TBSラジオ「マイナビLaughter NightチャンピオンLIVE」「ツギクル芸人グランプリ」で決勝の常連となり、ジワジワと存在感を増しているママタルトの大鶴肥満と檜原洋平。2016年のコンビ結成後、「M-1グランプリ」でも着実にステップアップを図ってきた。
そんな彼らが今年のM-1に懸ける思いとは――。昨年のM-1決勝で感じたこと、準々決勝の壁を崩すために必要なもの、今大会のライバル、「絶対優勝する」と言えるようになった理由など、2人の“現在”を赤裸々に語ってもらった。
<figure id="attachment_275000" aria-describedby="caption-attachment-275000" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="937f4947"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/214510b1d87312ead144a0370aca45df.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-275000" class="wp-caption-text">2016年のコンビ結成後、「M-1グランプリ」でも着実にステップアップを図ってきたママタルトの檜原洋平（写真左）と大鶴肥満（撮影：スギゾー）</figcaption></figure>
<h3>漫才がうまい関西勢の時代からちょっとずつ変わってきた </h3>
――昨年のM-1グランプリは錦鯉が優勝。モグライダー、真空ジェシカ、ランジャタイが初の決勝進出を決めました。
肥満：僕は、真空（ジェシカ）さんが決勝にいったのを知った時に「先いかんといてくれー」って（苦笑）。気持ちを整理するまでに1、2日ぐらいかかりました。それ以降はぜんぜん応援ムードに変われたんですけどね。 
檜原：真空ジェシカはけっこう仲良くやってたので、「同じタイミングで決勝にいきたかった」って気持ちはありましたね。もともと粗品くんと仲良くて、2018年に霜降り明星が決勝いって優勝した時にも同じ感じになったのを思い出しました。 
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でも、みんなで一気には無理だし、ちょっとずつ身近な人から決勝にいってもらって「次は自分がいこう」って感じなので、今は前向きな気持ちしかないです。
――2020年にマヂカルラブリーが優勝したことで、地下ライブ出身の芸人さんが決勝にいくようになった流れもあるんでしょうか？
檜原：僕が見てた2015年～2017年あたりのM-1って、銀シャリさん、とろサーモンさん、スーパーマラドーナさん、かまいたちさんとか、漫才がすごいうまい関西の人たちが決勝にいってるイメージなんですよ。 
吉本以外の事務所に所属して東京でライブをやってると、師匠みたいなうまい人が周りにいないじゃないですか。だから、「漫才の技術で決勝にいけないだろうな」って一方的に思ってたんですけど、ちょっとずつ変わってきたなって感じはありますね。 
肥満：磨かれたきれいな石よりも、鋭利に尖った石のほうがいいみたいな。だから、それを最初のほうにやったメイプル（超合金）さんが決勝にいった時は、すごい嬉しかったです。 
2015年って、まだ僕が芸歴1年目か太田プロの養成所生ぐらい。当時、ライブでずっとメイプルさんを観てて「面白いな」「決勝いってほしいな」と思ってたら本当にいったんです。「こういうふうになりたいな」ってあこがれてましたね。 
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<h3>世の中に明るい雰囲気を感じさせられたら可能性あるんじゃないか </h3>
――お二人は、2016年～2018年に2回戦、2019年に3回戦、2020年、2021年に準々決勝進出と年々ステップアップしています。この結果をどう受け止めていますか？
檜原：かなり順調ですね。毎年、「今がMAXだ」と思ってM-1の予選で落ちるんですけど、アップルウォッチで録音した音源を聞くと、「去年はこんなに下手だったのか」って必ず思うんですよ。 
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2019年にめっちゃいいネタができたと思って、3回戦でやったらあんまウケなくて。かなり仕上がった状態で落ちたので、当時は「これ以上どうやったらいいんだ」ってけっこうショックだったんです。でも、次の年の準々決勝後に去年の音源を聞いたら、「去年よりぜんぜんいい」ってなる。 
だから、今年ダメやったとしても、また来年、再来年に今年の音源や映像を見たら、同じように感じるんだろうなと思いますね。 
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肥満：今年も2回戦が本当に不安だったんですけど、ずっと相方が「そんなことないよ」と言ってたんです。それで、過去の2回戦を通過した時の音声データをもらって聞いてみたら、「これで受かってたなら100％受かるわ」って（笑）。それぐらい違いました。 
檜原：今年はとくに大きな会場でのライブが増えたので、耳が贅沢になっていたというか。「もっとウケるようにならないと2回戦落ちちゃうかも」って、自分らの中ですごいハードルが上がってたんです。結果的には、ぜんぜん平気でした。 
肥満：ただ、漫才自体はめちゃくちゃ下手ですけどね（苦笑）。昔に比べると、いい感じになってきたというか。
檜原：自分たちの中では、マシになってきたなって感じですね。
――そんなお二人が準々決勝を突破するのに必要なことは何でしょうか？
肥満：何が必要なんですかね（苦笑）。それこそ真空さんが去年準決勝にいった時、すごい嬉しかったんですよ。真空さんも「もし今年準決勝にいけなかったら、うちら一生無理なんじゃないかな」って不貞腐れた感じもあったので。 
檜原：たしかにモグライダーさんとか真空ジェシカとかって、「実は一生開かない扉をずっとノックし続けてるのかも」っていうような閉塞感があったんです。けど、去年に準決勝、決勝にいったのを見て「みんな開く扉をノックしてたんだな」っていうので、1個未来が明るくなったというか。 
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肥満：ただ、準決勝の壁っていうのは、ものすごく高く感じますね。それこそ今一緒にK-PROライブに出てるストレッチーズとかヤーレンズさんとかは、毎年のように準々決勝にいってますし。 
檜原：ヤーレンズさんは2016年だけ3回戦で、今年を含めてほかの7回は全部準々決勝。ストレッチーズも6年連続準々決勝だし、けっこうそこで終わる人が多い。僕らの周りはやっと準々決勝にいけるようになったんですけど、昔からの人は大変だと思います。 
肥満：うちらが思ってる以上に「どうやって開けんねん、この扉！」ってなってるんだろうなって。僕らは、まだ言うて3年目なので。
檜原：ただ、今までは「減点項目があるんじゃないか」「スタイルが似てるコンビは何組も準決勝に上がらない」とかって周りと比べたりして、受験っぽく考えてたんです。そこから、「僕と大鶴肥満が世の中に広く知られることが『いいことかも』って思わせられたら、もしかしたらいけるんじゃないか」と思うようになりました。 
単純に「僕と大鶴肥満が決勝いったら、日本がちょっと明るくなるかも」みたいな。言ったら、去年の錦鯉さんもそうじゃないですか。だから、今のちょっと暗いムードの日本に、少しでも明るい雰囲気を感じさせられたら可能性あるんじゃないかなって。 
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<h3>ライバルは大学お笑いの芸人仲間、ネタなら吉本芸人のほうが近い </h3>
――今年の大会で、ライバル的な存在はいますか？
檜原：ストレッチーズ、さすらいラビー、ひつじねいりって、松村（祥維・34歳）さん以外は31歳で同い年なんですよ。僕はサークル入ってないんですけど、ほかはガッツリ各大学のお笑いサークルにいて、みんな大学お笑いの大会に出てる。 
同じ時期を過ごして、大学卒業してみんなプロになった感じなんです。育ってきた環境も似てるし、もう10年ぐらい一緒にいるって意味ではライバルですよね。 
肥満：野球で例えるなら、松坂（大輔）、村田（修一）、杉内（俊哉）とかが、みんなプロの世界で活躍してるみたいな。本当に同年代が他事務所に所属して、今も一緒にやってる感じなので意識はしますよね。 
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檜原：なんか誇らしいです。僕は大阪出身で、高校生の時に声を掛けてもらって最初に仲良くなった芸人が粗品くんで。そこから吉本のオーディション受けて、NSC大阪33期生の男性ブランコと同時に受かった。ZAZYもそうですけど、最初に仲良くなった人と今もずっといるなって感覚なんです。 
それで東京にきたら、『学生才能発掘バラエティ 学生HEROES!』（テレビ朝日）でストレッチーズ、さすらいラビーと会って、1学年上に真空ジェシカとサツマカワ（RPG）さんがいてっていう。 
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――K-PROが運営する劇場「西新宿ナルゲキ」で看板になっている方も多いですよね。
檜原：ただ、ストレッチーズ、さすらいラビー、ひつじねいりはしゃべくりなので、ネタはあんまり意識しないですね。ネタで言うと、ケビンス、マユリカ、男性ブランコとか、吉本のほうが近い人は多いなって感じがします。 
肥満：僕はひつじねいりが面白過ぎますね。何ならそのまま決勝いっちゃうんじゃないかなって思っちゃうぐらい。僕はあんまりライバルとかっていなくて、「あぁ面白い～」しか思わないです。嫉妬することもなく、面白い人が決勝にいってくれたら単純に嬉しい。逆に面白くないと思ってる人がいった時は、複雑な心境になりますけども。 
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<h3>“僕らにしかできない漫才”で「絶対優勝するっちゅーねん」</h3>
――今年の大会で、とくに意識していることはありますか？
檜原：今年、準々決勝と準決勝でやろうと思ってるのは、誰とも被ってないネタ。別のコンビと比べられないような、“僕らにしかできない漫才”をやりたいなと思ってます。 
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肥満：今年の3回戦でやったネタも、うちらしかできないと思うんですよ。「僕、健康診断いきたいんですよ」と言って「やっとそう思ってくれたか！」って相方が喜ぶネタは、180キロある人じゃないとできない。 
檜原：そのツカミは、大鶴肥満だから成立するんですよ。普通の見た目の人が出てきたら、「どんな健康状態か」「何がきっかけでいこうと思ったか」とかって説明する必要があるじゃないですか。 
肥満：普通は何ターンもかかるボケが、こんだけ太ってることで見ただけで理解させられる（笑）。もう僕の見た目が情報なので、何もしないでボケてる状態なんですよ。 
檜原：去年は割と大喜利が多いネタだったので、上位互換みたいな人がいるなっていうのは何となく見てて思ったんです。けど、今年は僕らの下位互換も上位互換もいない。例年とウケ方はそんな変わってないんですけど、希望はありますね。
――最後に今年のM-1に向けての意気込みを聞かせてください。
肥満：一言でいうと、「絶対優勝するっちゅーねん」ってことですかね。去年までは「決勝にいきたい」だったんですよ。「優勝したい」って気持ちが芽生えたのは今年からだと思います。 
檜原：「優勝する」ってやっぱ怖い部分もあるじゃないですか。優勝してしまったら、「一気にメディアに出て、いろんな場面でうまく立ち回れるか」みたいな不安もあるし。 
肥満：パッて振られてうまく返せなかったら、どんどん仕事が減っていくみたいなね。 
檜原：いろんなトーク番組にいきなりパパパパーンといっぱい出て、大喜利とかコメントとか、いろんな局面で矢面に立たされるのが怖いというか。しかも、いろいろ立て込んでって状態を考えると「優勝はまだしたくないな」みたいな気持ちがあったんです。 
でも今は、ちょっとできそうな気がするというか。大鶴肥満がテレビに出てるのを見ても、どんどん慣れてきてるし。
肥満：ありがたいことにバラエティーにちょくちょく呼んでいただいてることで、もしかしたら気持ちの余裕ができたのかもしれない。今まで番組1個決まるだけで「あー、どうしよう」「何も思いつかん」みたいな状態だったんですけど、今は「じゃ次この日入るから」って言われたら、「はぁ～、まぁ大丈夫か」みたいな感じになってるので。 
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檜原：いざテレビに出て、エゴサーチして反応見てても、いい反応が多くて。「大鶴肥満さん、健気でかわいい」「頑張ってて応援できる」とか、温かいコメントがくるっていうのも何となくわかってきたので。「じゃあ別に怖くないな」って感じはあります。 
肥満：だから、M-1の先のことを考えて「優勝する」って言えるようになったのかもしれないですね。やっぱ大事なのは自信ですから（笑）。 
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<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/275006" target="_blank" rel="noopener noreferrer">【後編】ママタルトの二人を大きく伸ばした「漫才環境の劇的変化」</a>
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フリーランスの編集／ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。2021年4月に『志村けん論』（朝日新聞出版）を出版。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/

鈴木旭

スギゾー

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