの羨望の視線を浴びながら、いよいよ本人が歌うが……まさかの本人が、一番声が出ておらず、下手だというオチに。そこに至るまで、ただ一人2時間も早く現場入りさせられ、撮影させられていたという浜田のドラマ仕立てのパートが幾度も挟み込まれていたことが、壮大な前フリとして効いていた。

この「浜田リスペクト」というテイの“浜田イジリ”は、みんなが大好きなパターンのひとつではある。それにしても近年の『ガキ使』は、オーバー40歳~ダウンタウンの“アラカン”世代までを中心に、加齢に抗わず、それどころか積極的に加齢を楽しむ「初老」的笑いにシフトチェンジしているように思える。

その傾向が顕著に見られるものとして、近年、『ガキ使』の定番の一つとなっている「ゲーム企画」が挙げられる。

様々なボードゲームや、芸人たち考案・持ち込みのオリジナルゲームなどにレギュラーメンバーたちが挑戦するというものだが、ダウンタウンも、他のレギュラーメンバーたちも、ことごとくルールの飲み込みが悪く、ときには「これ以上難しいのは無理。覚えられない」と浜田が言うこともあるくらいだ。

しかし、うまくいかず、苦戦したり、グダグダになったりしながらも、それぞれが「新しいゲーム」にチャレンジしてみて、盛り上がる姿は本当に楽しそうで、幸せそう。番組内で出演者たち自身が「デイサービスみたい」と自虐していることもあるが、その楽しそうな姿は実年齢よりもおじいちゃんたちのようでもある。

『NHKのど自慢』に出てくる、達者なお年寄りのように見えることもあれば、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)によく登場する、バカ話や下世話な話、下ネタなどをしては爆笑するおじいさん・おばあさんたちのようにも見えて、その姿を見ているだけで、なんだか楽しくなって、癒されてしまうのだ。

もちろんそこには本人たちの「デキないほうがオイシイ」とか「下手なほうが笑える」といった芸人としてのプロフェッショナルな計算や、スタッフたちの見せ方・切り取り方の演出による効果もあるだろう。

しかし、もし同じゲームを、とんねるずがやっていたとしたら? おそらくすぐにどれも理解し、上手くこなしてしまうんだろうなという気もする。

体育会+不良の「老けない人たち」代表のようなとんねるずは、コンビとしてのレギュラー番組が消滅し、テレビでの露出を減らしている。木梨憲武は個人でタレント活動を続けているものの、石橋貴明は活動の主軸をYouTubeに移し、ますます斬新かつ攻めた姿勢を見せている。自らが変わることなく、常に最前線の一番「面白い場所」を探していくスタイルだ。

それに対し、ダウンタウンは、かつての「センスの塊」で「トンガっている」「攻めている」笑いを捨てたわけではなく、お茶の間の温度や視聴者たちの加齢を味方につけ、新たに「初老的笑い」の追求にシフトチェンジしてきている。

思えば、『リンカーン』(2006年)の挑戦企画で、山手線の初乗り料金がわからなかったり、都バスの乗車料金でどこまでも行けることを知らなかったり、挙句、コピー機の使い方がわからず四苦八苦するダウンタウンの哀愁漂う姿に大笑いしたものだが、あれから約15年。

加齢に抗うのではなく、「わからないこと」「できないこと」「ヘタなこと」を受け入れ、積極的に見せていく笑いの提示の仕方は、自分も含めた多くの「オーバー40歳」にとって、共感とともに、安心感や癒しを与えてくれる。

「人生100年時代」という言葉が持つ、とてつもなく重く苦しいイメージを変え、「わからないことや、できないことがどんどん増えても、ずっと笑って過ごせるんじゃないか」と思わせてくれる、積極的な「初老」的笑い。まさかダウンタウンに癒される時代が来るとは。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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