<figure id="attachment_273988" aria-describedby="caption-attachment-273988" style="width: 2209px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f8272363"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/1d8b5ed7aa69648c9463dac4f964420c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-273988" class="wp-caption-text">今年９月、中国籍の男女ら６人が逮捕。千葉県旭市の田園に建つこの家が、在留カード偽造の工場だった</figcaption></figure>
<p>房総半島ののどかな田園地帯に建つ、瀟洒(しょうしゃ)な三角屋根の一軒家。幸せな家族が暮らしているかと思いきや、実はこの建物、日本で生活する外国人に身分証明書として交付される「在留カード」の偽造工場だったのだ（1枚目写真）。</p>
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<p>警視庁と兵庫県警など５県警からなる合同捜査本部は９月、偽造した在留カードを外国人ブローカーに提供したなどとして、出入国管理法違反の容疑で中国籍の男女５人と日本人の計６人を逮捕した。</p>
<p>彼らが偽造拠点としていた千葉県旭市の住宅からは、偽造用のカードの台紙約3000枚やホログラムシール約500枚などとともに、パソコンに記録された外国人２万人分の顧客リストも見つかっている。６人は昨年８月以降、最大1億4000万円を売り上げたとされており、偽造組織の摘発としては国内最大規模だという。</p>
<p>前出の&#8221;工場&#8221;の近隣住民は、「小さな子供の姿も見かけたし、普通の家族が住んでいると思っていました……。とにかく逮捕されてよかった」と胸をなでおろす。しかし、偽造在留カードの根絶にはほど遠いようだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「今回の検挙は、氷山の一角に過ぎない」</span></p>
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<p>そう話すのは、偽造在留カードの手口に詳しいブローカー関係者である。</p>
<p><span class="strongInContent">「これまで偽造在留カードは、日本国内で受けた注文を中国に送り、作成されたものを国際郵便で日本に持ち込んでいた。ところが近年では、ホログラムシールをカード台紙に圧着する精度の高いラミネーター（特殊なフィルムを貼る機械）が小型化、低価格化したことで、偽造そのものを日本で行えるようになった。道具さえあれば誰でも偽造ができるため、全国各地にいくつも製造拠点があるとみられている」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="本物と見まがう精巧さ"></div>
<h2>まず見抜けない</h2>
<p>事実、中国のチャットアプリ『ＷｅＣｈａｔ』には、「最高品質の在留カードあります」といった売り文句が多数投稿されている。そんな投稿のひとつに、大口取引を希望するブローカーを装ってメッセージを送ってみたところ、すぐにこう返信があった。</p>
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<p><span class="strongInContent">「１枚500元（約１万円）、大量注文はディスカウント可能」</span></p>
<p>顔写真と名前を送信し、『ＷｅＣｈａｔ Ｐａｙ』で支払いを済ませれば、２日で偽造在留カードが手元に届くという。この業者は、「品質には自信があるからサンプルを見てくれ」とかなり積極的だった。</p>
<p>入手した&#8221;サンプル&#8221;を本物の在留カードと比較してみたが、手触りと印字の濃さにわずかな違いこそあれ、並べて吟味しなければわからないレベルだ。</p>
<p>元司法通訳人でジャーナリストの周来友氏も<span class="strongInContent">「私が司法通訳人をしていた’90年代に出回っていた偽造カードから格段の進化だ。警察官でも一目では見抜けないのでは」</span>と舌を巻く。しかも、記載されている「在留カード番号」は正規のものを転載していると見られ、出入国在留管理庁で番号を照会しても、偽造かどうかは見抜けない。</p>
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<p>偽造グループは中国人が多く、主な顧客はベトナム人だという。偽造在留カードは、どのように使われているのだろうか。関東で建設業を営む男性が明かす。</p>
<p><span class="strongInContent">「人手不足が慢性化している製造業界や建設業界に、不法滞在の外国人を低賃金で斡旋(あっせん)する人材業者が存在する。最近特に多いのはベトナム人だが、業者は登録する人材それぞれに偽造在留カードを持たせ、派遣先の企業に対して提示させている。企業側も、人材業者の素性を知っているが、人材の在留カードの真贋を入念にチェックするようなことはしない」</span></p>
<p>不法残留者を雇用した側も、責任が問われるはずだが……。加藤・浅川法律事務所の加藤博太郎弁護士が指摘する。</p>
<p><span class="strongInContent">「不法就労外国人を雇用した場合、不法就労助長罪で３年以下の懲役・300万円以下の罰金が科せられます。ただ、外国人が雇用者に対し、偽造在留カードを提示するなどして、滞在や就労が合法であると偽っていた場合、雇用者は『善意の第三者』として罪に問われない可能性もあります」</span></p>
<p>偽造在留カードが出回り続けている背景には、日本社会が抱える労働現場での慢性的人手不足があるようだ。</p>
<figure id="attachment_273987" aria-describedby="caption-attachment-273987" style="width: 1919px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e8729aa0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/c309ee66d516b30d3e6801c22ca50db3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-273987" class="wp-caption-text">上が偽造された在留カードで、下が本物。手触りと印字の濃さに若干の違いはあるが、番号も実在のものを転載しており、判別するのは極めて難しい</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2022年11月18日号より</p>


奥窪優木（ライター）

在日外国人の身分証明書として交付される「在留カード」の偽造版が出回っている。実際にブローカーと名乗る人物から入手したサンプルは、本物との判別が難しい。出回り続けている背景には日本社会の問題点もあり…

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