「野球版天皇杯」や「カップ戦」の創設は可能か…プロ野球がサッカーと比べて物足りないこれだけの訳 | FRIDAYデジタル

「野球版天皇杯」や「カップ戦」の創設は可能か…プロ野球がサッカーと比べて物足りないこれだけの訳

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「プロ野球選手って休み多すぎだよね?」…

プロ野球の日本シリーズがオリックスの優勝で終わってはや数ヵ月。年末年始は、今シーズン大活躍したヤクルトの村上宗隆選手をはじめ、TVのバラエティー番組や地元のイベント登場などでプロ野球選手を多く目にすることになるものの、プロ野球の試合が毎日ある日々が待ち遠しい。

プロ野球のレギュラーシーズンは、最長で3月末から11月初旬頃まで、リーグ戦(交流戦を含む)が143試合、加えてCS(クライマックスシリーズ)や日本シリーズまで続く。残りの約半年近くは、公式戦がない期間となる。

このため、「プロ野球選手って休み多すぎだよね?」「オフシーズンはほぼ休みみたいなもんですか?」といった声も聞こえるが、もちろんオフシーズンも全てが休みではない。春・秋のキャンプや練習にオープン戦、契約更新、球団行事に加えて、自主トレと忙しく過ぎていく。

多くのプロ野球ファンからしたら、キャンプや練習の進み具合や、バラエティー番組での普段みない笑顔や裏話にも興味はあるものの、やはり、プロ同士の真剣勝負の試合をより多くみたいのものだ。

「きつねダンス」「村神様」、2022年は新語・流行語大賞にプロ野球関連の単語2点がトップ10入りしたが…(写真:アフロ)
「きつねダンス」「村神様」、2022年は新語・流行語大賞にプロ野球関連の単語2点がトップ10入りしたが…(写真:アフロ)

「野球版天皇杯」は夢物語か

「野球でもサッカーの天皇杯のようなプロ・アマが参加する全国大会ができないだろうか」。野球ファンの多くが一度は思うことかもしれない。

サッカー天皇杯にならって、プロ野球12チームに加え、独立リーグ、社会人、大学や場合によっては高校のチームも含め、参加100チームほどで、野球日本一を決める大会だ。

プロチームはシードとしてトーナメント途中から出場して、他のチームは一回戦から戦う。火の国サラマンダーズ(九州アジアリーグ)や信濃グランセローズ(BCリーグ)といった独立リーグのチームに加え、都市対抗野球大会や社会人野球日本選手権を勝ち上がったENEOSやトヨタ自動車、全国大学野球選手権大会を勝ち上がった亜細亜大学といった社会人や大学のチームも参戦するのだ。

野球はサッカー以上にアマがプロに勝つのは難しそうだが、社会人や独立リーグならプロのチームに勝てる可能性があるかもしれない。スポンサーを得て赤字とならず興行として成功させることが大前提ながら、何より普段みたことのない対戦カードや大番狂わせが実現し注目を集めることで、ファン層や競技人口の拡大にも期待できよう。

2022年10月に行われた天皇杯 JFA 第102回全日本サッカー選手権大会の決勝では、J2甲府が“下剋上”を果たし初優勝を飾った。全試合の観客動員数は約24万人、決勝戦の模様はNHK総合でライブ中継された(写真:アフロ)
2022年10月に行われた天皇杯 JFA 第102回全日本サッカー選手権大会の決勝では、J2甲府が“下剋上”を果たし初優勝を飾った。全試合の観客動員数は約24万人、決勝戦の模様はNHK総合でライブ中継された(写真:アフロ)

プロ・アマの絶望的な断絶状態

想像しただけで、ワクワクする大会になりそうではあるが、残念ながら「野球版天皇杯」が実現する可能性は極めて低そうだ。

日本の野球界においては、1961年に起きた「柳川事件」(※)以降、プロとアマには大きな断絶があり、交流そのものを禁止しているのが現状だ。日本の野球界は プロ・アマは無論、年代・職業・学校、性別、硬式・準硬式・軟式で統括する組織や団体がバラバラに存在しており、それらを取りまとめる統括組織もない。サッカーでいうところの日本サッカー協会が野球界には存在していないのだ。

このため、サッカーでは存在する一方、プロ・アマが参加する全国大会である野球版天皇杯は、実現に至っておらず、この先も限りなく開催実現はなさそうだ。

なお、硬式野球では、1964年より東京六大学野球の優勝チームに天皇杯がご下賜されており、そもそも新たに天皇杯という名称を頂く事自体も実は困難ではある。

※柳川事件:ドラフト制度も導入されていない無協定状態のなかで、プロ野球側が社会人野球の選手と契約したことをきっかけに、社会人側はプロとの関係断絶を決定。これに学生野球界も同調したことで、プロ・アマの交流は途絶えることになった。

独立リーグを加えた「カップ戦」の実現を

「野球版天皇杯」が難しくても、プロ野球が球団数を拡張できれば対戦相手も増えて面白くなるのだが、『今こそ12球団から16球団へ拡張を…プロ野球が大リーグと比べて、ワクワクしない「これだけの理由」』でも示したように、こちらも既得権がからみ直ぐには実現しそうにない。

『今こそ12球団から16球団へ拡張を…プロ野球が大リーグと比べて、ワクワクしない「これだけの理由」』はコチラ

プロ・アマの問題により「野球版天皇杯」が不可能であり、すぐにはプロ野球の16チーム化も現実的には無理であったとしても、プロだけで出来ることもあるはずだ。

例えば、サッカーのJリーグカップ(ルヴァンカップ)のようなプロ野球のカップ戦はどうだろうか。プロ野球12球団に、2軍(ファームリーグ)チームに加え、BCリーグ、四国アイランドリーグplus、九州アジアリーグ、北海道フロンティアリーグといった独立リーグのチームを加え30チーム前後でカップ戦を行うのだ。日本シリーズ進出チームをはじめプロ野球12球団にはシード権をつけてもいい。

スポンサーを募り、優勝賞金も弾むなど工夫次第で、権威ある大会にもできるはずだ。カップ戦の後にドラフト開催や契約更新とすれば、例えば、独立リーグの目立たなかった選手がドラフト指名されることに繋がるかもしれない。

最終的には、日本シリーズ王者とカップ戦王者との「スーパーカップ」が実現できれば最高だろう。

負担増回避のため「CS」と「秋季キャンプ」は廃止 

無論、カップ戦の実現には懐疑的な意見も多くあろう。リーグ戦143試合に加えCSに日本シリーズに、キャンプや自主トレで既に過密日程であること、投手のように負担が大きいポジションがある、時期が遅く寒すぎると競技自体が不可能である、今の枠組みで十分に集客しており儲かっている、といった点が挙げられよう。

こうした指摘に対しては、例えば、過密日程や厳冬期を避ける観点からも、CSと秋季キャンプを廃止するのはどうだろうか。6チーム中3位までが出場できるCSは、お役御免で廃止、日本シリーズは以前のようにリーグ優勝チーム同士の対決とする。

「リーグ優勝できなくても、CSがある」ではなく、「リーグ優勝も、カップ戦優勝も目指す」の方が、健全であり楽しみも増えるのではないだろうか。

また、リーグ戦が終わったばかりなのに、オンとオフの切り替えもなく、とりあえず球団と監督に言われて「やってます」感ありありの秋季練習や秋季キャンプに代わり、カップ戦という新しい実戦の場を設けるほうが、ファンにも選手にも魅力的ではないだろうか。新たな興行収入を球団・選手とも見込めるメリットもある。練習やキャンプも大事だが、プロ野球とは、魅せる場であり、稼ぐ場であるはずだ。

 

2022年・新語・流行語大賞の年間大賞は「村神様」(写真:アフロ)
2022年・新語・流行語大賞の年間大賞は「村神様」(写真:アフロ)

「四冠」達成を目指す

ピッチャーに負担がかかり過ぎるという懸念点はあるものの、若手主体とするなど工夫はできるのではないか。若手選手や瀬戸際のベテランにとって、カップ戦出場がアピールの場にもなるはずだ。

「野球版天皇杯」や16チームに拡大が実現すれば大成功ながら、既得権益や過去のしがらみもあり、ハードルは高そうだ。一方で、カップ戦の実現など、プロ野球のなかで、既存のスケジュールや仕組みを見直すことで、今以上に魅力的にできる方法はありそうだ。

リーグ優勝、交流戦優勝、日本シリーズ優勝、カップ戦優勝で、「四冠」達成が、プロ野球チームの新たな目標となれば、いま以上にプロ野球は盛り上がるのではないだろうか。

  • 高橋克英(たかはし・かつひで) 

    株式会社マリブジャパン代表取締役、金融コンサルタント。1969年、岐阜県生まれ。三菱銀行、シティグループ証券、シティバンクなどを経て、2013年に同社を設立。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。映画「スター・ウォーズ」の著名コレクターでもある。1993年慶應義塾大学経済学部卒、2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。著書に『銀行ゼロ時代』(朝日新聞出版)、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(講談社+α新書)、『地銀消滅』(平凡社)など多数。

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