コラムニスト、小説家、ライター。秋田県出身。立教大学文学部日本文学科卒。2万人以上のワーキングウーマンの仕事、恋愛、婚活、結婚を取材。女性目線のコラム「”賞味期限”が女を不機や嫌にする」（現代ビジネス）などや映画コラムも。ルポ「同窓会恋愛」（婦人公論）、「高学歴女性の貧困」（サンデー毎日）など。「戦略的に離婚しない女たち」（週刊朝日）などで夫婦問題にも言及。「33歳女の壁その後」（朝日新聞社telling）では40万以上のPVを獲得。2020年4月日刊SPAの記事でYahoo!ランキング総合第一位に。連載小説「眠れない夜」（Wome）ランキング第一位。2007年10万人に一人の難病・ギランバレー症候群を後遺症なしに完治。

夏目 かをる

<figure id="attachment_293884" aria-describedby="caption-attachment-293884" style="width: 5760px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4f913eb6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/aflo_23388459.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-293884" class="wp-caption-text">マッチングアプリを利用した男女間のトラブルが多発（写真はイメージです。画像：アフロ）</figcaption></figure>
明治安田生命保険相互が昨年11月に行った調査によると、５人に１人がマッチングアプリで成婚しているという。
プロフィールなど個人情報を登録し、検索して相手を探し合うマッチングアプリ。実に手軽でしかも女性はほぼ無料。男性は有料だが、結婚相談所に入るより格段に安い。
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一方で結婚相談所と異なり、独身証明書の提出は「任意」あるいは不要のため、遊び目的の輩や悪女が多数混じっている。さらに婚前詐欺をはじめとするトラブルに巻き込まれる人が後を絶たず、アプリには大きな罠が潜んでいるのだ。
婚活アプリによる詐欺被害の実態を、調査だけでなく依頼者の問題解決までサポートする探偵事務所の協力のもと再現してみた。最近は浮気調査よりもアプリ詐欺の被害が倍増しているという。30代の探偵から婚活アプリの詐欺事件を聞いた。
<h2>〈事例１〉川口春奈似の人妻に300万円騙し取られた営業マン</h2>
<figure id="attachment_293886" aria-describedby="caption-attachment-293886" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2fb7a7fb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/eb5e07e3ec45d217ff7cfee82dcc9a92.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-293886" class="wp-caption-text">男女トラブルについて解説する探偵</figcaption></figure>
メーカー営業職の菊池徹さん（仮名・45）はマッチングアプリで知り合った32歳の主婦、美緒さん（仮名）と最初は飲み友達として付き合うことにした。
美緒さんのプロフィールには「離婚考案中」とあったため、「結婚の可能性」を期待していた菊池さん。目がパッチリの美緒さんは女優の川口春奈似の美女。ぽっちゃり体型の菊池さんはこれまでモテた経験はなく、最後に女性とデートしたのは10年前。そのため美緒さんにぞっこんになった。
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居酒屋やドライブなど数回デートを重ねるうちに、２人は男女の関係に。すると１ヵ月後に美緒さんが「夫にバレてしまった」と菊池さんに、涙でこう訴えたという。
「夫は300万円払えば、離婚に応じると言うの。離婚したらあなたと結婚したいわ。だから300万円を立て替えてもらえないかしら」
菊池さんは、キャッシュで300万円を美緒さんに渡した。菊池さんが語る。
「ところがお金を渡した翌日から、彼女と音信不通になってしまったんです。ラインをブロックされたのか、既読にもなっていないんですよ」
美緒さんの身に危険があったのではという心配と、一方で騙されたのではないかという疑惑が募っていった。菊池さんは探偵事務所に依頼する。
「ドライブの帰りに彼女を家まで送ったので、住所を覚えていました。そこで探偵に調査してもらったら、やっぱりというか……」（同前）
東京都と神奈川県の県境の一軒家に夫と一緒に暮らしていた。夫と共謀して、マッチングアプリで複数の男性と美緒さんが付き合い、同じような手口で金を巻き上げていることが内偵でわかったという。
「直接訴えると逆に夫から妻との間に不貞行為があったという理由で慰謝料を請求されることもありうる、と探偵からアドバイスされました。そこで結婚詐欺の証拠として彼女とのラインのやり取りをかき集め、弁護士に依頼して訴えました」（同前）
互いの弁護士が介入したこの事件は、損害賠償金200万円が菊池さんに払われた。
<div data-friday-nextpage-lead="裏切られたのに慰謝料を払った驚きのワケ"></div>
<figure id="attachment_293887" aria-describedby="caption-attachment-293887" style="width: 5760px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="04cd4e2d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/aflo_23388465.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-293887" class="wp-caption-text">結婚しても想定外の事情で離婚になることも多い（写真はイメージです。画像：アフロ）</figcaption></figure>
<h2>〈事例２〉24歳年下の中国人女性と結婚した経営者の末路</h2>
東海地方に住む経営者の佐藤大輔さん（仮名・52）は、マッチングアプリで人気の「ペアーズ」で知り合った28歳の中国人女性と結婚した。さらさらのロングヘアにスレンダーな中国人妻を、佐藤さんは周囲に自慢していた。
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ところが性行為を求めても応じないどころか、妻は朝10時に家を出て翌朝７時に帰宅する。妻に理由を聞いても答えてくれなかったため、佐藤さんは妻が永住権欲しさに偽装結婚をしたのではと疑った。夫婦の関係は最初から破綻していたため、佐藤さんは離婚を願い、妻の素行調査を探偵に依頼した。
「探偵の調査結果を見て、驚きました。妻は東海地方の大都市の性感マッサージ店で働いていたんです。そこは看板がなく、不法営業を行っている気配もありました。しかも店の経営者とラブホテルから出てくる画像まで。激怒しました」
ところが探偵から「これ以上の調査はストップ」と制止された。実は中国人妻と関係がある性感マッサージ店の店長は、ヤクザとも関わっている反社。深入りするとリスクが高くなるため、探偵からこれ以上調査できないという申し出があったという。
「不貞行為があったから離婚調停を組んで離婚して慰謝料をもらうべきですが、妻のバックに半グレがいるなら命の危険があるかもしれません。そこで探偵から慰謝料を払って円満離婚を勧められました」（佐藤さん）
佐藤さんはさっそく妻に離婚を申し出た。すると２、３日後に「いいよ」と了承してもらい、500万円の慰謝料を払った。
夫婦らしいことは何一つなかった結婚生活だったが、命の安全と引き換えならば500万円は決して高額ではないのかもしれない。
<h2>〈事例３〉39歳の女性の焦りにつけこんだ罪深い既婚男性</h2>
<figure id="attachment_293888" aria-describedby="caption-attachment-293888" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="89dfc51e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/2fbd9cb8d0f45a75d77d1a181d0eff49.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-293888" class="wp-caption-text">小型カメラやICレコーダーなど探偵のアイテム</figcaption></figure>
都内在住でイベント関連企業に勤務する阿部ゆかりさん（仮名・41）は３年前からマッチングアプリで知り合った２歳年上の公務員の男性と付き合っていた。知り合った当時は39歳。結婚を焦っていた。そのため男性が結婚を前提に付き合ってくれていると信じていた。
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「ところが昨年12月に、彼から突然別れ話を切り出されたんです。理由は彼の母親が精神を病んで治療中であることと、エイズ検査の結果、陽性だとのことで。子供を作れないから円満に別れようと言われて、唖然としました」
付き合った当初から男性の母親の病気のことを聞かされていたため、結婚できない理由の一つに挙げられても納得できなかった。
別れの理由に納得いかなかったゆかりさんは、探偵に調査を依頼したところ、探偵から「できるだけ引き延ばしをしてくれ」と頼まれた。そこで男性に「エイズ検査の証明書を見せて」と申し出るが、男性はのらりくらりとかわしたという。
「デートはいつも土曜日で、外で会っていました。彼の父親は東北地方に単身赴任をしていて、実家には病気の母がいるからといって、一度も行ったことはないです」（同前）
結婚するつもりで付き合っていた男性からいきなり別れ話をされたことに戸惑っていたゆかりさんは、探偵の調査結果を見て仰天した。彼には家庭があったのだ。
「母親の病気と父親の単身赴任は事実でしたが、彼には幼稚園に通う小さい子供が２人いて、奥さんは主婦でした」（同前）
ショックが大きすぎて、男に騙されていたという現実をなかなか受け入れられなかったという。だが弁護士の「法的にしっかりと責任を取ってもらいましょう」という力強い言葉に励まされ、民事で騙した男を訴えた。200万円を提示し、判決で150万円の損害賠償金をもらったという。心の傷を癒す術は現在模索中だ。
探偵会社の代表は「会っても簡単に相手を信用してはいけない」と助言し、「ベストの対策はアプリを使用しないこと」と話す。
とはいえ、出会いのチャンスが少ない人はアプリに可能性を感じているだろう。加害者にとって騙しやすい人には、共通の特徴があるようだ。
一つは恋愛経験が少ない人が狙われやすいこと。もう一つは、これまでモテなかった人がアプリで「いいね！」と承認されることで有頂天になり「暗黒の時代」が全部チャラになると錯覚して騙されてしまうことだ。客観性を持つことが難しいのなら、交際したら親族や友人らに紹介することも被害の防止に繋がるだろう。
さらに「お金をせびられる」などお金が絡んできたら怪しいと疑ってみよう。
女性の場合は、29歳や39歳など年代が変わる直前の焦りの時期に、弱みにつけこまれやすくなる。焦りと慎重は相反するものだから、信頼できる先輩や友人に紹介してみることも必要。くれぐれも２人きりで結婚話を進めないことだ。

アフロ

夏目かをる

結婚が成立したカップルの５人に１人が利用しているというマッチングアプリ。一方でトラブルも続出している。専門の探偵事務所が明かす泥沼の事件簿。他人事ではない背筋が凍る男女の実話を紹介したい。

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