加藤 久美子

<figure id="attachment_275397" aria-describedby="caption-attachment-275397" style="width: 363px" class="wp-caption aligncenter"><a href="#" data-ident_hash="c474413d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/racer.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-275397" class="wp-caption-text">長野県長野市でデュナミスレーシングを経営していた小谷徹社長。逮捕されたのは埼玉県内の老人ホームだっだ（被害者提供）</figcaption></figure>
新車購入のためにお金を払った顧客に対して最長２年以上も納車せず、返金もほとんど行われていなかったことを理由に10月26日に詐欺容疑で逮捕された長野県長野市の自動車販売店元代表取締役社長、小谷徹（おたに・とおる）容疑者（63）。逮捕される10か月前の昨年末、小谷容疑者が地元の長野南警察署に姿を見せていたことが明らかになった。ある被害者がこう明かす。
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「昨年末の12月27日、知人が必要書類を取りに南署（長野南警察署）に行ったときに、取り調べ室みたいな部屋に入る小谷徹社長を見かけていました。その知人は小谷と仕事上で取引があったので、間違いないです。この時期、社長と連絡を取りたくてもなかなか取れなかったのですが、当時は本当の理由はわかりませんでした」
小谷容疑者が逮捕されたのは、昨年末から今年１月にかけて、長野県小諸市の男性から自動車を販売する名目で320万円をだまし取った疑い。ただそれ以外にも「代金を支払ったにもかかわらず車が納車されない」という相談が警察に多数寄せられていた。
複数の被害者への取材でわかったのは、納車にまつわるトラブルだけで100人以上。さらに小谷容疑者に金を貸したまま返ってきていない知人や元従業員なども合わせると被害者は300人を超えるのではないか、という情報もある。被害者の購入車種は、国産車は400～500万円はするトヨタ・アルファードや150万円のスズキスペーシア、輸入車では1500万円はかかるメルセデス・ベンツＧクラスなどが多く、納車にまつわるトラブルだけでも、単純計算で被害総額は４億円を超えるとみられていた。
日産ディーラーの営業マンだった小谷容疑者は日産自動車を退職した1995年に長野県内で「デュナミスレーシング」を創業。新車、中古車の販売から車検、整備、自動車保険にいたるまで車に関する様々なサービスを展開し、当初はチューニングショップとして名が広まり、整備士が５人もいる活気ある店だった。
しかし2011年、小谷容疑者が52歳のときに長野市議会議員選挙に出馬し、大敗したことが転機となった。経営状態が悪化しはじめ、５人いた社員の整備士は給料がまともに支払われないことが増えて辞めていったため、整備やタイヤ交換での利益もほとんど期待できなくなった。さらに2020年12月、小谷容疑者が軽い脳梗塞で倒れたことを機に、傾きかけていた経営状態が急激に悪化し、その経営状態は購入者に対しても影響が及んだ。
小谷容疑者と直接連絡を取り合っていた複数の被害者の話を総合すると、軽い脳梗塞で倒れた時期から「納車されない」「返金されない」などのトラブルが増えはじめ、倒れてから約３カ月が経過した2021年３月の時点で、すでに被害者が数十人規模に膨らんでいたが、小谷容疑者は「コロナと半導体不足」を理由に、納車を延期していたという。
その一方で納車を待つ購入者や、車検や整備などでつながりができた客に、毎日のように「新車買う人紹介してください！安くしますよ！」という営業LINEを送っていた。経営状態の悪化に歯止めをかけようと金策に走っていたと思われる。
<div data-friday-nextpage-lead="お金を借りるために顧客に送っていた文書とは……"></div>
<figure id="attachment_275313" aria-describedby="caption-attachment-275313" style="width: 365px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="aaaeb827"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/68e29903825bb8529a1551b460170339.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-275313" class="wp-caption-text">経営状態が悪化してしばらくたった2021年ごろ、小谷容疑者が顧客に送っていた文書。お金を借りるために銀行への振り込みを催促している</figcaption></figure>
ただ、2021年12月28日を境に小谷容疑者から毎日のように届いていた「お願いLINE」がぱったりと途絶えた。納車を待つ人が連絡を試みても、「既読」すらつかなくなった。被害者のひとりはこう明かしている。
「毎日のように届いていた、メッセージがホントにしつこくてうんざりしていましたが、年末年始は既読もつかず、所在不明でお店に行ってみたらモヌケの殻でしたね」
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小谷容疑者が長野南署で目撃されていたのが2021年12月27日。つまり、小谷容疑者から顧客に対して送られていたLINEがぱたっと途絶える前日のことだ。冒頭でコメントをした人物とは別の被害者がこう明かす。
「社長（小谷容疑者）はもっとも恐れていた闇金業者からの取り立てにあったんです。暴力的な行為を受けたようですが、脳梗塞の影響で体が不自由な社長は対抗できないので、恐怖におののき、警察に『これまでのことを全部話すから、俺を保護してくれ、助けてくれと』と泣きついたんですよ。
自宅に戻っても、再び闇金業者が自宅に来るおそれがあるので、自宅にも帰れなくなった。さらに頼りにしたい親戚や知人からも断られてしまったようで、絶望した社長は、逃亡の道を選ぶしかなかったのでしょう」
昨年12月28日以降に小谷容疑者は行方をくらましたため、2022年以降に発覚した被害者は数人と見られるが、何らかの形で監視下に置いていれば、少なくとも今年発覚した数人の被害者は出さずに済んだ可能性もあったのではないか。一方で、この「泣きつき」の一件が詐欺罪で逮捕に至る転機になった、と考えて間違いなさそうだ。
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小谷容疑者は本当に長野南署を訪れたのか。もし、闇業者からの取り立てを恐れて警察に「泣きついた」ことが本当だとしたら、小谷容疑者から話を聞きながら、なぜ監視下に置かなかったのか。同署の担当者はこう明かす。
「捜査情報に関わることなので、（小谷容疑者が長野南署を訪問した）事実があったかなかったかも含めて、お答えできない」
信濃毎日新聞によると、逮捕されたとき、小谷容疑者は長野ではなく、埼玉県内の老人ホームにいた。生活保護を受けながら、他人と特に会話することなくひっそりと暮らしていたという。
今回小谷容疑者が逮捕されたとしても、被害者に対する弁償が行われるかどうかの見通しはいまだ立っていないため、被害者の怒りはさらに増長しているだろう。逮捕後の捜査で警察の意地を見たい、と思うのは決して私だけではないはずだ。

加藤久美子

新車購入の巨額詐欺の疑いで10月26日に逮捕された、長野市内の元自動車販売店社長の小谷徹容疑者が事件発覚前の昨年12月末、警察で目撃されていたことがわかった。姿を消していた小谷容疑者が警察にいた理由と

納車詐欺容疑者が事件発覚前に目撃された「警察への泣きつき」

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