ロサンゼルス在住の編集ライター、ヘルスコーチ。雑誌編集者歴は20年以上。2015年に渡米し、日本で流行りそうなアメリカのヘルシーフード、エクササイズなどのトレンド記事を得意とする。

廣田 陽子

<h3><span class="strongInContent">時給2640円でも働き手が見つからない…</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>記録的な水準のインフレが続き、収束の気配もまだ見えないアメリカ経済。深刻な人手不足が続いており、ホリデーシーズンの今なお、レストランのウィンドウには「スタッフ募集」の張り紙が目立ちます。人員確保のため大手企業が賃上げを繰り返していることもあり、病院の専門職からファーストフード店やチェーン店に転職するといった逆転現象も起こっています。</p>
<p>ロサンゼルス在住ライターである私はこの数ヵ月だけでも、病院事務スタッフとして働いていたが人気ハンバーガーチェーン「IN-N-OUT」に転職したという話を２件耳にしました。また、レントゲン技師がスターバックスに転職したという話も。</p>
<p>2022年12月現在の時給を調べると、ロサンゼルスのスターバックスのバリスタの時給は平均16.54ドル（2183円）、ハンバーガーチェーン「IN-N-OUT」のレジ担当は約14ドル（1848円）。私自身、街で見かけた飲食店のスタッフ募集は14〜18ドルで、高いところで20ドル（2640円）というのを目にしました。</p>
<figure id="attachment_284045" aria-describedby="caption-attachment-284045" style="width: 3401px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="31c583cf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/aflo_31487487.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-284045" class="wp-caption-text">ホリデーシーズンは基本給の1.5倍！　医療保険、育児休暇、学士号取得のための資金、退職金…福利厚生も手厚いロサンゼルスの「スタバ」（写真：アフロ）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_284060" aria-describedby="caption-attachment-284060" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="12043eaa"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/3-2_IMG_1239.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-284060" class="wp-caption-text">ファーストフード店では常にスタッフ募集のポスターが貼られている</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">物価上昇が続くロサンゼルス…生活を守るために「スタバ」に転職</span></h3>
<p>インフレで大企業が賃金を上げている影響で、チップを含めるとスターバックスやバーガーショップの方が医療関係の仕事より稼げる場合があるそう。アメリカの賃金は上がっていますが、同時に物価も上昇しているため生活費が高くついており、働く側も自分や家族の生活を守るために転職をしているのが現状です。生活費が高く、ミリオネアが多く住んでいるロサンゼルスでは、年収1000万円ではお金持ちに入らずごく一般的な生活レベルになります。</p>
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<p>賃金以外にも専門職を離れてまでチェーン店で働く理由はいくつかあります。コロナ禍で、「働き方」を見直す人が増え、病院などの専門職でストレスがかかる職場よりも、少ない負担で確実に稼げる仕事を選ぶ傾向にあること。チェーン店での仕事は、内容がシンプルなためストレスが少なく、さらに福利厚生も手厚くなっています。スターバックスを例に挙げるとHPに書かれている内容だけでもこんなにたくさんあります。</p>
<figure id="attachment_284054" aria-describedby="caption-attachment-284054" style="width: 1025px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="eda6ffe8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/H-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-284054" class="wp-caption-text">スターバックスHPより抜粋。内容は店舗、雇用形態により異なります</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">日米における「雇われる」意識の差</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>私は日本で会社員だったとき「雇ってもらっている」、「働かせてもらっている」という感覚がありました。「雇ってもらって“ありがたい”」という気持ちからうまれているものですが、漠然と「“企業＞社員”というものである」とも思ってもいました。</p>
<p>これに対し、アメリカでは日本ほど企業と社員のパワーバランスに差がないと感じます。アメリカで働く人をみると「労力を提供して賃金をもらう」という、雇う側と働く側はフラットな関係です。在職しながらよりよい転職先を探すのも一般的で、よりよい待遇の仕事が見つかった場合、その内容を踏まえて、今働いている会社と交渉することも行われています。</p>
<p>自分で自分のキャリアを勝ち取っていくようなイメージで、会社側に賃上げ交渉をするのもまったく失礼なことでなく、働き方を交渉することも可能。例えば、１日の労働時間を長くして出勤する日を減らすなど自分の希望を相談することもできます。</p>
<figure id="attachment_284075" aria-describedby="caption-attachment-284075" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="93d2a434"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/2_IMG_1262-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-284075" class="wp-caption-text">カリフォルニアの人気ハンバーガーチェーン「IN-N-OUT」。待遇がよく働く人を大切にする企業としても有名</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="卵子の冷凍保存代を福利厚生に含める会社も"></div>
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<h3><span class="strongInContent">海外から見て感じる日本の働き方の懸念点</span></h3>
<p>「お金に関係なく、がんばって働く」ということが美徳として根付いているという文化的背景から、給料の値上げ交渉が非常に難しく、企業に遠慮してしまいがちです。また、本来は短い時間で成果を上げることが会社にとってもメリットとなるはずですが、「長時間労働＝がんばって働いている」と、効率の悪い働き方が誤って評価されることもまだまだあります。</p>
<p>また、メディア等でも老夫婦が営む「50年お値段据え置きの定食屋」など「値段を上げずにがんばること」を美化する傾向にあり、サービスや商品の値上げが難しい分、賃上げも難しくなっているのではないでしょうか。</p>
<figure id="attachment_284059" aria-describedby="caption-attachment-284059" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e2647c35"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/3-1_IMG_1231.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-284059" class="wp-caption-text">リカーショップの一角にある小さなサンドイッチ店。キッチン経験者を募集しており、なんとこの小さなお店でさえ「時給が最大19.50ドル（2574円）」とは驚き</figcaption></figure>
<p><a href="#" data-ident_hash="35163393"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/1_IMG_1228.jpg" alt=""></a></p>
<h3><span class="strongInContent">卵子の冷凍保存代を福利厚生に含める会社も</span></h3>
<p>私の友人で広告会社で働く30代半ばの女性の待遇をご紹介します。給料の他に、下記の福利厚生があり、11月末のサンクスギビングから、クリスマス、年末のホリデーシーズンとなると、月の半分はホリデーでお休みになるそう。近年では、日数制限なしの有給を取り入れたり、女性のキャリアサポートとして卵子の冷凍保存代などを福利厚生に含める会社も増えています。</p>
<p>ちなみに彼女のひとつ上のポジションにあたる上司は、年収3000〜5000万円ほどになるそう。アメリカ人の友人で、日本で働きたいと思ったがあまりに給料が安くてやめたという人がいますが、この待遇をみるとその気持ちが理解できるのではないでしょうか。ただし、アメリカの企業はマーケットの変化による方向転換が早く部署ごと閉鎖したり人員を半分に削減するといったことが突然起こります。そして、能力が見合わない場合は、すぐに首を切られてしまうというリスクも併せ持っています。</p>
<p><a href="#" data-ident_hash="23a1a17b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/H-2-1.jpg" alt=""></a></p>
<h3><span class="strongInContent">ワークライフバランスの良いアメリカ</span></h3>
<p>私の夫が会社員だった時は毎日定時に帰宅していましたし、残業がある場合でも「８時まで残業」の場合、８時ぴったりに残業が終わって帰ってくるので私は非常に驚いたのを覚えています。労働時間が明確なのは、プライベートの予定や体調管理がしやすいため大きなメリットです。ちなみに、ロサンゼルスでは、平日は午後４時すぎから道路が帰宅ラッシュで渋滞になり、金曜日は午後３時頃から渋滞がはじまります。</p>
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<p>日米の働き方を「労働時間と給料」で比較すると、ワークライフバランスはアメリカの方がよいと感じます。平均８時間ほど働けばある程度の給料がもらえ、労働時間が適正な分プライベートに費やす時間もあります。土日祝日はしっかり休めるほか、２週間ほどのバケーションが年１回取れるというのが当たり前。もっと稼ぎたい人は、もっと働くという選択もあります。「働き方」や「働く理由」は人ぞれぞれですが、自分に合った選択ができるのはメリットだと感じます。アメリカと比較して、安定して働けるのは日本のメリットですが、働き方の幅が広がり、必要以上の拘束時間が減るとよりよいのではないでしょうか。</p>
<p>※１ドル132円で計算しています。</p>
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<p><a href="https://yoko-la.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="strongInContent">■『YOKO HEALTH COACH』廣田陽子さんのHP</span>はコチラ</a></p>
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健康系の編集ライター、ヘルスコーチ。1980年、新潟県生まれ。健康系雑誌の編集部を経て2015年に渡米しフリーランスに。現在はロサンゼルスに在住し、健康や美容、ダイエットなどをテーマに日本のメディアで執筆。ヘルスコーチとしてオンラインで個別のダイエットコーチングも行う。

廣田陽子

深刻な人手不足が続いている米国ロサンゼルス。人員確保のため大手企業が賃上げを繰り返していることもあり、病院の専門職からファーストフード店やチェーン店に転職するといった逆転現象も起こっています。

福利厚生で“卵子の冷凍保存代”も…「病院よりスタバで働く方が稼げる！」ロサンゼルスの賃金事情

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