<figure id="attachment_292080" aria-describedby="caption-attachment-292080" style="width: 3024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fb8c425d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/nishokaaaa22.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-292080" class="wp-caption-text">「落ち着いたなぁって最近、よう言われます」</figcaption></figure>
「晋太郎がアスレチックスと契約したと聞いてすぐ、『オークランドやなくて、サンフランシスコで家を探せよ』と連絡しました。治安がよくないから、アスレチックスの選手は実は誰もオークランドに住んでないんですよ。強盗から店員を守るためにコンビニは無人だと聞きますし、住宅の窓には鉄格子がかかっているところもあるそうです。『オークランドとサンフランシスコはすごく近い。橋を一本渡れば着くから』って。サンフランシスコからオークランドに行くのは無料なんですけど、オークランドからサンフランシスコに行くには通行料を５㌦払わないといけない。治安の格差があるからです。そういうところも勉強ですよね」
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西岡剛（36）にとって藤浪晋太郎（28）は大阪桐蔭の後輩にあたり、阪神ではチームメイトとして5年間、一緒にプレーしている（2013年～2018年）。もうひとつ言うと、西岡はミネソタ・ツインズで2011年から２シーズンプレーしており、”メジャーの先輩”でもある。今回、縁深い後輩がアスレチックスと1年契約を結んだことに西岡は「感心した」と言う。
「年俸を３～4億円に抑えれば、アスレチックスと２～3年契約を結ぶことも可能だったと思います。ところが晋太郎は僕に『1年契約で行きたいんですよ』と言っていた。なぜか？　1年契約だとシーズン終了後にＦＡになる。今季活躍できれば、年俸が10億～15億円近くにハネ上がるからです。一方で、1年契約だと今季活躍できなければ、オフに所属球団がなくなるリスクもある。それでも晋太郎は勝負に出た。立派ですよ。アメリカのメディアに大谷翔平（28）のことを聞かれて『別次元』だとか『別物』と持ち上げていたけど、腹の中は悔しさでいっぱいやと思う。同級生はどうしたって気になる存在やし、高校時代は晋太郎が勝って優勝しているわけやから。プロ1年目の晋太郎の活躍ぶりを見たら、誰もがメジャーでライバル・大谷と戦う姿を想像したはず。相当、期するものがあると思います」
当の藤浪は本誌取材に「野球をする環境がガラリと変わることに対する不安はある。チーム馴染めるのか、、、とか」と語っていたが、西岡は「全く問題ない。むしろ晋太郎にとってアスレチックス入りはプラス」と断言する。
<div data-friday-nextpage-lead="ハイチュウと目薬に気をつけろ！"></div>
「阪神にドラフト1位で入って活躍して、阪神一色の関西でマスコミに騒がれて、ストライクが入らんようになって苦しいシーズンも経験して……それでも晋太郎は潰れなかった。これ、他球団の選手にはわかってもらえないと思いますけど、甲子園のスターがドラフト１位で阪神に入るというプレッシャーは想像を絶しますよ。メンタル的に相当鍛えられたはずです。そして、メジャーでは一転して、玄人好みの渋いチームに入った。メジャーの公式球にも戸惑うかもしれません。でも、この違いを体験するのも勉強。野球とベースボールの違いを実感できて、面白いと思います。フライアウトとかピックオフとか、野球用語は日米で差がないから理解できる。そこは全然心配しなくていい。でも、晋太郎には、なるべく通訳を入れずにチームメートやスタッフ、記者さんたちとコミュニケーションを取ってほしい。最初はチームメイトが雑談していてドカンと爆笑していても、一人だけ『いま、何て言ったの？』と通訳に聞かなきゃいけなくて、全然オモロないわ！　ってなるやろけどね(笑)。外国人だからって、イジめられることもない。イチローさん（49）、松井秀喜さん（48）ら先輩が活躍してくれたおかげで、日本人は一目置かれているから。もちろん、結果を出すまで”コイツはナンボのもんじゃい”という目で見られると思うけど、それは日本だって同じ。ドラフト1位で入って来た子はそういう目で見られるでしょ？　そこに日米の差はないです」
気をつけねばならないのは「野球文化の違い」だという。
<figure id="attachment_292084" aria-describedby="caption-attachment-292084" style="width: 3024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ce5034b1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/nishokaaaa333.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-292084" class="wp-caption-text">「ほとんど外に飲みに出なくなった」という。コーヒーが似合う紳士になった</figcaption></figure>
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「メジャーのキャンプは短くて、お昼には終わる。なぜかというと、皆、キャンプ地に家族を呼んでいるから、午後は家族と過ごすわけです。そのかわり、彼らは朝4時5時に出てきて自分のトレーニングをしている。それからチーム練習に参加している。このあたりの工夫が晋太郎にも必要です。あと、ガッツポーズも要注意。向こうでは侮辱ととられて、トラブルになります。自軍のベンチに向かってやるぶんには大丈夫なんですけどね。ただ、自軍のベンチに向かってガッツポーズをしていても、その後、たまたま相手バッターと目が合ってしまったら大変。必ず報復されます。しかも、３連戦の間ずっと。『2日前に●●がブツけられた仕返しだ』なんて平気で言われますから(笑)。メジャーでは”試合”じゃなくて”戦い”なんです。だからこそ燃えるし、面白い。あと、これは意外かもしれないですけど、日本の文化はかなりメジャーに浸透していて、お菓子の『ハイチュウ』や、スカッとする目薬をチームメイトにメッチャねだられると思います。けど、キッパリ断らなきゃダメ。たとえば目薬をさした後に、その選手が打てなくなったりしたら、晋太郎のせいにされかねないんです。アメリカは訴訟社会だから、下手したら大変な目に遭います。あとは……食事か。アメリカのレストランは夜9時とか10時に閉まってしまう。夜遅くまで色々なものが食べられる日本の有難さを痛感すると思いますよ。そんな日本人メジャーリーガーの助けになるのが、日本食レストラン。大都市にはだいたい老舗の日本食レストランがあって、日本人メジャーリーガーの先輩たちが関係を築いてくれています。仲良くなれば、試合終了後も店を開けて待っていてくれる。開店前に食事を食べさせてくれる店もあります。記者さんたちが詳しいから、そこはしっかり押さえておくべきですよね」
<div data-friday-nextpage-lead="「ゼロイチ」だから九州に渡った"></div>
西岡自身も昨年から新たな挑戦をしている。
2019年から３シーズンを過ごしたＢＣリーグ栃木ゴールデンブレーブスを退団。昨年から九州アジアリーグに参加した、できたてホヤホヤの球団・福岡北九州フェニックスで監督兼選手を務めている。慣れ親しんだ栃木を離れ、新興球団に飛び込んだ理由は何だったのか。
<figure id="attachment_292097" aria-describedby="caption-attachment-292097" style="width: 1162px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ae48dc65"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/nshsiokaaa44.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-292097" class="wp-caption-text">監督をしながら主力打者として打率.296をマーク。右はNPBでも活躍した寺原隼人投手</figcaption></figure>
「新興球団だから、ですよ。ゼロイチ……０から１になる過程は既存のチームでは経験できない。それが北九州フェニックスの魅力でした。１年目からスポンサーは集まらない。スポンサーを集めるため、監督としていろんな企業の社長さんと会食しました。この立場じゃないと会えない方たちと話ができて、学びがたくさんありましたし、プロ野球選手の給料はどこから発生しているかに想いを至らせることもできた。選手の給料は球団から支払われますが、もとはファンが買ってくれるチケット代であり、ユニフォームや球場に名前が書かれているスポンサー収入なんです。スポンサーが集まらないと球団運営はできない。社会の仕組みを知ることができた」
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ゼロイチだから挑戦できたこともある。そのひとつが”応援の改革”だ。
「独立リーグだとお客さんはだいたい２００人くらい。多くて１０００～２０００人。このお客さんの入りでＮＰＢと同じように太鼓とトランペットで応援すると、グラウンドにいる選手には『ドン、ドン』という太鼓音しか聞こえなくなるんです。なかなかプレーしづらいんですよ、これが。決して応援団を否定しているわけではないんですが、おそらくスタンドのお客さんも太鼓の音ばかり聞こえて、試合に集中しづらいと思うんです。3万人も4万人もお客さんが入るNPBの球場には太鼓とトランペットはすごくマッチするんですけどね。そこで僕は球場に音楽を流すことにしました。登場曲とか、ファウルのときのちょっとした曲とか、音楽はとても大事。映画でも2時間なのに、野球の試合は3時間もかかる。集中力を切らさず、飽きずに観てもらうために、音楽は不可欠なんです。ＤＪを入れてみたりもしました。スピーカーの近くに座っていたお客さんからは『うるさい』というクレームが入りましたけど、これもやってみて初めてわかったこと。できれば全試合、ＤＪを入れてみたいんですけど、まだまだ予算が足りない」
<div data-friday-nextpage-lead="”常識”を次々と破壊する西岡野球"></div>
監督としても、西岡はチャレンジャーだった。常々疑問に思っていた野球界の慣例をぶっこわしたのだ。
「リリーフに後を託した先発投手とか、代打を送られた選手とか、交代した選手がベンチに残って応援しなきゃいけないことを、ずっと疑問に思ってました。トーナメントを戦っているならわかりますけど、長いリーグ戦では無意味ですよね。プロなら応援はファンに任せて、最高のパフォーマンスを発揮することに努めるべき。だから僕は交代した選手はそのまま上がらせました。『帰ってエエよ』と言うと、最初は皆、アタフタしてました。『監督、怒ってるんちゃうか？』と。『明日のパフォーマンスを上げられるように、今からの時間、自分で考えて使ってくれ』と説明したら、わかってくれましたけどね。試合が終わって、両軍の選手がグラウンドに整列したとき、ウチのチームは９人しかおらんこともありましたけど(笑)、最終的に3割バッターが7人ぐらい誕生しましたよ」
徹底させたのは目の前のプレーで最大のパフォーマンスを発揮させるための準備をすること。生前、西岡をかわいがってくれた智将・野村克也氏が大切にしていた「備え」だ。
9回裏に試合がどうなっているか。誰にも予想できない。見えないものと戦う必要はない。目の前の打席、一球にフォーカスする。その積み重ねが勝利に繋がれば最高－－というのが西岡の持論だ。
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「チームのためじゃなくて自分のためにやりなさい。勝ち負けは指揮を執る人の責任。ウチはミスしてもＯＫです。ミスして何に気づけたかが大事。僕は試合後のミーティングはしない。試合後にミーティングがあると、試合でミスした選手は『どう弁明しよう』とか『怒られるの嫌やな』とか、試合後のことばかり考えてパフォーマンスが落ちるんです。それに、ミスしてイライラしている状態でアドバイスされても頭に入ってこない。だから僕は当日は『いい経験したね』と言うにとどめておいて、次の日にアドバイスします」
<figure id="attachment_292100" aria-describedby="caption-attachment-292100" style="width: 829px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="50fc4630"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/nishiokaaaaa6666.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-292100" class="wp-caption-text">北九州フェニックスナインと。笑顔が絶えない</figcaption></figure>
北九州フェニックスでは「遅刻もOK」にした。
「血圧も体調も人それぞれ違うし、1年間ずっと万全なんてことはない。どうしても遅刻してしまうことがあります。ウチの選手は車で通っている子が多いから、寝坊するとめちゃくちゃ焦る。1分でも早く行こうとパニックになる。それで事故でも起こされたら最悪じゃないですか。二次災害を防ぎたかったから遅刻OKにしたんですよ。すると何が起きたか。規則に縛られていないからこそ、選手は『自分がしっかりしないと』と考えるようになる。結果、遅刻がゼロになったんですよ。面白いもので『やれ、やれ』と言われたら人はやりたくなくなる。逆もまたしかり、なんですよね。あと、僕は選手の短所は一切、触らないことにしました。長所を伸ばすことに特化する。長所を伸ばす練習ってポジティブにできるもの。それと、これは僕自身が経験したことなのですが、長所がぐんぐん伸びると自信がついて、短所もそれに引きずられるように改善されるんですよ。これも新興チームだからできたこと。勝利を義務付けられているNPBの一軍だったら、チャレンジできなかったと思うんですよね」
育てたいのは「自分の頭で考えられるプレイヤー」だ。指示待ちの選手ではなく、監督にプランを提示できる選手。西岡は大阪桐蔭時代から、「監督は俺にどんなプレーを求めているんやろ？」と考えながら試合に臨んできたという。
「ここでバントしたら面白いな。セーフティだと相手が嫌がるな……とか、自分で試合を動かすわけです。守備も一緒。相手がどういう作戦でくるか何パターンも予想して、たとえば『三塁側にバント。ピッチャーがグラブで弾いたらジャンピングスローで一塁に投げる』とか、ほかの選手がエラーすることも含めて、何十パターンも頭に入れて動く。備えておくことで出足が早くなるんです。いいプレーも生まれる。何か起きてから動くとスタートが一歩遅くなるし、虚を突かれればエラーに繋がる」
いわば、「次代の西岡剛」を生み出すことが目標と言っていいだろう。
「村上宗隆選手（22）はすごい成績を残しました。彼は本物のホームランバッターですね。逆に言えば、彼ぐらいしかホームランバッターはいない。20本、30本打っても打率が2割5分じゃタイトルも獲れない。それよりコンスタントにヒットを2本、3本打つほうが勝ちに繋がるし、給料も上がるわけです。ホームランバッターを揃えるより、一番バッターを9人並べるほうが強いと僕は思ってるから。人生に正解はない。一生、試行錯誤が続くんじゃないですかね。僕は首位打者になり、日本シリーズで優勝、ＷＢＣでも優勝を経験した。もちろん、誇りには思ってますけど、何かをやり遂げたという感情は一切ないんですよ。『ゴール』できたと思えるとしたら、死ぬ間際やないですかね(笑)」
笑顔に充実感が滲んだ。
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大阪桐蔭の先輩＆後輩、阪神ではチームメートだった西岡剛と藤浪晋太郎。メジャーの先輩でもある西岡が可愛い後輩のチャンレンジ、監督兼選手としての自らの挑戦について熱く語った

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