<figure id="attachment_272545" aria-describedby="caption-attachment-272545" style="width: 850px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ece63dd7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/96a97e0b9ac4db8d175a98c2c02d4fe3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-272545" class="wp-caption-text">2014年に順大監督に就任した堀池巧氏。今は現場の指揮から離れている（写真は2017年当時、アフロ）</figcaption></figure>
パワハラ疑惑が浮上している大学サッカーの強豪・順天堂大学・堀池巧監督に新たな疑惑が持ち上がった。2016年8月の総理大臣杯のトーナメントでより戦いやすい組に入るため、予選を兼ねた同年6月のアミノバイタル杯で選手に対し、「負けろ」と指示を出していたことが当時在籍した複数の選手の証言で明らかになった。
Jリーグでは意図的な「敗退行為指示」が認められた場合、「サッカーに限らずスポーツに対する信頼や高潔性の維持に疑義を生じさせてしまった責任」を重く見られ、クラブライセンス剥奪などの厳罰が待つ。事実であるならば、堀池監督の進退問題に発展しそうだ。
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堀池監督は静岡県出身の元サッカー日本代表選手。清水東高時代は長谷川健太（現・J1名古屋監督）や大榎克己（清水エスパルスGM）とともに“三羽烏”とよばれ、順大卒業後は清水エスパルスなどで活躍。日本代表では11月のカタールW杯日本代表・森保一監督や三浦知良やラモス瑠偉氏らと1994年アメリカＷ杯を目指した「ドーハ組」の1人だった。
引退後は「やべっちF.C. 〜日本サッカー応援宣言〜」でコメンテーターを務め、さわやかな笑顔でサッカー普及に励んだ「Jリーグレジェンド」の1人。2014年から母校・順大の監督に就任した。そんな堀池監督は「週刊文春」の報道で順天堂大学蹴球部内で選手に暴言を吐くなどのパワハラ疑惑が発覚したが、さらに衝撃的な情報に辿り着いた。
2016年の夏のこと。大学日本一を競う「総理大臣杯」の出場予選を兼ねた「アミノバイタル杯」の日体大戦に臨む選手たちを集めたロッカールームでそれは起きた。
「この試合、勝つな！負けろ！いいな？」
発言の主は他ならぬ堀池監督。この発言が事実ならば、意図的な「敗退行為指示」に抵触する。当時、順大に在籍したある選手は深く頷きながら、当時を振り返る。
「発言はまさにその通りです。大会のトーナメントで自分らが優位に進められるよう、そのような指示があったのは事実です。自分を含む多くのサッカー部員たちは『大学サッカーという教育の場でそのようなことがあってはならない』と感じていました」
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2016年の総理大臣杯は全国から32校が集まり、トーナメント方式で日本一を競った。6月～7月にかけて行われたアミノバイタル杯は、総理大臣杯の関東予選と位置付けられ、上位8チームが同杯への出場権を得ることができた。当時、桐蔭横浜大や明大や早大が強く、第5、6、7代表になると、その3校と早い段階で対戦する公算が大きかった。日体大戦に敗れて8位となれば、その3校とは準決勝まで対戦しない組み合わせだった。総理大臣杯のトーナメントで上位に勝ち進むための“戦略”でもあった、と予想される。
堀池監督のその狙いが的中したのか、順大蹴球部は総理大臣杯で準優勝に輝いたものの、「負けろ」と指示を受けた学生の心の中にはすっきりしないものが残った。前出の元部員が続ける。
「自分たちは大会が終わったある時に、『堀池監督のトレーニングをボイコットしたい』と大学側へ申し出をしました。ただ、大学側からは『大ごとにはしたくない』という姿勢をありありと感じていましたし、自分たちのこの申し出に対して、堀池監督も一度は『本当にすまなかった。自分は変わる』と、選手たちと大学側へ誓ってみせたのですが……。結局、その誓いを破るのに10日もかかりませんでした。また、『ボイコットしたい』という自分たちの申し出自体も大学側に捻り潰されてしまった形でした」
<div data-friday-nextpage-lead="敗退指示が出された大会とは…"></div>
<a href="#" data-ident_hash="309de7a7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/amino_tournament.jpg" alt=""></a>
<figure id="attachment_272616" aria-describedby="caption-attachment-272616" style="width: 768px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a03d00ec"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/amino_saisyuujyunni.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-272616" class="wp-caption-text">堀池監督から敗退指示があったとされる2016年6月のアミノバイタルカップのトーナメントと最終順位。5-8位決定戦の1回戦で日体大に敗れ、結果的に8位になったが、総理大臣杯では決勝まで進んだ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_272550" aria-describedby="caption-attachment-272550" style="width: 1164px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="557d0e3e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/b70d1264287039f3f7fdb12109573a18.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-272550" class="wp-caption-text">2016年8月に行われた総理大臣杯。順大は決勝まで勝ち進んだ。この大会に進出を決めるアミノバイタル杯で堀池監督から疑惑の指示が出た</figcaption></figure>
プロサッカー選手を目指す大学生選手にとって、年間最強を目指して覇権を競う大学リーグやカップ戦は貴重なステージ。特に、上級生や有望選手たちにとってはJクラブのスカウトや彼らをJクラブへ導く代理人たちに対して、自分をアピールする大切な場だ。大学リーグを経てJクラブへ加入し、日本代表へ駆け上がっていった選手も増えてきており、今回のW杯出場につながるアジア最終予選で活躍した伊東純也は神奈川大OB、W杯代表入りの有力候補でもある旗手玲央は順大OBだ。
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ただ、大学サッカーに限らず、試合に出られなければ、夢に近づくチャンスは広がらない。大学にはプロ1年目から通用するような選手もいれば、行けるか、行けないか当落線上の選手も存在し、大学での出場機会を確保することが夢に近づく前提となる。
選手選考については大学のチーム事情によって変わってくるため、平等が保たれているかどうかを評価すること自体難しいが、こと順大については「堀池さんに気に入られなければ、試合に使ってもらえなくなる」（順大OB）という危機感が選手にはあった。さらに選手への暴言が日常的に行われ、堀池監督に正面切って意見を述べることが難しい空気が流れていた中で出された「まさかの指示」。プロになることを夢見た選手たちは「敗退指示」や「パワハラ」といった理不尽を受け入れるしかなかったのだ。
負けることを前提にプレーしたら、自分の本来のパフォーマンスは出しづらく、プロの夢が近づくとは言い難い。順大OBのあるJリーガーはこう明かす。
「自分の場合は順天堂大学を経由して、育ててもらったユースチームを持つJクラブへ帰る、という夢やモチベーションがありましたが、その夢は大学時代に絶たれてしまった。自分の実力を発揮しきれなかった原因のひとつに、部に流れている“空気”が大きく影響していたように思います。今回の件が明るみに出て、自分と同じような境遇の後輩たちが、同じような経験をする可能性が少しでも減ることを願っています」
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敗退指示を受け入れざるを得ないパワハラ体質は、順大入学の約半年前から始まるという。ある順大OBはこう明かす。
「当時の堀池さんは『やべっち』をはじめメディア露出も多かったですし、高校生の自分たちでも知っている元日本代表選手でした。その人が、自分たちが高3の夏を過ぎて、『プロか大学か、それ以外か』と進路について頭を悩ましていたときに試合会場や練習場に訪れて、あのテレビの中の『ホリイケさん』の笑顔で話し掛けてくるんです。まず、『あのね、ウチは1年生から君たちを試合に使うよ』って。プロになりたい当時の自分たちにとってそんな監督さんは救世主ですから、自分も家族も喜んで順大進学を選ぶんです」
ただ、数回の練習参加や情報交換をする中で、ある異変に気付く。
「なぜか、順大に所属していた選手たちからは『やめたほうがいい。絶対に来ないほうがいいから』『他の大学の話があるなら、そっちを選べよ』と言われました」
入学するとすぐにその理由がわかった。彼らの目に飛び込んできたのは、あの「ホリイケさん」ではなく、選手たちを日々何度も恫喝し続ける姿だった。
<div data-friday-nextpage-lead="堀池監督が選手に対して発した「暴言の中身」"></div>
<figure id="attachment_272552" aria-describedby="caption-attachment-272552" style="width: 900px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8b85462f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/e211836b04a2b885efdda91d1b080850.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-272552" class="wp-caption-text">1994年W杯を目指したサッカー日本代表。前列左端が堀池監督。右隣に森保監督がいる。前列右端にラモス瑠偉氏、後列右端に三浦知良の姿もある（写真：アフロ）</figcaption></figure>
試合でやり玉にあげられたある選手は前半終了後のベンチで罵声を浴び、交代を命じられた。その選手はサブチームに降格したが、どうしたらもう一度、トップチームでプレーできるのか、堀池監督からは改善のためのトレーニングやアドバイスなどは特になかった。別の試合後には、「お前のせいで負けたんだぞ」「お前が育ったチームの選手は頭の悪い奴ばかり」と選手への集中口撃が繰り返された。そんな日常に耐えかね、推薦で入学した選手が辞めていく例が少なくなかったという。
あるサッカージャーナリストはこう分析する。
「堀池監督は自分がスカウト活動に関わった選手や好みの選手を鍛えて結果を残すことで手柄を立てたかったのだと思います。堀池監督が2014年に順大監督に就任した当初は前任監督の方針で集められた選手ですから、自分の色に染めていくには下級生にたくさん出場機会を与えたほうが自分の“色”に染めやすい。 
その割を食うのは実績ある上級生です。彼らを試合に使わずにベンチに座らせることで、『言うことを聞かなければ、外される』という空気も醸成されたのでしょう。客観的に監視する立場にある大学側も、堀池監督や同じく順大OBの元日本代表の名波浩さん（現J3松本監督）に対してはリスペクトが先に立つあまり、物を言えないようです」
堀池監督の下で4年間過ごした別のJリーガーは、少し遠くに目をやりながら、胸の奥底にしまった思いを語った。
「退部していく仲間たちを間近で見てきた自分たちは、彼らの思いを背負ってここまでやってきたつもりです。でも、あの頃に受けた指導を超えた叱責や罵倒…それらは今も、（左手をこめかみの辺りまで挙げて）自分のこのへんにずっと残っているんですよ。それが嫌です」
高校時代はプロから注目されながら、大学卒業後にサッカーそのものから離れた元逸材選手は震える声でこう明かす。
「何よりもチームの仲間や良くしてくれた先輩たちが堀池さんから叱られている姿を見なければならないことが本当に悲しかった…順天堂大学蹴球部時代の記憶を振り返ると、あまりにも辛いことばかりだったので、卒業してから今日までの間、『大学時代の記憶を消し去ろう、忘れよう』としてきた。そうしなければ、耐えられないことばかりだったので。思い出はあります、でもそれを上回る悲しさがまだあります」
もしFRIDAYデジタルの取材が事実であるならば、順大は堀池監督の「敗退行為指示」を知りながら問題をうやむやにしたまま、最近まで指揮をとらせたことになる。それは堀池監督がした行為と同じぐらい、罪深い。事実確認のために順大に問い合わせたが、「今は何もお答えすることはない」と繰り返すばかり。用意した質問状を受け取ろうとすらしなかった。
「敗退行為指示」を黙って受け入れる理不尽な体質がなぜできあがってしまったのか。順大が堀池監督や選手と正面から向き合って聞き取りを行い、改善を求めない限り、輝かしい青春時代を「闇」と感じてしまう犠牲者はこれからも、出てしまうだろう。

パワハラ疑惑が報じられている大学サッカーの強豪・順天堂大学の堀池巧監督に「敗退行為指示」疑惑が浮上した。当時、同大に在籍した選手たちは大会後、堀池監督の下での「練習ボイコット」を大学側に要求していた。

パワハラ騒動中…元日本代表・順天堂大監督の「敗退行為指示」疑惑

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