<figure id="attachment_288459" aria-describedby="caption-attachment-288459" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6465d176"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/e534823e58c8820c8f52178547729ecb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-288459" class="wp-caption-text">政治活動においてSNSを積極的に活用する。’22年11月の中間選挙でも、その発信力で共和党を後押しした</figcaption></figure>
〈ブチャの虐殺はウクライナが行った〉
〈ワクチンを打ったら５年以内に死ぬ〉
これらは昨年、ネット上で拡散された″ニュース″である。もちろん事実ではない。いわゆる「フェイクニュース」だ。
こういった情報を目にした時、大半の人は「私は騙されるわけがない」と思うだろう。しかし油断は禁物だ。スマホやＳＮＳの普及とともにフェイクニュースは世の中に氾濫しており、さらにその内容も巧妙化している。
「フェイクニュースという言葉が広く認知されるようになったのは’16年頃と言われています。ドナルド・トランプ（76）とヒラリー・クリントン（75）が争った同年のアメリカ大統領選では、両陣営あわせて約３８００万回も、ニセの情報が拡散されました。以降、その数は増加の一途をたどっているのが現状です」
こう語るのは国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授だ。フェイクニュースの問題にいち早く警鐘を鳴らし、分析を続ける研究の第一人者である。
ＳＮＳ時代の社会問題となっている「フェイクニュース」とは、一体誰が、どのような目的で作っているのか。そして、拡散しているのは誰か。山口氏の最新研究をもとに、その実態に迫る。
<figure id="attachment_288461" aria-describedby="caption-attachment-288461" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="692546d4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/ae3f868759b1884974ac95bb0c76f863.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-288461" class="wp-caption-text">「情報戦争」と称されるロシアのウクライナ侵攻。軍事的な観点から、意図的な虚偽情報が大量に流されている</figcaption></figure>
<figure id="attachment_288460" aria-describedby="caption-attachment-288460" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d585dddd"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/d6c01509c9ffcee2ad13f739aef4e847.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-288460" class="wp-caption-text">多くのデマが流れたコロナワクチン。「神真都Q会」という団体による接種会場への妨害行為も記憶に新しい</figcaption></figure>
<h2>制作者の意外な正体</h2>
まず気になるのはフェイクニュースを流している者の正体だ。その答えとも言うべきレポートが’21年にアメリカの非営利団体ＣＣＤＨによって発表され、大きな波紋を広げた。
「調査によると、’21年２月１日〜３月16日までの間にコロナワクチンに関してＳＮＳに投稿された80万件以上のフェイクニュースのうち、65％がわずか12個のアカウントから作成・拡散されていたことが判明したのです。その正体は栄養補助食を扱う資産家や、反ワクチンの健康法を謳う書籍やＤＶＤを販売する実業家、医師たちでした。彼らは200人を超える組織で、物品販売などで40億円の利益を上げたそうです」（山口氏・以下同）
’16年のアメリカ大統領選の裏でも、多額のカネが動いていた。
「有名なものでは『ローマ法王、トランプを支持』というニセ情報が拡散しました。一見すると政治的な動機によるものかと思いますが、そうではありません。話題になれば多額の広告収入が得られるため、その目的で制作されたものです。マケドニアの学生たちによって作られたものもあり、彼らのなかには両親の生涯年収を超えた人まで現れたといいます」
フェイクニュースが拡散されればされるほど、莫大な利益を得ることができる。だからこそ巧妙なものが次々に生み出され、多くの人が騙されるのだ。
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ある衝撃的なデータがある。山口氏は’20年に６０００人を対象としてフェイクニュースに関する大規模な調査を行った。内容が偏らないように８つのジャンルから９種類のニュースが選ばれたが、一番低いもので65.3％、高いものは85.6％の回答者が間違いだと気付いていないことが明らかになったのだ。
では続いて、どんな人が騙されやすいか見ていこう。
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「年代別に見ると50〜60代の中高年世代が80％を超えています。この世代は若い世代に比べてソーシャルメディアの利用時間が短いため、ファクトチェックされた記事や嘘を指摘するような投稿に触れる機会が少ないからだと考えられます」
確かに高齢者の割合は高い。しかし驚きなのは、全世代で平均77.5％もの人がフェイクニュースを見破ることができなかったという事実だ。
「そもそも人間は自分の考えに近いニュースを信じやすいんです。その原因は、たくさんある情報の中から自分の仮説や考えを補強するようなものばかりを拾い出す『確証バイアス』という特性を持っているからです。『それ見たことか！』と思うような情報に出会ったとき、それが嘘であろうと信じてしまうのです。 

もう一つの要因は自分に対する自信です。’21年にアメリカの研究者グループが発表したレポートによると、参加した300人の被験者のうち、90％以上が自身の情報真偽判定能力について平均以上だと考えていたそうです。さらに75％は実際の能力より、自分を高く評価していた。自分に自信がある人や自己評価が高い人ほど、実際には騙されやすい傾向にあります」
<a href="#" data-ident_hash="4962a402"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/WF0120_P060.jpg" alt=""></a>
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<h2>拡散してしまう人の特徴</h2>
作り手の正体、騙されやすい人の傾向がわかったところで、次は拡散の実態を紐解いていく。これによると全体の14.3％がフェイクニュースを信じて拡散させている。とりわけ10代の若者は４人に１人とかなり高い割合となっている。
「若い世代はＳＮＳやメッセージアプリを利用している時間が長いため、ニュースをシェアする機会も多く、拡散してしまう確率が高くなる。逆に騙される割合が高かった高齢者は低くなっています」
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学歴やネット歴の有無が拡散しない要因になっていることがわかる。また、政治的志向が極端な人ほど拡散行動を取りやすい。
興味深いのは「メディアリテラシー」が高い人ほど拡散しやすい点だ。情報媒体の特徴や欠点などを正しく理解できる人が、なぜ拡散してしまうのか。そこには情報を適切に判断するスキルである「情報リテラシー」の欠如がある。
「事前の申告でメディアリテラシーが高いと自己評価した人を分析すると、『メディアの与える負の影響を周囲に伝えよう』として、逆に自らがフェイクニュースの拡散源になっていたのです。必要なのはニュースの真偽を判断する情報リテラシーを高めることです」
フェイクニュースの悪質性は、気付かないうちに誰しもその一端を担ってしまうところにある。ＳＮＳに親和性が高く、自分は理解できていると思っている人こそ、格好の標的になっているのだ。
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<h2>明日からできる対策法</h2>
フェイクニュースの実態がわかったところで、重要なのはこの問題にどう対処していくかである。脅威から身を守るために、何ができるのか。
「フェイクニュースを完璧に見抜く方法は、残念ながらありません。しかし対策がないわけではない。一つの有効な方法は、他の情報源を探すことです」
図⑤は、複数の情報源を調べたうえで、ニュースの真偽を判断した人のデータだ。すべての事例において、他の情報源を探した人のほうがフェイクニュースを信じる割合が低下していることがわかる。
しかし一方で、フェイク技術は日進月歩で進化している。ウクライナ戦争では、国民に投降を呼びかけるゼレンスキー大統領のニセ動画が拡散された。日本でも昨年９月の静岡豪雨の際、市内が水没した画像が出回ったが、これはＡＩ技術を使ったものだった。
「近い将来、見分けがつかないフェイク画像や動画を、誰でも作れるようになります。そして世の中が大混乱することは間違いない。その時私たちはどうしたらいいのか？『自分も騙されるかもしれない』と常に思っていることが大事です。そして誰かに伝えたくなった時には、他の情報源に当たるなど検証の行動をとる。それで真偽がわからなかった場合、拡散しない、それに尽きると思います」
今後はメタバースなど新たなコミュニケーションも誕生していく。変化の大きい時代だからこそ、一人一人が柔軟に意識を変えていかなければならない。
<h3>SNSで拡散されたフェイクニュースの実例</h3>
<figure id="attachment_288465" aria-describedby="caption-attachment-288465" style="width: 2111px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="df6f4a91"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/e00f8a493ed562b8b4021ee53ff4b2e4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-288465" class="wp-caption-text">’16年の熊本地震の際に拡散された画像。多くの人が騙され、制作者が逮捕されるほどの騒動に発展した</figcaption></figure>
<figure id="attachment_288464" aria-describedby="caption-attachment-288464" style="width: 2394px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f8028c70"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/819d15b5abc3f44c47ede86efd53e2c8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-288464" class="wp-caption-text">昨年９月には静岡豪雨にまつわるニセ画像も拡散。松野官房長官が直々に否定したことでも話題に</figcaption></figure>
『FRIDAY』2023年1月20・27日号より

アフロ（1〜3枚目）

知らず知らずのうちに騙されている…！？フェイクニュースが世の中に氾濫している。嘘を作り出し、拡散するのは一体誰なのか！しかし、それは知らずうちに自分が拡散しているかもしれない――。拡散の実態を公開！！

日本人の約8割が知らず知らずのうちに騙されている…「フェイクニュース」はこうやって拡散される

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