<h3>「小室さんは、率直に気の毒だと思っていました…」</h3>
小室圭さんがニューヨーク州の司法試験に3度目の挑戦で合格したことが報じられ、話題になった。
アメリカと日本とでは異なる部分もあるとはいえ、いずれも非常に“狭き門”である司法試験。日本では今年9月5日に総合評価の総合点750点以上の1403人の合格が発表された。
そこで、その1403人のうちの一人、30代後半男性のTwitterユーザー名「フリーター、司法試験に受かる。」さん（以下「フリーターさん」と表記）にインタビューを行った。
実は以前のユーザー名は「土木作業員、挑む。」で、最終合格率４パーセントという令和３年度の「司法試験予備試験」を突破したとのツイートを見て今年1月初旬に取材依頼。その後、司法試験本試験に合格を果たしたことで、10ヵ月ごしの約束となる取材が叶ったかたちである。
<figure id="attachment_272284" aria-describedby="caption-attachment-272284" style="width: 6500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2161428a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/aflo_172808037.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-272284" class="wp-caption-text">「1回落ちただけでもすごく辛いのに、日本中の人が注目している…。率直に気の毒だと思っていました」とフリーターさん（写真：アフロ）</figcaption></figure>
<h3>弁護士は介護する父の夢…</h3>
「大学生の頃（都内私立大学法学部在籍中）に司法試験を受け、司法浪人も経験したものの、諦めて会社員になりました。でも、法務の仕事に少し携わるうちに面白くなり、自分にももっとできることがあるのではないかと思い、司法試験に再チャレンジすることに。ただし、会社を辞めるのは怖かったから、勤めをしながら独学で勉強を始めました」
昨今は難関大学の法学部を卒業（あるいは早期卒業）し、法科大学院に行き、司法試験を受けるのが一般的なルートだ。
しかし、法科大学院に行くにはお金がかなりかかるし、学部生時代から予備校とのダブルスクールを続ける人も少なくない。つまり、どの道、司法試験に合格するにはお金がかなりかかるのだ。
ところが、フリーターさんの場合、法科大学院には行かず、会社員として土木作業員の生活を続けながら、「司法試験予備試験」を突破。予備試験の最終合格率は約4パーセントというのは先に述べたが、それはあくまで全体の合格率で、社会人ともなると約1パーセントにまで下がるという超難関なのだ。
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いったいどのように合格を成しとげたのか。
「司法試験の勉強を再開したのは20代半ばでしたが、当初はそこまで本気ではなく、本腰を入れて勉強するようになったのは、5年前に父親が難治性の病気になり、先がそう長くないことがわかったときからです。 
実は父も昔、弁護士を目指して勉強していた時期があったので、父が生きているうちになんとか合格する姿を見せてあげたいなと思い、スイッチが入ったかたちです」
そこから、勤めていた会社を辞め、地元に戻り、再就職。地元でも土木作業員として会社員生活をしつつ、父親の介護もしながらの勉強の日々となった。
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<h3>帰宅後は23時まで、朝は3時起きで…</h3>
「仕事から帰ってからの勉強で、どうしても疲れてしまい、最初の頃は勉強しようと思ってもすぐに寝てしまう状態でした。それで、どんなに疲れていても、眠くて辛くても、早朝と夜の勉強は365日必ず続けようと決めたんです。 
会社から帰るとご飯を食べ、風呂を済ませてから23時まで勉強し、朝は3時起きで、3時間勉強してから会社に行く。そんな日々を3年間続けました」
予備試験を受け始めたのは3年前で、3回目の受験となった今回、念願の合格を果たす。法科大学院にも予備校にも行かず、仕事をしながらの独学で、どうやって合格したのか。
「僕はお金がないので、市販の参考書を読んで、あとは法務省のホームページにある過去問を解説した参考書を繰り返しやりました。予備校が公開している無料体験講座の特定分野の解説動画などもYouTubeでたくさん見ましたね。 
もちろん社会人が不利だということはわかっているので、現役の学生に勝つとなるとお金か知恵を使うしかない。でも、僕にはお金もないので、知恵を使うしかありませんでした。 
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一番考えたのは、勉強時間を確保するため、スキマ時間でどれだけ勉強できるかということ。僕の場合、口に出して言うのが一番頭に入るので、例えばお風呂に入っているとき、前日に勉強した特定分野の内容を全部口に出して言う。仕事中、工事車両が来るまでの時間に前日勉強した判例の定義を口に出して言う。休憩でトイレに行くときに、刑法の窃盗罪とか強盗罪とかの定義を口に出して言うといった具合に、常にスキマができたら法律のことを言うことを習慣にしていました」
<figure id="attachment_272288" aria-describedby="caption-attachment-272288" style="width: 378px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5c2f3e3e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/2022090611202-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-272288" class="wp-caption-text">そうそうたる有名法科大学院が並ぶ中、独学で…。表は、2022年の司法試験の法科大学院別合格者数上位10校（出典：共同通信）</figcaption></figure>
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<h3>「司法試験＝六法全書を覚える＝暗記力の勝負」!?</h3>
「司法試験＝六法全書を覚える＝暗記力の勝負」と思われがちだ。若ければ若いほど通りやすいイメージはあるが…。
「もちろん若い方のほうが受かりやすいのは間違いないですし、シンプルに暗記力だったら若い方のほうが強いと思います。 
でも、年齢が高い人が受からないわけではなく、僕より上の世代、50代、60代の方でも受かっている人はいるんですね。 
司法試験は『短答』と『論文』に分かれていて、短答は条文や判例をいかに知っているかで、ある程度合格点がとれる。でも、メインは論文で、暗記も当然必要ですが、それ以上に『こういう時はこんな感じに書く』という論文の書き方の型のようなものが憲法、民法、商法、刑法といった各法律ごとにあり、その型を理解していることが大事な気がします。僕の場合、その型を知るという意味で、過去問をひたすらやったことが大きかったのではないかと思います」
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フリーターさん自身、かつては「司法試験＝暗記力」だと思っていたと振り返る。
「思えば、暗記力の勝負じゃないと気づいたのが転機だったかも。 
過去問を繰り返すうち、『別にこの判例そのものを知っていなくとも、今までの判例の傾向を知っているだけで解けるじゃん』みたいなことがわかってきたんですよ。逆に僕にお金がたくさんあったら、いろいろな勉強法に手を出して、そうした根本的な発想にたどり着けなかったかもしれない。 
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法務省のホームページに出ている過去問を解説した参考書を繰り返しやる方法しかなかったのですが、逆に言えば、それがうまい方に転がったのかと思います。なぜなら、司法試験の問題は裁判官や検察官、弁護士、法律の研究者など、超一流の実務家が1年かけて1問作るから、非常に質が高いのです。それに対し、予備校などが作るような問題は、学生アルバイトの案出ししたものを法務職の弁護士さんがチェックするみたいな流れで、1年間に何十問も作るから、質が低いものも出てくる。それを数多くこなしても……というところはあると思います」 
<figure id="attachment_272292" aria-describedby="caption-attachment-272292" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="419ee057"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/aflo_14980549.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-272292" class="wp-caption-text">「司法試験＝六法全書を覚える＝暗記力の勝負」と思われがちだが…（写真：アフロ）</figcaption></figure>
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さらに、かつては「短答：論文＝１：４」だった配点割合が、今は「短答：論文＝１：８」に変わり、ますます論文重視になっていることも有利だったかも、と分析する。
「短答式試験はセンター試験（現在の大学入学共通テスト）の足切りみたいなもので、ある程度の知識がない人を落とすためのもの。主に暗記力勝負のものなんです。それに対し、以前より論文の比率を大きくしたのは、暗記力だけで法律家にならせるのはまずいだろうという考えもあるからのようです」
司法試験の予備試験は4日間で、短答・1日、論文・3日間というスケジュールだが、短答で合格点に届かない場合は、論文は一切採点されないという。試験解答は予備校などが速報で出してくれて、自己採点するのも共通テストなどと同じ。
今回の場合、短答が満点175点のうち、足切りラインが90点台とのことで、フリーターさんは約140点、8割近く取れていたという。ただし、短答は初回から合格ラインに達していたため、合格に結びついたのは、過去問を繰り返すことで論文の得点を上げられたことがやはり大きいようだ。
ちなみに、予備試験合格者はたった4％程度だが、予備試験合格者が司法試験本試験に合格する確率は97.5％程度。それだけ予備試験合格が“狭き門”で、実力者のみが受かるということがわかる。
「頑張ったら司法試験に受かるとは僕は言えません。諦めた人もそれが悪いことではないですし、そこまでに得た知識を活かして、別の道に行くのも素晴らしいことだと思います。 
僕は自分をすごいとは全く思わない。ただ、自分に向いている勉強法と司法試験が合っていたのかなとは思います。極端なことを言うと、司法試験は頭がいい人が受かる試験ではなくて、『司法試験に向いている人が受かる試験』だと思うので。30代後半で受かったのも決して遅いとは思わないですよ。自分に向いていることに一生気づけない人もいる中、僕は死ぬ前に気づけてよかったなと」
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<h3>将来は経験を生かして労働問題を…</h3>
ちなみに、フリーターさんは司法試験に臨む前、かつて父親が司法試験を受けたときに父（フリーターさんの祖父）からもらった万年筆をもらった。試験当日はそれを「お守り」がわりに持参し、答案用紙に名前と受験番号を記入。3世代の悲願を叶え、見事合格を勝ち取った。
会社員を辞め、フリーターになったのは、実に司法試験合格後のことだ。
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では、来年4月に司法修習生になった後は？と問うと、こんな目標を語ってくれた。
「実は弁護士としてすでに労働問題に強い大手法律事務所に内定をもらっているんです。僕は労働問題を手掛けていきたい。土木関係の仕事にいて、給料が遅れるとか残業代を払ってくれないとかそういう話をたくさん聞いてきました。残業の際に割り増し賃金を払ったりするのは法律で定められていることなのに、それを守らない会社は許せないんです 。 
外国人労働者の問題にも対応できるよう、今後は語学も勉強したいですし、Twitterも守秘義務に触れない範囲で続ける予定です。ただ、フリーターではなくなるので、Twitterのユーザー名はどうしようかなと思案中です（笑）」

1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』（太田出版）、『KinKi Kids　おわりなき道』『Hey! Say! JUMP　9つのトビラが開くとき』（ともにアールズ出版）など。

田幸和歌子

法科大学院に行かず、土木作業員の仕事を続けながら合格率約4パーセントの「司法試験予備試験」を突破。そして、司法試験本試験に合格を果たした「フリーター、司法試験に受かる。」さんにお話をお聞きしました。

父の介護の傍ら独学で…土木作業員が司法試験に合格！驚異の勉強法

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