<figure id="attachment_291497" aria-describedby="caption-attachment-291497" style="width: 960px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="232f2cc3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/3c6c35635e22b9c6b2a752b8e7ccca70.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291497" class="wp-caption-text">手前のあずき色の車は初代フェアレディZ。同じ倉庫内にはフェアレディZの中でも希少な「Z432」もあり、国内で売れば3000万円、海外に出す場合は5000万円をくだらないといわれる</figcaption></figure>
<p>巨大な倉庫と思われる場所に、高級車がズラリと並んでいる。神奈川県相模原市内にあった、ある倉庫の中の様子だ。手前右のあずき色の車は「初代フェアレディZ」、左の銀色の車は入手困難とされる「ランボルギーニウラカンGT3（推定7000万円）」、その隣の黒い車がトヨタの最高級車「センチュリー（推定2000万円）」、さらに奥の白い車が「ロールスロイス」で、最上級車種のファントム（推定7000万円）だ。倉庫内には150台ほどの高級車が並び、2021年頃に撮影したものと思われる。事情を知る関係者の間でのちにこの倉庫の存在が広まり、「横領倉庫」と言われるようになった。</p>
<p>なぜ「横領倉庫」なのか。この倉庫は１月13日に自己破産の申告を行った物流会社の「（株）TRAIL（以下トレイル、代表・濱中治氏）」が持っていた“隠し倉庫”だったのだ。</p>
<p>「トレイル」は昨年９月に発覚した楽天モバイル元社員による46億円もの「巨額水増し請求事件」に関わっていた、取引先のひとつだった。</p>
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<h3>楽天モバイルに水増し請求した元社員はアマゾンからの“移籍組”</h3>
<p>楽天グループのトップ、三木谷浩史・社長兼会長は楽天市場、楽天銀行など「楽天経済圏」の顧客を楽天モバイルに取り込むことで、事業拡大を目指した。ただ、大手のドコモやソフトバンク、auと違い、携帯電話基地局を持っておらず、その拡大を急ピッチに進めるため、元社員は携帯電話基地局の部材、管理輸送などに関わっていた日本ロジステックとトレイルの２社の力を借りた。</p>
<p>元社員はこの２社の幹部らと共謀し、通常の業務委託料に加えて、架空のコンサルティング料などの名目で楽天モバイルに対して水増し請求をしていたことが発覚。楽天モバイルは２社との取引を停止した上で、裁判所に預金口座の仮差押さえを申請したのだった。</p>
<p>日本ロジステックは楽天からの発注事業が売り上げの大半を占め、多くの下請けも抱えていたため、昨年８月、預金が差し押さえられた直後に民事再生法適用の申請を余儀なくされた。負債総額は約151億円と巨額だ。基地局設置工事を楽天から委託されていたトレイルも取引の大半を楽天が占めていたため、事業停止に追い込まれた。事情を知る関係者はこう明かす。</p>
<p><span class="strongInContent">「水増し請求の発覚で昨年８月に懲戒解雇となった楽天モバイルの元社員はもともとアマゾンの社員でした。アマゾンで新しい運送の流れを作って、その実績を高く評価されて“移籍”してきたわけですが、元社員はアマゾンの仕事で実績をあげるときに、トレイルが深く関わっていたんです。その関係性があったため、トレイルは、楽天モバイルの水増し請求の件についても中心的に動いていたのではないか、といわれています」</span></p>
<p>この２社が楽天モバイルの仕事を受けるようになった2019年以降、売上高は凄まじい伸びを示し、トレイルも2019年３月期９億円だった売上が、2022年３月期には192億円まで伸びた。この３年間で２か所しかなかった拠点が、北は仙台、南は沖縄県名護市にいたるまで全国17か所まで増やし、運送業界の急成長企業として注目される存在になった。すると代表の濱中氏は手にした巨額のおカネをクルマに投じるようになっていった。</p>
<h3>巨額を投じてレーシングチームを結成</h3>
<p>あるレース関係者は、当時のトレイルのド派手な活動をこう振り返る。</p>
<p><span class="strongInContent">「2020年からレーサーの個人スポンサーをしていたトレイルは、2022年１月にTMAR（TRAIL MOTOR APEX RACING）というチームを結成してドリフトレース（車両の進行方向に対して意図的に横滑りで走る状態をキープしながら走行する競技）の世界に出てきました。とにかくやることが派手。競技車両も派手で莫大なお金をかけて作ってましたね。それを運んでくるトラックも派手で浮世離れしたデモカーが多かったですよ。</span></p>
<p><span class="strongInContent">高額報酬で集めたレーサーは一流でしたが、レース会場に来る運営スタッフは明らかにレース業界の人間じゃなかったですね。目的は結局、（楽天モバイルへの不正請求で得たお金を隠すための）資金洗浄だったのではないでしょうか」</span></p>
<p>チーム結成後、TMARの公式サイトには『FDJ初優勝』『D1奥伊吹単走＆追走優勝！』などなど輝かしい戦績が報告され、世界的に有名な人気カスタムブランドLBWK（リバティーウォーク）とのコラボイベントを頻繁に開催。昨年８月11日に富士スピードウェイで開催された米国発の改造車のイベント「FuelFest」においても新車両をお披露目した。</p>
<p>しかし、それらの動きが昨年９月上旬、ピタっと止まった。公式サイトも９月７日に閉じられている。９月11日に北海道で開催予定だった「LBWK × TMAR KAMUI DRIFT2022」も急遽参加を辞退したため、ポスターも急いで作り替えられた。ちょうどこの時期、昨年９月２日付で楽天モバイルは不正に関わった元社員の解雇を発表。濱中氏は、不正に加担していたことが少しでもバレないよう、活動を休止したのだろうか。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="何のために高級車を買い漁ったのか"></div>
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<figure id="attachment_291500" aria-describedby="caption-attachment-291500" style="width: 960px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6e71291a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/a07440795820f4886144ed3eb36d012e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291500" class="wp-caption-text">右端がベンツ、左隣が日産の３代目スカイライン通称「ハコスカ」。その隣の「ハコスカワゴン」も希少価値があるといわれる</figcaption></figure>
<h3>渦中の濱中氏は今、どこにいるのか？</h3>
<p>冒頭で紹介した通り、濱中氏が代表をつとめるトレイルが横領によって得たとみられる数十億のお金で高級車を買い、150台もの車を神奈川県相模原市内にある「横領倉庫」内に置いていた。１台数千万円の高級車から、１台１億円近い激レア国産旧車などもあった。それらの車の推定額を合計すると50億円以上に達するとみられている。</p>
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<p>トレイルと取引のあった旧車専門店員はこう明かす。</p>
<p><span class="strongInContent">「非常に価値のある古いスカイラインがゴロゴロありました。（濱中氏は）ただでさえ希少で高額な旧車をまた数千万円かけて改造したと聞いています。日本の旧車は今、世界的に人気があります。日本では新車時と同じノーマル状態にこだわりますが、海外ではカスタムやチューニングをして派手な見た目のパワフルなエンジンを積んだクルマが好まれます。</span></p>
<p><span class="strongInContent">投資目的で買いあさる資産家も少なくありません。横領倉庫のクルマたちもほとんどが海外の富豪に売られてしまったことでしょう。ですが、一方では、完全に売り払ったのではなく国税庁の査察対策のために一時的に海外に『逃がした』可能性も否定できません」</span></p>
<p>トレイルから発注を受けたものの、数千万円の改造費が未払いで困っている業者も多数存在する。その中のある業者がこう明かす。</p>
<p><span class="strongInContent">「金に糸目はつけない、改造費はいくらでも払うからと言われて横領倉庫近辺の自動車整備工場やチューニングショップなどに発注していました。最初にトレイルが“飛んだ”と騒ぎになった９月上旬。改造費未払いの業者さんたちはみんな、慌てふためいてクルマを（国税庁に）持っていかれないよう隠してましたよ」</span></p>
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<p>水増ししたお金でこれらのクルマを買い、改造して価値を高めて海外で売り、そのおカネを海外に置いていたと思われる渦中のトレイルの代表、濱中氏は今どこにいるのか。１月13日に自己破産手続きを申し立ててはいるが、トレイルの代理人弁護士は「破産手続きを申し立てる準備をしている段階で、まだ申し立てもしていません。現在、いろいろ整理しているところです。今、（濱中氏らが）どこにいるかもわかりません。（相模原市内に150台の高級車を停める駐車場を持っていたことも）知りません」</p>
<p>さらに東京・港区にあるトレイル本社や神奈川県相模原市にある管理本部、複数の営業所にコンタクトを試みたが、いずれも応答はなし。電話の呼び出し音がなったのは管理本部だけだった。</p>
<p>東京地裁においては2020年初頭からコロナ拡大防止を理由に、裁判官との面談は対面ではなく、電話で行うことになっている。したがって、濱中氏本人が破産手続きを申し立てたとしても現在は側近の関係者と共に、国外に逃亡している可能性が高いとされている。</p>
<h4>差し替え前ポスター</h4>
<figure id="attachment_291524" aria-describedby="caption-attachment-291524" style="width: 483px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3038feed"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/2071c02ff4453949bcea155a37ed6a26-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291524" class="wp-caption-text">トレイルが参加予定だったレース</figcaption></figure>
<h4>差し替え後ポスター</h4>
<figure id="attachment_291503" aria-describedby="caption-attachment-291503" style="width: 635px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="52244306"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/19832aba3646d3c0c66b830d6356ac9c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291503" class="wp-caption-text">差し替え後のポスターのメインイベント名からTMARの名前が消え、差し替え前にあったバックに写るTMAR所属のレーサー４名の写真が差し替えられた。また、差し替え前にあったポスター下部の36枚の写真もTMARの車両やトラックが写っていたため、すべて削除された</figcaption></figure>


加藤久美子

手前のあずき色の車は初代フェアレディZ。同じ倉庫内にはフェアレディZの中でも希少な「Z432」もあり、国内で売れば3000万円、海外に出す場合は5000万円をくだらないといわれる 巨大な倉庫と思われる

推定総額50億円か…楽天モバイル「横領疑惑取引会社」が隠していた高級車ズラリ「横領倉庫」内部写真

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