1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』（太田出版）など。

田幸 和歌子

<h3>重い腎臓病を患うパートナーのために毎日作る制限食を投稿</h3>
女優・沢田亜矢子さんとの泥沼離婚騒動を経て離婚、2002年にリングネーム「ゴージャス松野」としてプロレスデビューした後、うつ病や心肺停止などを経験するも、さまざまな苦難を乗り越え、プロレスラーとして復帰。さらに肉体と健康美を競う「モデルジャパン日本大会」では、2019年に4位入賞、2021年は準優勝を果たしたゴージャス松野さん。
2021年1月にはFRIDAYデジタルの記事でそうした波乱万丈の人生を語ってくれた彼が今、Twitterで日々の食事を投稿し続けている。理由は、重い腎臓病を患うパートナーで演歌歌手の田代純子さんの制限食を毎日作っているため。いったいどういう経緯なのか。ゴージャス松野さんに改めてお話を伺った。
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「ちょうどFRIDAYデジタルさんの取材を受けた一昨年末くらいから、実は彼女（田代純子さん）の体に、だるさや微熱などの異変が出ていたんです。 
でも、コロナ真っ盛りですぐ病院に行けず、年明けになって発熱外来のある病院に行き、風邪かなと言われました。それでも、その後も1カ月ぐらい体調が悪く、いろいろな病院で検査を受けても原因はわからず、総合病院を紹介してもらい、昨年1月下旬に検査を受けたんです。 
ところが、結果が出る2日ほど前、昨年1月31日に私がプロレスで東京に行っている間に彼女の病状が急変し、自分で救急車を呼んで入院となりました。後で聞いた話では、処置が1日遅れたり彼女が我慢してしまったりしていたら、手遅れになっていたそうです」
実はFRIDAYデジタルの記事公開後まもなく、大変な事態が起こっていたのだった。
<figure id="attachment_275494" aria-describedby="caption-attachment-275494" style="width: 1477px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7a59d072"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/a8f156144b7004ba02f8a6091d8c22f8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-275494" class="wp-caption-text">ゴージャス松野さん（写真左）と重い腎臓病を患うパートナーで演歌歌手の田代純子さん</figcaption></figure>
<h3>腎臓機能が「ステージ5」…</h3>
さらに入院後に出た検査結果では、難病指定の「顕微鏡的多発血管炎」というANCA関連の血管炎と、それが原因で腎臓の数値が急激に短期間で下がってしまう「急速進行性糸球体腎炎」と判明。
「普通の人が60〜90ポイントくらいの腎臓機能が、10ポイントくらいまで下がり、ステージ5の段階にあることがわかって、まず血管の炎症を抑える治療と腎機能を回復させる治療の両方をやることになりました。 
大量のステロイド点滴を4日間と錠剤の服用を3日間という1クール1週間の治療で、非常に副作用の強い薬なので、通常は3クールくらいまでしかやらないようですが、効果が出ず、4クール分やりました。 
しかし、やはり効果は出ず、体重が増えたり眠れなくなったり、薬による糖尿病も出たりと、大変な状況でした。実はそのあたりで回復できず亡くなる方もいるらしいと後で知ったんです」
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結局、炎症も腎機能も回復しなかったため、もう少し進んだ検査と治療を受けるために、昨年3月6日に大学病院に転院。首から一時透析をし、ANCAの抗体を取り出す治療や、腎臓の移植にも保険適用になった悪性リンパ腫の薬・リツキサンも使用したことなどから、ようやく病状が落ち着いてきて、昨年4月に退院となった。
<figure id="attachment_275495" aria-describedby="caption-attachment-275495" style="width: 1568px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f92aefe0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/6cf1773733c0ccdd4cd5115dfb8d7fe4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-275495" class="wp-caption-text">11月23日には「ベストボディ・ジャパン2022」にも出場する。写真は、7月17日に行われた仙台大会</figcaption></figure>
<a href="#" data-ident_hash="99412aa6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/62ab6935530dc2fba950aa52e51dec24.jpg" alt=""></a>
<h3>ドナーを決意！「迷いはありませんでした」</h3>
しかし、その後も腸炎や尿路感染になるなど、夏頃まで病院を往復する生活は続き、秋頃にようやく体力がついてきた後も、腎機能は戻らず、ステージ4と5を行ったり来たりする状態。昨年末には腎移植の話が出たという。
「主治医の先生から、ゆくゆくは腎臓の代替療法が必要なので、その準備もしておいてくださいと言われました。 
しかも、もってあと1年くらいと言うので、正直本当にショックでしたが、選択肢があるならということで、すぐに移植をしようということになり、ドナーを決意しました。 
腎臓は1個とっても7割くらいの機能は保てるそうですが、私はプロレスラーなので、腎臓への外傷を負うなどで腎臓をとることになると、今度は私が透析せざるを得なくなるリスクが高まります。しかし、ドナーになることに迷いはありませんでした」
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そして、今年8月。移植手術の準備で田代さんが入院し、ドナーの松野さんも5日後くらいに入院するというタイミングで、突然病院から電話が来たという。
「主治医の先生が『実は入院して血液検査したら』と切り出したので、何かマズイ結果で手術できなくなったのかなと思い、ドキッとしたんですが、『入院後腎臓の数値が若干良くなり安定した状態なので、手術を延期することも可能』というんです。
覚悟も準備もしていたので、最初は困惑して意味がわからず、彼女と話し合ってから返事をすると言って電話を切りました。 
しかし、翌朝、また先生から電話があり、学内で移植検討会をした際、腎臓内科の先生から『今はステージ4なので、早急に腎臓の移植をしなければならない数値ではない』という話がありました。
それに、全身麻酔を使う手術でリスクも0じゃないし、移植手術が成功しても、例えば拒絶反応が起きてしまったら、今度はすぐ透析になるし、免疫抑制剤を使用するので、感染や合併症のリスクも出てくる。そうしたリスクを考えたら、もっとギリギリまで行って、他に選択肢がなくなった段階で手術するのでも良いのではないか、というんです」 
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<figure id="attachment_275497" aria-describedby="caption-attachment-275497" style="width: 1454px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="08bb0c6c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/9eb1f491be1f4aaf90911c0f0230d016.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-275497" class="wp-caption-text">Twitterで日々投稿し続けている田代純子さんために作る制限食</figcaption></figure>
<figure id="attachment_275498" aria-describedby="caption-attachment-275498" style="width: 1431px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="06fcc715"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/4e13f55edfe94f5b24aae969370be888.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-275498" class="wp-caption-text">日々投稿される料理は、彩り豊かで品数が多く、旅館の朝ごはんのようにも見え、「制限食」のイメージからほど遠い</figcaption></figure>
<h3>松野さんが作る「制限食」の効果が…</h3>
結局、手術はいったん来年4月に延期し、来年1月ぐらいの段階で経過を診て話をすることになったという。
腎機能が改善した理由の一つには、おそらく松野さんの「制限食」の効果もあったろう。
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「食事療法を始めたのは、昨年4月末の退院時からです。 
栄養士さんから2時間くらいの栄養指導を受けまして。食事を作ることは全く面倒ではないですが、制限食は初めてだったので、最初は怖かったですね。今思うと、最初はガチガチに考えていて、不味いモノを作っていたんじゃないかな（笑）。 
病院からもらった資料やネットの情報を参考に作っていましたが、肉ひとつとっても、種類によって脂の量もタンパク質の量も違う。1番きつかったのは、どこにでもカリウムや塩分が入っていることでした。例えば牛乳コップ一杯にも、カリウムが315mg程度、塩分は0.2g程度入っていたり、卵1個でもカリウム69mg程度、塩分が0.2gぐらい入っていたりしますから」
日々投稿される料理は、彩り豊かで品数が多く、旅館の朝ごはんのようにも見え、「制限食」のイメージからほど遠い。
「幸い特に食べちゃいけない食品はなく、量の問題なので、基本的に味付けを薄くしながら、ちょっとだけ辛子明太子を入れたり、品数を多くしたりして、目で満足させることは考えています。基本的に朝夕は全部ご飯で、昼は食パンと牛乳。慣れれば案外大変ではないですよ」 
とはいえ、外出時に自分だけラーメンや焼き肉を食べたくなるようなこともあるのでは？
「もともと自分もボディメイクをやっているので、食事はコントロールしていましたし、年に何回かはラーメンも食べますが、1人で食べるのは彼女に申し訳ないので。それに、彼女に食べたいモノをいろいろ我慢させているのが可哀想で、申し訳ない思いなんです。 
医師には、たまには少しハメを外しても良いと言われるんですが、ハメの外し方がよくわからなくて。ハメを外したことで腎臓の機能が落ちてしまうと、普通の人はまた食事を戻せば回復しますが、彼女の場合はすでに底辺の状態なので、回復しない恐怖感もありますから」 
<figure id="attachment_275499" aria-describedby="caption-attachment-275499" style="width: 1507px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="099c3747"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/4d9574565cf2cc94bf099c8aa0dcac3b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-275499" class="wp-caption-text">「僕の料理についても、医師の前で『定規ではかったようなものばかり食わされる』と毒づいていましたが、内心ではきっとありがとうと思ってくれていると思います」と松野さん</figcaption></figure>
<a href="#" data-ident_hash="1687184c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/830b93d65c85e9c2b6606e1c4606e1d5.jpg" alt=""></a>
<h3>「あのときはあれで精一杯だったけど、今も精一杯」</h3>
愛ですね、と軽はずみに返すと、松野さんは言った。
「いや、愛なんて言葉で片付かない。選択肢がない病気ならともかく、まだ努力できることがある、選択肢があるわけですよ。 
20年一緒にやってきたパートナーが困っているときに手を差し伸べるのは当然のこと。もちろんボディビルもプロレスも、体が資本ですから、移植手術をするためにプロレスを休業する必要もある。でも、極論で、仕事と相手の命の方を天秤にかけたら、やっぱり仕事は軽くなっちゃいますから。 
自分を犠牲にしている思い？　ないですね。むしろ私は僧侶の資格も持っているので、仏様に与えていただいた、ありがたい修行の試練の道だと思っています。あんまりそういう話をすると、引かれちゃいそうですけど（笑）」
現在、松野さんはプロレスの大会にも復帰。11月23日には「ベストボディ・ジャパン2022」にも出場する。また、田代さんも年末に向け、歌手活動に復帰予定だ。
それにしても波乱万丈の人生だが、いまだに元妻・沢田亜矢子さんとの離婚騒動のイメージを持っている人もいるだろう。ゲスな質問だとは思いつつも、かつての結婚と今のパートナーとの暮らしの何が違うのかと聞くと、松野さんは言った。
「あのときはあれで精一杯だったけど、今も精一杯。 
ただ、関わりの重さも、年月も全く違いますから。それに、やっぱり人間ギブアンドテイクだと思うんですよ。自分が心肺停止になったときも、うつで苦しんでいたときも、彼女は僕に手を差し伸べてくれた。だから、今は僕が手を差し伸べているだけで。出会ったばかりの頃にはこんな関係性になるとは想像もしませんでしたけどね。彼女はいつも元気で、病気なんかで倒れる人間じゃないと思っていたから（笑）。 
僕はずっと面倒を見てもらうばかりだったから、そんなときに見捨てないで、ましてここまで一緒に生きてくれてることが何よりありがたいんです。彼女は僕より若干年上で、たまに頭にくることもあるけど、可愛いところがあるんですよ。僕の料理についても、医師の前で『定規ではかったようなものばかり食わされる』と毒づいていましたが、内心ではきっとありがとうと思ってくれていると思います」
<a href="#" data-ident_hash="2c821863"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/IMG_3777.jpg" alt=""></a>

1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』（太田出版）、『KinKi Kids　おわりなき道』『Hey! Say! JUMP　9つのトビラが開くとき』（ともにアールズ出版）など。

田幸和歌子

女優・沢田亜矢子さんとの泥沼離婚騒動を経て離婚、プロレスデビューした後も、うつ病や心肺停止など様々な苦難を乗り越え、プロレスラーとして復帰したゴージャス松野さんが、SNSで日々の食事を投稿し続けている

ドナーも決意…尽くすに徹するゴージャス松野「第二の人生」

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