今こそ12球団から16球団へ拡張を…プロ野球が大リーグと比べて、ワクワクしない「これだけの理由」 | FRIDAYデジタル

今こそ12球団から16球団へ拡張を…プロ野球が大リーグと比べて、ワクワクしない「これだけの理由」

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村上・佐々木選手の活躍、WBCの開催…なのに、低下する日本のプロ野球の存在感 

ヤクルトの村上宗隆選手による史上最年少の三冠王、ロッテの佐々木朗希投手の完全試合に続き、2023年3月に迫ったWBCの開催や北海道ボールパークの誕生で盛り上がるプロ野球だが、実は、観客動員数、興行収入、メディアへの露出度など、どれをとっても頭打ちだ。コロナ禍であったことを勘案しても、地上波からの試合中継が殆どなくなるなか、まるで日本の国力低下と寄り添うかのように、なだらかにプロ野球の存在感が低下してきているのだ。

既にプラチナチケット化しているWBCの日本ラウンドも、プロ野球人気というよりは、米国大リーグ(MLB)で活躍する大谷翔平選手やダルビッシュ有選手の凱旋出場によるところが大だ。

彼らに続き、来シーズンからは、ソフトバンクの千賀滉大選手がニューヨーク・メッツに、オリックスの吉田正尚選手がボストン・レッドソックスに所属することになり、大谷選手やダルビッシュ選手の活躍などとあわせ、日本においても益々大リーグの報道が増えそうだ。

村上選手の活躍により、「村神様」は2022年のユーキャン新語・流行語大賞年間大賞を受賞したが…(写真:アフロ)
村上選手の活躍により、「村神様」は2022年のユーキャン新語・流行語大賞年間大賞を受賞したが…(写真:アフロ)

大リーグの収益はコロナ禍前を上回る 

ヤクルトの村上選手もいずれは大リーグで活躍したいという。プロ野球のトップ選手を次々と惹きつける大リーグとプロ野球は何がそんなに違うのだろうか。

まずはその稼ぐ力の差だ。コロナ前の2019年のMLB機構全体の収益は、米国フォーブスによると、107億ドル(1兆1770億円)に達している。一方、日本のプロ野球全体の収益は、コロナ前でも2000億円前後(マリブジャパン推計)であり、大リーグはプロ野球の約6倍の収益を上げていることになる。MLB機構によると、延長戦のタイブレーク導入、ポストシーズン進出チームの拡大もあり、今季の大リーグの収益は、コロナ禍前を上回る110億ドル(約1兆6500億円)に近づいたという。

豊富な資金により日本を含む世界中からトップ選手を高額年俸で呼び込み、ワクワクする、質の高い試合を見せることで、更に観客や視聴者などを増やすという好循環が出来上がっているのだ。そしてこの好循環を生み出す元となっているのが球団数の拡大だ。

WBCの日本ラウンドも、プロ野球人気というよりは、米国大リーグ(MLB)で活躍する大谷翔平選手やダルビッシュ有選手の凱旋出場によるところが大だ(写真:アフロ)
WBCの日本ラウンドも、プロ野球人気というよりは、米国大リーグ(MLB)で活躍する大谷翔平選手やダルビッシュ有選手の凱旋出場によるところが大だ(写真:アフロ)

大リーグは30球団から32球団へ拡大か 

大リーグでは、長らくアメリカン・リーグ、ナショナル・リーグ合わせて16球団の時代が続いた。拡張化は1961年に始まり、20球団→24球団→26球団→28球団と増えていき、1998年には、アリゾナとタンパベイに新球団が誕生し現在の30球団となった。つまり、拡大化で誕生した球団は14球団もあり、いまや大リーグの半数近くを占めているのだ。

球団数の拡大により、本拠地が北米に広がり、選手をはじめ新たな雇用が生まれ、地元での関連ビジネスも生まれる。プレーオフがより充実し、対戦カードも多様化してファンを一層惹きつけることになる。

拡張は更に続きそうだ。MLB機構のコミッショナーであるロブ・マンフレッド氏は、2015年に就任以来「近い将来2球団を新規増設する」との発言が度々報じられている。大リーグチームがない、ラスベガス、ナッシュビル、ポートランド、モントリオールといった都市で既存球団からの移転も含め、本拠地誘致運動が起きているのだ。

プロ野球も12球団から16球団に拡大を 

ひるがえって、日本のプロ野球はどうだろうか。対戦相手は、お馴染みの12球団のなかでの試合だ。交流戦などはあるものの、毎度毎度の巨人VSヤクルトに、西武VSオリックスでは、大谷選手やダルビッシュ選手の活躍により、30球団を有するMLBの豊富な対戦カードを知ってしまった野球ファンには、新鮮味が薄れ物足りなかったりする。

プロ野球も球団数を拡張することはできないのだろうか。王貞治 福岡ソフトバンクホークス会長が提言したように、例えば、新潟、静岡、四国、沖縄に4球団新設して「2リーグ16球団」制とすれば、対戦カードも増え、新鮮味なく廃止論も根強くあるCS(クライマックス・シリーズ)も盛り上がるはずだ。いまある12球団の本拠地がない地域をフランチャイズとすることで、新たなファンを呼び込み、観客数の増加や雇用の増加などにより、プロ野球だけでなく、地域の活性化にも貢献しよう。しかしながら、2024年シーズンから2軍(ファームリーグ)に静岡など新たに2つの球団を加える構想があるものの、既得権益も絡み、大きな進展がないままだ。

その他、既存のセ・パ両リーグは残したまま、独立リーグの四国アイランドリーグplus、BCリーグ、九州アジアリーグなどを再編し、3リーグ制に移行する形も考えられよう。また、サッカーの天皇杯のように、プロ野球と独立リーグ、社会人や大学の優勝チームなどが参加するトーナメントの仕組みを設け、日本シリーズ王者とカップ戦を行うのも楽しそうだ。

プロ野球でもボールパーク化は進むものの

起死回生策としての球団拡張の他にも、データ解析ツールによるチームや選手の様々な成績などのデータの公表や活用、ネット配信の強化、外部経営人材の登用、チケット販売におけるダイナミックプライシングやキャッシュレス化の導入、シーズンチケットの販売拡大、ファンクラブの充実、有料放送の会員拡大、富裕層を呼び込むVIPチケットの導入、放映権やライセンスの管理など、プロ野球の魅力向上のためにやるべきことは多くありそうだ。

もっとも日本でもボールパーク構想が広がっているのはいい流れだ。ショッピングモールやキッズパーク併設などプラスαの集客によって、家族連れなどにも継続的に球場に足を運んでもらうことができる。2023年3月に開業する日本ハムの新球場「エスコン フィールド HOKKAIDO」は、収容人数35,000人で開閉式屋根付きの天然芝フィールドという最先端のスタジアムだ。レフト側ポール際の5階建ての複合型施設「TOWER11(タワー・イレブン)」には、温泉・混浴サウナ・ホテルなどが入り、温泉に浸かりながら野球観戦が可能となる。

また、三井不動産により買収された東京ドームでは、巨人の新球場を含む後楽園の大規模再開発計画もこの先期待できよう。

2023年3月に開業予定の日本ハムの新球場「エスコン フィールド HOKKAIDO」(北海道ボールパークFビレッジ イメージ (C)H.N.F.:株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントのプレスリリースより)
2023年3月に開業予定の日本ハムの新球場「エスコン フィールド HOKKAIDO」(北海道ボールパークFビレッジ イメージ (C)H.N.F.:株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントのプレスリリースより)
複合型施設「TOWER11」に開業予定のサウナ施設、フィールドに面した“ととのえテラスシート” のイメージ(株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントのプレスリリースより)
複合型施設「TOWER11」に開業予定のサウナ施設、フィールドに面した“ととのえテラスシート” のイメージ(株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントのプレスリリースより)

球団数の拡大でワクワクするプロ野球を取り戻す

日米のプロ野球の収益力の差は、そのまま両国の社会のあり方の差でもある。少子高齢化と過疎化が進む日本では、改革よりも既得権益を守る空気のほうが優勢であり、なだらかな低下から抜け出せないプロ野球。

一方で、球団の拡大を推し進め、最先端のテクノロジーや経営手法を取り入れ、絶えず改革し収益を上げ続けるのが大リーグだ。当たり前だが、大リーグの全てを真似る必要もなく、大リーグが全て優れている訳ではない。プロ野球のよさも醍醐味もある。しかし、大リーグからも学ぶ点はありそうだ。

球団数の拡大などにより、全国各地で新たな対戦が実現することで、「ワクワクする」→「行きたい、観たい」→「集客力・視聴率アップ」→「入場料・放映料アップ」→「収益力アップ」→「更なる拡張・投資」→「ますます魅力的に」という好循環が実現するのではないだろうか。

村上宗隆選手や佐々木朗希投手の活躍、2023年3月のWBCの開催、北海道ボールパークの誕生といった明るい話題がある今だからこそ、球団数を拡大することでプロ野球を更に魅力あるコンテンツに押し上げることができるはずだ。

  • 高橋克英(たかはし・かつひで)

    株式会社マリブジャパン代表取締役、金融コンサルタント。1969年、岐阜県生まれ。三菱銀行、シティグループ証券、シティバンクなどを経て、2013年に同社を設立。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。映画「スター・ウォーズ」の著名コレクターでもある。1993年慶應義塾大学経済学部卒、2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。著書に『銀行ゼロ時代』(朝日新聞出版)、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(講談社+α新書)、『地銀消滅』(平凡社)など多数。

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