故郷が激戦地になった女子大生ら…ウクライナ「戦禍で生きる人々」 | FRIDAYデジタル

故郷が激戦地になった女子大生ら…ウクライナ「戦禍で生きる人々」

フォトルポルタージュ 、 空襲警報下でバーを再開したマスター、 外出禁止令を破っての深夜の音楽会、 軍支援リボンを巻いたホームレス……

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「砲撃によって破壊された自宅前で、家族写真を撮って欲しい」と頼んできた親子。カメラを持って歩いていると、メディアに向かって今の状況を発信したいのか、話しかけてくる人が多かった(5月29日、イルピンにて)
「砲撃によって破壊された自宅前で、家族写真を撮って欲しい」と頼んできた親子。カメラを持って歩いていると、メディアに向かって今の状況を発信したいのか、話しかけてくる人が多かった(5月29日、イルピンにて)

ウクライナを初めて訪れたのは、まだ肌寒さが残る今年5月末だった。隣国ポーランドのワルシャワから15時間、バスに揺られ、首都キーウへ。ロシア軍が侵攻を開始して3ヵ月が過ぎ、車内は避難先から戻る人々で一杯だった。

賑わいが戻りつつあった首都を拠点に、近隣のブチャとイルピンへ。6月からはさらに東へ460㎞ほど進み、ハルキウを訪ねた。激しいミサイル攻撃を受けて多くの住民が避難しており、首都に比べて人通りは半分以下だった。8月末までに100人程を取材し、その表情の険しさに驚かされた。

ウクライナはソ連が崩壊するまで独自の国家を持たなかった。中世以降の歴史をみても、モンゴルやロシア帝国、オーストリア、ナチス・ドイツなど、様々な「帝国」によって国土を蹂躙(じゅうりん)され、長く忍従を強いられてきた。ホームレスまでもがウクライナ軍の勝利を祈願するリボンを手首につけているのを見て、「戦争に負けたら国家がなくなってしまう。逃げはしない。戦ってロシアに勝つんだ」という悲壮な決意を感じた。

戦時下のこの国には様々な”顔”があった。地元住民のために店をいち早く再開させたバーのマスター、外出禁止令下の住宅街でストリートセッションする若者たち……。表情は険しくとも、街角にはささやかな営みが息づいていた。どれだけロシア軍が街を破壊しても、心まで破壊することは出来ない。「人間は戦争よりずっと大きい」。所々に戦禍の爪痕が残る街で私はそうつぶやいた。

「地元のみんなのためにいち早く再開したんだよ」と話す店のマスター。コーヒーやアルコールを提供するカフェバーを経営している(5月24日、ブチャにある店のカウンターにて)
「地元のみんなのためにいち早く再開したんだよ」と話す店のマスター。コーヒーやアルコールを提供するカフェバーを経営している(5月24日、ブチャにある店のカウンターにて)
夜10時以降は外出禁止令が発令される。多くの人々が近隣都市のポルタヴァなどへ避難し、静まり返った夜の住宅街で若者3人組がセッションをしていた(8月12日、ハルキウにて)
夜10時以降は外出禁止令が発令される。多くの人々が近隣都市のポルタヴァなどへ避難し、静まり返った夜の住宅街で若者3人組がセッションをしていた(8月12日、ハルキウにて)
紅茶や桜のジャム、パンや果物などを並べてティータイムを楽しむ婦人は、淀みのないロシア語で話していたが、撮影している途中で感極まって泣き出した(8月12日、ハルキウにて)
紅茶や桜のジャム、パンや果物などを並べてティータイムを楽しむ婦人は、淀みのないロシア語で話していたが、撮影している途中で感極まって泣き出した(8月12日、ハルキウにて)
バーで知り合った地元の青年と喫煙所で談笑していると、ドンバス地方での戦いで怪我をして除隊したのだと話し始めた。頭に残る大きな傷跡を見せてくれた(6月8日、ハルキウにて)
バーで知り合った地元の青年と喫煙所で談笑していると、ドンバス地方での戦いで怪我をして除隊したのだと話し始めた。頭に残る大きな傷跡を見せてくれた(6月8日、ハルキウにて)
ITの研究をするため、都心の大学へ通う18歳の女性。実家はザポリージャ原発の目と鼻の先にあり、「帰れそうにない」と嘆いた(5月25日、キーウ)
ITの研究をするため、都心の大学へ通う18歳の女性。実家はザポリージャ原発の目と鼻の先にあり、「帰れそうにない」と嘆いた(5月25日、キーウ)
ドニプロ川のほとりへ行くと、ほろ酔いで水遊びをする男女3人グループが。あたりには空襲警報が鳴り響いていた(8月7日、キーウにて)
ドニプロ川のほとりへ行くと、ほろ酔いで水遊びをする男女3人グループが。あたりには空襲警報が鳴り響いていた(8月7日、キーウにて)
ご飯をおごってくれ、と話しかけてきたホームレスの男性。煙草を渡すと上機嫌に。手首にはウクライナ軍の勝利を祈願する黄色と青色のリボンが巻かれていた(5月31日、キーウにて)
ご飯をおごってくれ、と話しかけてきたホームレスの男性。煙草を渡すと上機嫌に。手首にはウクライナ軍の勝利を祈願する黄色と青色のリボンが巻かれていた(5月31日、キーウにて)

『FRIDAY』2022年11月25日号より

  • 撮影・文川嶋久人

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