1979年、静岡県生まれ。ローカル紙や複数の週刊誌で記者を務める。政治、経済事件など幅広い分野の記事を執筆。情報提供は naoyukimiyashita@pm.me まで

宮下 直之

<figure id="attachment_277440" aria-describedby="caption-attachment-277440" style="width: 2806px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="eae821bb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/2022112511918.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-277440" class="wp-caption-text">予算委員会で答弁する秋葉氏。「丁寧に説明する」と言っているが、本誌の取材にはまったく答えようとしない（撮影：共同通信社）</figcaption></figure>
<p>岸田文雄首相も、マスクの下で苦笑いするしかなかったのだろう。11月25日の衆院予算委員会。秋葉賢也復興相（60）が昨年の衆院選で、自身の秘書を車上運動員（いわゆる「うぐいす」）として活動させていたことへの見解を問われ、次のように答弁した。</p>
<p><span class="strongInContent">「少なくとも、私の記憶するかぎり、自分の秘書を車上運動員として使ったことは、いままで一度もなかったと思います」</span></p>
<p>当選9回、国会議員として29年目の岸田氏からみても、選挙期間中に、秘書を車上運動員に従事させることは異例だというのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「昨年の衆院選で、<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/276479">秋葉氏が秘書2人に金銭を支払っていたことを『運動員買収』だと指摘した『FRIDAYデジタル』の報道</a>に対して、秋葉氏は11月25日の記者会見で反論しています。その際に明かしたのが、秘書2人への金銭は選挙運動の対価ではなく、公職選挙法で認められた車上運動員としての対価だったというものでした。秘書が車上運動員として活動したという説明は、選挙運動の実務を知っている人間からすれば不自然ではあったが、法令上は確かに認められる内容でもありました」（全国紙政治部記者）</span></p>
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<p>秋葉氏は同じ会見で、本誌の当該記事に関して<span class="strongInContent">「事実誤認に基づき記載されている部分もかなりございます」</span>とも指摘している。運動員買収疑惑を全面的に否定したかたちだが、本誌は、秋葉氏の説明と矛盾する新たな証言を得ることができた。その正否を問う前に、これまでの秋葉発言にちりばめられた〝嘘〟を指摘する。</p>
<h3>”秋葉４号”までいた</h3>
<p><span class="strongInContent">「11月25日の予算委員会では、運動員買収疑惑のほかにも、秋葉氏が代表の政党支部が旧統一教会の友好団体に会費を支払っていたことや、秋葉氏の〝影武者〟が選挙運動を行っていたという疑惑も取りあげられました」（同前）</span></p>
<p>影武者疑惑は、昨年の衆院選で秋葉氏の次男が、秋葉氏の名前入りのたすきをかけて街頭活動を行っていたことが、公選法に抵触するのではないかというもの。野党議員が示した写真の男性について、秋葉氏は次男であることを認めたうえで「（影武者は）ほかには1人もいないと、断言していいと思います」と語った。ところが、秋葉氏の元支援者はこう語るのだ。</p>
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<p><span class="strongInContent">「秋葉さんが選挙で影武者を使うのは、彼が県議だった頃からよく知られた話です。県議時代の影武者は実の弟だった。その後、弟さんとは不仲になったのか、衆院議員に初当選した2005年前後から、弟さんが秋葉さんの選挙を手伝う姿を見ることはなくなりました」</span></p>
<p>実弟の協力が得られなくなった秋葉氏は、新たな手法を考えだしたという。</p>
<p><span class="strongInContent">「後援会関係者のなかから、秋葉氏と同じように眼鏡をかけている人に〝秋葉2号〟に扮するよう求めたのです。秋葉2号に、選挙カーの助手席から手を振らせて有権者にアピールしていた。秋葉さんは身長180センチ近くありますが、選挙カーに乗りこんでしまえば外から背の高さはわからない。そのため極端に太っていなければ2号になる資格があるということだった。秋葉2号が選挙カーに乗るのは、秋葉さん本人が屋内で個人演説会を行っていたり、自宅で休憩していたりするときです。私の記憶では、少なくとも秋葉4号まで存在していた」（同前）</span></p>
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<div data-friday-nextpage-lead="まだまだ”嘘”が…"></div>
<h3>秋葉氏が国会でついた”嘘”</h3>
<p>続く秋葉氏の〝嘘〟は、前述した11月25日の会見中の発言にある。秋葉氏は会見で、運動員買収疑惑に関する本誌の取材過程で、秘書に対する取材手法に問題があったと指摘した。秋葉氏の発言をそのまま引用する。</p>
<p><span class="strongInContent">〈私の秘書の活動内容については、先週、夜間に急な電話で取材を受けたことから、選挙期間前に行っていた政治活動や、選挙期間中の車上運動員報酬を受けていない日に行っていた選挙活動と、報酬を受けて車上運動員として活動をしていたことを混同してしまい、不正確な回答を秘書の方で行ってしまったようです〉</span></p>
<p>果たしてそうか。秋葉氏の公設第1秘書であるN氏と、公設第2秘書のI氏に取材したのは筆者である。その過程を「丁寧に説明」すれば、以下のようになる。</p>
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<p>まず筆者は、仙台市内にある秋葉事務所前の路上で、秘書たちが外出先から戻るのを待っていた。乗用車で最初に戻ってきたのはI秘書で、筆者が名刺を差しだして自己紹介すると、I秘書は自身の名刺をとりに車内に戻り、あらためてあいさつを交わした。その際、筆者が「『FRIDAY』で秋葉さんの取材を何度かさせてもらっている」と伝えると、I秘書は<span class="strongInContent">「ええ、あなたさまでしたか、いろいろ」</span>と言って笑い、和やかな雰囲気でやりとりが始まった。</p>
<p>また、I秘書は当初、筆者に対して<span class="strongInContent">「人によって言うことが違うとあれなので、一応、マスコミ対応というかですね、Nが（広報）対応しているんです。なので、私の方から申しあげることは、ちょっとなにもない」</span>と言った。それを受けて筆者が「昨年の衆院選に関する事実関係だけ確認できれば」と求めると、I秘書が応じて<span class="strongInContent">「衆院選の12日間にわたって選挙運動をしていた」</span>という趣旨の発言が語られたのである。</p>
<h3>本当に”動転”していたのか？</h3>
<p>こうしたやりとりのあと、広報を担当しているというN秘書への取材も求めると、I秘書がN秘書に連絡して、その日の予定を確認した。すると、I秘書は<span class="strongInContent">「きょうは（事務所に）戻らないということでしたので、（N秘書から）『なにかありましたら連絡ください』ということでした」</span>といって、N秘書の携帯電話の番号が書かれた付箋を渡されたのだ。</p>
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<p>こうして筆者は、I秘書とのやりとりを終えてから10分以内にN秘書に電話している。つまりN秘書は、筆者からの電話がかかってくることを予想できた。また、I秘書から、電話の趣旨についてもある程度は聞きおよんでいたはずである。したがって秋葉氏の言う「夜間に急な電話で取材を受けた」から、〝動転〟して実態と異なる内容を伝えてしまったという説明こそ、「事実誤認」だと考えられるのである。</p>
<p>こうまでしてごまかそうとした運動員買収疑惑について、秋葉氏は前述の予算委員会で注目すべき発言をしている。そのまま引用する。</p>
<p><span class="strongInContent">〈（車上運動員の報酬額について）N秘書には12万円、そしてI秘書に8万円ということが示されております。（中略）まあ、具体的に言えば、N秘書は車上運動員として8日間、そしてI秘書は車上運動員として6日間、活動させていただいておりまして、まあ、適法、法に則って、しっかりとした活動をさせていただいているというふうに認識しております〉</span></p>
<p>12日間の選挙期間のうち、秘書2人が車上運動員として活動した日数をそれぞれ明言したのだ。この発言を踏まえて、本誌は、昨年の衆院選で秋葉事務所の車上運動員を務めたAさんから話を聞いた。一連のやりとりは、Aさんの自宅のインターホン越しに行われた。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="うぐいす嬢が”爆弾証言”を…"></div>
<figure id="attachment_277504" aria-describedby="caption-attachment-277504" style="width: 3879px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e0a5d287"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/2022112512184.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-277504" class="wp-caption-text">国会で窮地に立たされている秋葉氏</figcaption></figure>
<h3>秘書たちが選挙カーに乗っていたことは「ない」</h3>
<p>――昨年の衆院選で、Aさんは車上運動員、つまり”うぐいす嬢”として活動しましたか。</p>
<p><span class="strongInContent">「ええ、おそらく、●日間程度だったと思います」</span></p>
<p>――Aさんが選挙カーに乗っているとき、秋葉事務所のNさんやIさんは一緒でしたか。</p>
<p><span class="strongInContent">「いえ、秘書さんは車で、演説会だったり、会場の準備だったりに行っていたので、いなかったです」</span></p>
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<p>ここで、Aさんが車上運動員として活動した日数を伏せたのは、取材源の特定を避けるためである。活動日数に関する検証は後段で行う。</p>
<p>またN、I両氏の名前を挙げた本誌の質問に対して、Aさんは彼らのことを「秘書さん」と自ら語っていたことを指摘しておく。この質問をする前の段階でも、本誌はN、I両氏のことを秘書だとは説明していない。つまり、AさんはN、I両氏のことをよく認識しており、名前を聞いただけで、それが誰のことかわかったのだ。したがって本誌の以下の質問に対しても、別人と勘違いして受け答えをしている可能性はない。Aさんとの一問一答を続ける。</p>
<p>――Nさんたちは、あるときは一緒に選挙カーに乗っていたり、別のときは乗っていなかったりということだったんですか。</p>
<p><span class="strongInContent">「基本、秘書さんは（選挙カーとは）別でした。自分の車で動いていたので」</span></p>
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<p>――たとえばNさんたちが選挙カーを先導して、一緒に行動することは？</p>
<p><span class="strongInContent">「それは記憶にないですね。基本は、選挙カーには運転手さんがいたので（秘書が帯同する必要はない）。そういうことはありませんでした」</span></p>
<p>――そうすると、Nさんたちが（選挙カーに）同乗したことも一度もなかった？</p>
<p><span class="strongInContent">「私がいた日はありませんでした」</span></p>
<p>――Nさんたちが投票を呼びかけるアナウンスをする姿も見たことはないですか。</p>
<p><span class="strongInContent">「そうですね」</span></p>
<p>――NさんやIさんは、Aさんたち車上運動員とは別に、個人演説会や街頭演説会の会場設営やその運営をしていた？</p>
<p><span class="strongInContent">「はい、そうです」</span></p>
<p>――Aさんが車上運動員として活動した●日間は、それぞれ何時から何時まで従事していたのですか。</p>
<p><span class="strongInContent">「朝8時から夜8時までです」</span></p>
<p>――●日間、いずれもそうしたスケジュールだった？</p>
<p><span class="strongInContent">「はい、そうです」</span></p>
<p>――Aさんが車上運動員として活動した●日間、NさんとIさんは、1日も選挙カーに同乗したことはなかったということですか。</p>
<p><span class="strongInContent">「ないです。自分たちの車でずっと動いていました」</span></p>
<h3>もはや更迭以外ない</h3>
<p>ちなみに選挙カーは、候補者1人につき1台のみ使用できる。<span class="strongInContent">「そのことは公選法141条1項の条文に明記されています」（宮城県選挙管理委員会事務局）。</span></p>
<p>ここまでAさんの活動日数について伏せてきたが、選挙運動費用収支報告書やAさんへの取材などから、昨年の衆院選で秋葉事務所が報酬を支払った車上運動員は、全員が少なくとも6日間以上活動したと推定できる。</p>
<p>そこでAさんの証言にしたがって、N秘書たちが6日間、車上運動員の活動をしていなかったとする。その場合、仮にN秘書たちに車上運動員としての活動実態があったとしても、選挙期間が12日間であることから、N秘書たちが車上運動員を務めたのは最大でも6日間ということになる。</p>
<p>ここで、先ほどの秋葉氏の予算委員会での発言を思いだしてほしい。秋葉氏によれば、N秘書が車上運動員として活動した日数は8日間ということだった。これはAさんの証言と矛盾している。本誌の「選挙運動員買収報道」に対する、秋葉氏の反論には明確な〝嘘〟が含まれているのである。</p>
<p>〝秋葉2号〟や、秘書が車上運動員として活動した日数の矛盾について、秋葉事務所に書面で見解を求めたが、期限までに回答はなかった。もはや秋葉氏に「丁寧な説明」など、できないのではないだろうか。</p>


宮下直之（ノンフィクションライター）

共同通信社

予算委員会で答弁する秋葉氏。「丁寧に説明する」と言っているが、本誌の取材にはまったく答えようとしない（撮影：共同通信社） 岸田文雄首相も、マスクの下で苦笑いするしかなかったのだろう。11月25日の衆院

秋葉復興相のうぐいす嬢が証言「秘書は選挙カーに乗っていない」

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