日本人女性が次々と向かうなか…「海外出稼ぎ売春」撲滅へアメリカが本気で乗り出した
現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和5年、歌舞伎町はいま……第43回
昨年一気に広まった「海外出稼ぎ」が、今年はますます加速しそうだ。直近の年末年始も、実家で過ごさず、海外の風俗やキャバクラでひと稼ぎして帰ってくる女性が跡を絶たなかった。
「やっぱり、チップ文化があるのがデカいですね」
そう語るのは海外出稼ぎ歴3年目のモモカ(仮名・23)だ。主にアメリカをメインに海外出稼ぎを行っている。
「2週間〜2ヵ月くらい海外に行ってガッツリ稼いで、日本ではゆるゆる働いています。日本のソープだと高級店でも110分のプレイ時間で4万円前後しかもらえないけど、アメリカだと8万円くらいなので単価が圧倒的に違いますね。それに加えて、向こうはチップもある。高額のチップを引けると、1プレイで10万円以上稼げることもある。多いときは一日40万円とか余裕でいくので、日本の風俗じゃほとんどありえない額をたたき出せるのが魅力ですね」
それだけ稼げるならと海を渡る女性は増えているが、徐々に雲行きも怪しくなってきている。需要の多いアメリカで、取り締まりが厳しくなっているというのだ。出稼ぎ女子と積極的に情報交換を行っている、ある女性インフルエンサーが明かす。
「大都市の空港では、若い日本人女性というだけで徹底的にチェックされるそうです。実際に入国を拒否された、という子も何人かいる。FBIも動き出しているとか、イミグレ(出入国審査カウンター)に『日本の売春婦を許すな!』と書かれた横断幕が掲げられているのを見た、といった噂まで出ています」
このインフルエンサー自身も、年末年始に観光目的でハワイを訪れたところ、入国を拒否されたという。
「話も聞いてもらえず、売春目的で来たと決めつけられたんです。スマホもすべてチェックされて、画像フォルダに水着や下着の写真を保存していたことを厳しく追及されました。女一人での旅行がかなり難しくなっていることを身をもって感じました」
アメリカが目を光らせているのは、女性だけではない。海外出稼ぎを斡旋しているエージェントの撲滅にも動き出しているという。
「働く店を自分で探して海外に行く子もいますが、エージェントに依頼・斡旋されて出稼ぎに行く子も少なくありません。実際、SNSにはいま、エージェントを名乗るアカウントが溢れていますからね。渡航歴に怪しい点がある場合は、男性でもエージェントではないか疑われて厳しく追及されるそうです」
海外出稼ぎを行う猛者(もさ)の中には、怪しまれそうな写真はスマホからすべて削除、アメリカの大学のパンフレットを取り寄せて「来年以降の進学先の視察」という名目で入国する者もいるという。
だが、そんな取り締まりの厳しいアメリカは避け、別の国に活路を見出そうという動きもある。前出のモモカが語る。
「アメリカはリスクが高くなってきたので、次はシンガポールやタイに行こうかなと思っています。ツイッターを見ていると、そういった国の案件も頻繁に流れてくるので。でも、他の国でも私服警官による逮捕やトラブルの噂は聞くので、しばらくは様子見かなぁ」
SNSには、海外出稼ぎの派手な成果を報告する投稿がたびたび上がっている。だが、目立てば規制されるのが当たり前。軽いノリで海外出稼ぎに行こうとするのは、控えたほうがよさそうだ。
佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中
『FRIDAY』2023年2月3日号より
連載記事
- 取材・文:佐々木チワワ
- 写真:結束武郎
ライター
’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、大学ではフィールドワークと自身のアクションリサーチを基に”歌舞伎町の社会学”を研究。主な著書に「ホスト!立ちんぼ!トー横! オーバードーズな人たち ~慶應女子大生が歌舞伎町で暮らした700日間~」(講談社/'24年)、「歌舞伎町モラトリアム」(KADOKAWA/'22年)、「『ぴえん』という病 SNS世代の消費と承認」 (扶桑社新書/’21年)がある。また、ドラマ「新宿野戦病院」(フジテレビ系)など歌舞伎町をテーマとした作品の監修・撮影協力も行っている。