加藤 久美子

<figure id="attachment_293222" aria-describedby="caption-attachment-293222" style="width: 3657px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="size-full wp-image-293222" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/8012cf7d74cdcc963b69718089268883.jpg" alt="" width="3657" height="2447"><figcaption id="caption-attachment-293222" class="wp-caption-text">北九州市立門司中学校の同級生が集合</figcaption></figure>
2022年4月に改正民法が施行され、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことで、福岡県北九州市では「成人式」の名称を新たに「二十歳の記念式典」に変更した。名称は変わっても変わらないのがド派手な衣装を身に着けて会場に集う若者たちの姿である。
かつては「族車」で会場に乗りつけたり、地元の不良チームどうしの抗争もあったりで、荒れた成人式になった時代もあったが、近年はその手のトラブルはほぼ、なくなっている。筆者が最初に取材に訪れた5年前と比べて、機動隊員の姿や警察車両も激減した。
「派手な衣装が注目されるようになってから、不良たちはおとなしくなったね。暴走族なんてもう何年も見てない。成人式は暴れたり妨害したりする場所じゃなくて、衣装や髪のセットにお金と時間をかける晴れ舞台、ということなんでしょう」（地元のタクシードライバー）
近年は、日本のマスコミのみならず海外メディアも取材に訪れる。そんな新成人のド派手衣装を手がけてきたのが、小倉北区にある貸衣装店「みやび」だ。地元の若者なら知らない人はいない「みやび」の池田雅さんに話を聞いた。
<figure id="attachment_291643" aria-describedby="caption-attachment-291643" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="60b99552"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/DSC06388.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291643" class="wp-caption-text">ド派手衣装の仕掛人・池田雅さん。もともとはブライダルで新婦の衣装を作っていた</figcaption></figure>
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2003年、とある2人の新成人の希望を叶えることから「ド派手衣装」はスタートした。
「『来年、成人式を迎える』という男の子2人がお店にやってきました。男性の場合、当時は成人式の2〜3ヵ月前に来店して衣装を選ぶのが普通でしたが、彼らは1年も前に店に来て、『成人式で金と銀のツートンカラーの衣装を着たい』と。当時は金銀単色の既製品しかなかったのですが、『これじゃ嫌。もっと派手なのがいい』というので『探しておきますね』と軽く返事をしました。ところがその後、毎月5000円とか1万円とか衣装代として持ってくるようになったので、これは本気だなと（笑）。彼らの要望に応えてあげたいという気持ちが強くなり、これまでにない派手な金と銀の袴を生地から作ることにしました。これが『金さん・銀さん』と呼んでいるド派手衣装の始まりです」
<figure id="attachment_291646" aria-describedby="caption-attachment-291646" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c7ace4a2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/DSC06404.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291646" class="wp-caption-text">これが「ド派手成人式」の始まりになった衣装。今ではもはや、若干地味に見えるかも…?</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="金さん・銀さんに憧れて"></div>
2003年当時は、北九州市の成人式の参加者は地味な色のスーツを着ていた。金さん・銀さんの衣装は非常に目立った。雅さんも「喜んでもらえてよかった」と一安心したが、それから間もなく「金さん・銀さんよりもっと派手な衣装で成人式に出たい」とみやびを訪れる若者が増え始めた。
彼らの要望を聞いているうちに、成人式の衣装はどんどん派手になっていったという。
「私、昔は結婚式の花嫁衣装を手がけていたんです。ヘアメイクも担当しました。『結婚式だから、たくさんの要望を全部叶えてあげたい』って思ってきました。成人式も一生に一度しかない人生の節目。お祭りでもあります。衣装についてはどんな無理難題でも何とかして叶えてあげたいんです。それで新たにデザインした生地を作ったり、小物類や衣装と同じ柄のマスクを作ったり。そうしているうちに、今のようなスタイルになってきました」
<figure id="attachment_293224" aria-describedby="caption-attachment-293224" style="width: 1109px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-293224 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/b5152ebf07b7398824caec6048481aa5.jpg" alt="" width="1109" height="1479"><figcaption id="caption-attachment-293224" class="wp-caption-text">八田宗一郎さんの衣装一式製作費は今回最高額、なんと約200万円(！)</figcaption></figure>
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北九州市の成人式が派手になったのは、同市が全国に先駆けてテーマパーク貸切の成人式を行ってきたことも関係している、と雅さんは言う。
「北九州市は、1991年からスペースワールド（北九州市八幡東区にかつて存在した大規模テーマパーク）で成人式を行っていました。ディズニーランドを貸し切るようになった千葉県浦安市より10年も先に、です。スペワで遊べる成人式、ということで出席率も一気に上がり、成人式イコール楽しい催しになり、男性も華やかな衣装を身にまとうようになったのだと思います」
<figure id="attachment_291647" aria-describedby="caption-attachment-291647" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="08b93832"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/DSC06430.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291647" class="wp-caption-text">華やかな衣装が勢揃い。1000組貸している状況だが、まだまだ在庫は豊富</figcaption></figure>
現在は小倉北区のメディアドームで開催されているが、ド派手具合は年々拡大している。新成人たちの中には高校生になった頃から「成人式には絶対みやびの衣装を着る！」と決意し、バイト代を握りしめて店を訪れる人も少なくないという。気になるお値段は衣装だけで30万円～。髪のセットや各種の装飾、幟や旗などまで入れると100万円を超えるケースも少なくない。
ただ、ここ2年はコロナの影響を受けて発注が激減したという。
「2020年は1400～1500組の衣装を揃えましたが、2021年は半減し、2022年はさらに減って500組ほどになりました。今年はだいぶお客さんが戻り、発送したのが800組、お店で着付けをしたのが200組くらいでした」
成人式当日には午前3時頃から200組の着付けを行うという。着付けの講師20名がスタンバイし、一人あたり10名の着付けを行う。髪型にこだわる男性陣は着付けのほかに、4～5時間かけて髪型をセットしレインボーカラーに染める。会場で聞いたところ、「一睡もしていない」という新成人も少なくなかった。
みやびに来る客の8割が、成人式終わりの1～3月の間に最初の相談に来て、その後も要望や打ち合わせ、各種の準備などに年末まで何回か相談に来るという。
「12月に入った頃から『この袴ありますか？』など、LINE経由で毎日問い合わせが来るようになりますよ」
どこまでド派手になるのか？　コロナからの完全復活を見据え、みやびでは早くも来年の成人式が始まっている。

加藤久美子

加藤博人

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