<figure id="attachment_287207" aria-describedby="caption-attachment-287207" style="width: 3712px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5ad2b735"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/6SH_1567a_original-1.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-287207" class="wp-caption-text">事件が起きた池袋のサンシャイン60（撮影：蓮尾真司）</figcaption></figure>
<p>暴力団対策法に加え暴力団排除条例が全国で整備されるなど活動への規制が強まり、全国の暴力団勢力が減少傾向にあるなか、「半グレ」と呼ばれる反社会的勢力の活動が危惧されている。警察当局は半グレ集団について、「準暴力団」と位置付けて組織や構成メンバーの把握に努めているが、組織と呼ぶほどの組織性はなく、メンバーはグループ内を自由に出入りしながら活動している。多くは20～40代の若手だ。警察当局の捜査幹部は、<span class="strongInContent">「メンバーが流動的で捉えどころがないが、集団になって結束するとヤクザ並みに乱暴で危険な存在だ」</span>との認識を示している。</p>
<p>暴力団の場合は組長をトップとしてピラミッド型の組織形態になっており、若手は組長の盃をもらい組織の一員として迎えられる。構成員となれば上下関係は強く絶対服従を求められる。こうした組織に加入した若手について指定暴力団の古参幹部は、<span class="strongInContent">「若い衆のころは『部屋住み』といって親分の自宅兼事務所に住み込んで掃除や洗濯、食事などの世話をする。親分が外出する時は運転手もやる」</span>と解説し、次のように指摘する。</p>
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<p><span class="strongInContent">「最近の若いヤツらはこのようなヤクザの決まり事、仕来りのようなことを嫌うのだろう。だからヤクザになりたいというのは少ない。それでもヤクザのような生活をしたいとなると、多くは半グレになる」</span></p>
<p>暴力団を団体として規制する法律としては1992年に施行された暴力団対策法がある。暴対法では、暴力団組織を「指定暴力団」として指定し、繁華街の飲食店からの用心棒代の徴収や不当な債権回収を禁じているほか、対立抗争時の事務所の使用制限などの規定もある。違反した場合には中止命令が出される。さらに違反した場合には逮捕されることもある。</p>
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<p>指定するにあたっては①「暴力団としての威圧的な活動で資金を獲得している」②「犯罪歴がある構成員が一定比率以上、在籍している」③「組長をトップとしてピラミッド型の階層的な組織となっている」との3条件が必要要件となる。現在は六代目山口組、住吉会、稲川会など25組織が指定されている。</p>
<p>警察当局の捜査幹部が、こうした暴対法の要件を踏まえつつ半グレの実態について解説する。</p>
<p><span class="strongInContent">「半グレの組織形態はピラミッド型どころか明確ではなく、上下関係もあるようでない。グループ内のメンバーは常に流動的で確定できない。ただ、暴力を背景に威圧的な活動で資金を得ているという点では暴対法の要件に合致するといえばその通りなのだが……」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="半グレの数はなんと……！"></div>
<figure id="attachment_287208" aria-describedby="caption-attachment-287208" style="width: 1208px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4fe94ed1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/6SH_3321a_original.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-287208" class="wp-caption-text">サンシャインの事件で逮捕された「チャイニーズドラゴン」のメンバー</figcaption></figure>
<p>半グレについて団体としての暴対法のような法規制の必要性を求める声もかねてからあったが、今のところ難しいのが実情だ。ただ、警察当局は半グレについて全国で約80グループ、約4000人が活動していることを確認している。リーダー格からメンバーまで個人情報をデータベース化して実態の把握を進めている。</p>
<p>半グレは約80グループに分散しているとはいえ、約4000人という数字は、2021年に警察当局が把握した六代目山口組の全国の構成員とほぼ同等の巨大勢力だ。前出の捜査幹部は、<span class="strongInContent">「グループ数は確定的ではない。増えたり減ったりの繰り返し。グループといっても、その都度、SNSなどで連絡を取り合い、メンバーは入れ替わる。本人たちもグループにどのようなメンバーがいるのか分かっていないのではないか」</span>と指摘する。</p>
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<p>警察当局も手を焼く半グレの粗暴さがむき出しになった事件が2022年10月に発生した。夜景を眺めながら食事を楽しめる東京・池袋の高層ビル「サンシャイン60」の58階のレストランで半グレグループ「チャイニーズドラゴン」のリーダーの出所祝いが行われていたところ、別の派閥のメンバーが押しかけ約100人で大乱闘となった。</p>
<p>殴り合いだけでなくビール瓶、グラスなどを投げつけ合うなどの結果、店内のテーブルはひっくり返り、割れた皿やグラスが散乱。通報を受けて警察官が駆け付けた際にはもぬけの殻となっていた。</p>
<p>チャイニーズドラゴンは元々、暴走族グループから始まり近年は振り込め詐欺や恐喝などを資金源としているとされている。警察当局は重要捜査対象としてきたが、久しぶりに大きなニュースとして取り上げられた。</p>
<p>こうした暴力をいとわない半グレの実態の把握を進めて活動を抑え込むため、警視庁は2022年12月に新たに組織犯罪対策部に特命班を発足させた。部門横断的に情報を収集し、振り込め詐欺や賭博、恐喝、違法風俗営業などの事件の摘発や、不良少年、暴走族の取り締まりなどでグループの実態や資金源を解明するとしている。</p>
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<p>暴力団の若手について解説していた前出の指定暴力団の古参幹部は、「半グレの連中は暴対法とは無関係。何でもやりたい放題」と、暴対法によって活動が規制されている自らの実情を踏まえ自嘲気味に語った。</p>
<p>しかし、前述のように警視庁が2022年末に専門捜査部門を立ち上げ捜査を強化する方針だ。2023年の年始以降、半グレはこれまでのような活動を続けることができるかどうか。警察と半グレの新たな攻防が始まる。</p>


ノンフィクションライター。産経新聞社で警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、フリーに。近著に『山口組分裂の真相』（文藝春秋）

尾島正洋　

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