『天才てれびくん』で脚光を浴びた子役が長いトンネルの後に『ちむどんどん』で再注目されたワケ
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』で黒島結菜(25)演じるヒロインに想いを寄せる幼馴染みを熱演。その透明感あふれる演技で世の女性を虜にした俳優の前田公輝(ごうき)(31)。彼が芸能界に入るきっかけを作ったのは母親だった。
「情操教育の一環で、兄妹と一緒にホリプロの研修生になりました。6歳の僕は、習い事の一つだと思っていました(笑)」
「永谷園」のCMに出演を果たすなど子役としてすぐに売れ、学校の友達の間でも人気者となった。当時、「超前向きで調子に乗っていた」という前田は、小学6年生の時には『天才てれびくんMAX』のてれび戦士として脚光を浴びたが、その後は辛酸をなめた。
「大学生になった頃から本当に仕事がなくなって苦しみました。役者として成長するために社会を知ろうと、色んな方と飲みに行って見聞を広げようとしましたね。そのせいでいつも金欠(笑)。
たまに行く会食のために普段の食費を削りまくりました。あまりにお腹が減ってどうしようもない時は、枕をお腹に当ててうつ伏せで寝て、満腹感を得たり……。その時の繋がりやあがきは今も仕事に活きています。無我夢中で暗い闇を突き進んだあの日々があったから、僕は変わることができた」
演技が評価され、徐々に仕事が増えていったが、当時はその賞賛を素直に受け入れられなかったという。
「犯罪者の役で評価されたんです。子供の頃から正義のヒーローに憧れていたので、当時は複雑な気持ちでした(笑)。でも、凝り性なので、目の前のものに真剣に向き合った。正義に憧れるからこそ、その対極にある犯罪者の心理を深く考えるようになったんです。
“悪”を演じるには不可欠だろうと考え、数年前からアクションの鍛錬も積んでいます。僕に悪役をやらせるならどんな犯罪をさせたいか、裏で監督さんたちが話し合っていたと聞いて、ようやく悪役が板についたなと思えた。悪役なら誰にも負けません」
そして芸歴25年目の今年、10代の頃から願っていた朝ドラへの出演を果たす。悪役とは真逆の好青年役だった。
「10代の頃は、履歴書を真っ黒になるまで書き込んでNHKに送り続けていました。印象に残りたくて、奇抜なことを書いたりしたこともありました。でも、目に止めてもらえず、一度は朝ドラへの気持ちに蓋をした。その夢が今年、思いがけず叶って嬉しかったです。悪役を自分のものにしたことで、反対の役の演技もできるようになっていた。やってきたことが身になっているのを実感しました」
明るい役のイメージと元来の人柄から、最近はバラエティ番組の出演も増えた。
「悪役とのギャップを狙って挑んだ朝ドラで評価してもらって、色んなことに挑戦する自信がついた。長いトンネルを抜けた先で、何をするのか、また何をしないのか……。選べる難しさを楽しんで、成長していきます」
子供の頃の前向きさは今も健在。期待に胸を打ち鳴らし、新境地を切り拓く。
『FRIDAY』2022年12月23日号より
- PHOTO:足立百合