『DayDay.』は大丈夫? ワイドショーが爆死する最大の原因は「メインMC選びの失敗」 | FRIDAYデジタル

『DayDay.』は大丈夫? ワイドショーが爆死する最大の原因は「メインMC選びの失敗」

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『DayDay.』メインMCに抜擢された南海キャンディーズの山里亮太(写真左)。’19年に女優の蒼井優(写真右)と電撃結婚。今年8月に第一子誕生を報告し、公私ともに絶好調だ
『DayDay.』メインMCに抜擢された南海キャンディーズの山里亮太(写真左)。’19年に女優の蒼井優(写真右)と電撃結婚。今年8月に第一子誕生を報告し、公私ともに絶好調だ

日本テレビ『スッキリ』の後継番組『DayDay.』のメインMCに南海キャンディーズ・山里亮太さんが起用されたのは非常に堅実な選択だ。はっきり言ってそんなに派手さはない。しかし日本テレビはある意味「置きに行った」と思えるほど、「外さない選択」をしたと私は思う。

ワイドショーのMCにはひとつ「絶対に必要な条件」がある。それは「華があって、しかも裏方に回れること」だ。

番組の顔になるわけだから、華がなければ視聴率はとれない。しかし、ワイドショーなのだから「日々扱う話題」や「スタジオに呼んだゲストたち」をうまく引き立て、番組を回し、「番組の空気や世界観」をうまく作り上げて「総合的に面白い番組」として定着させないと、番組は長くは続かない。

あまりに華のあるタレントがMCになってしまうと、「その人の番組」になってしまう。扱う話題やゲストが霞んでしまうのだ。そういう意味では、実はワイドショーのメインMCには「華がありすぎないお笑い芸人」か「万人に好感を持たれるアナウンサー」くらいが一番適している。

華がありすぎる芸人は面白すぎて、目立ちすぎるし「自分を消して裏方に回ること」ができない。アナウンサーは「裏方」のプロだが、「万人に好感が持たれる」レベルでないと華がないからやはりダメだ。

そういう観点で見回すと、安住紳一郎、羽鳥慎一、麒麟・川島明、ホンジャマカ・恵俊彰、宮根誠司、大下容子と、好調なワイドショー系番組のメインMCはだいたい「華がありすぎないお笑い芸人か万人に好感を持たれるアナウンサー」で占められている。

それでいうと山里亮太さんはまさにうってつけだ。しかも『スッキリ』の天の声からの流れでうまく『スッキリ色』を継承していく存在なので、これ以上の適任者はいないとも思える。さすが堅実な社風の日本テレビらしい、抜けのない一手だと感心してしまう。

実はワイドショーのメインMC選びには、日テレでなくとも「堅実でなければならない」大きな理由がある。「絶対に負けられない選択」であるからだ。

ワイドショーやニュース番組は、「企画がどんなにポンコツ」でも、「スタッフがどんなにポンコツ」でも、メインMC選びさえ間違っていなければ、いくらでも立て直しがきく。

企画は日々手直ししていけば修正可能だし、スタッフは教育することも、入れ替えることもできる。「帯番組」というものは、最初ダメそうに思えても、じっくり一歩一歩地道な改善を積み重ねれば、何かの「きっかけ」で大きく化けることがあるのだ。

しかし逆に言うと、メインMC選びを間違えたら、後でどれだけ手を尽くして立て直そうとしても、時すでに遅し、ゲームオーバーだ。

テレビマンはだいたい「このMCやばいかな?」と思ったら、他の出演者にテコ入れをして強めの人を持ってきたり、企画や演出を変えてみたり、セットを変えたり、放送作家を入れ替えたりいろいろ「延命策」を図ろうとするものだが、私の経験上、MCがイマイチなのに再起した番組はない。

そこには必ず「爆死の悲劇」が待っているのだ。

私がテレビ朝日時代に経験した「MC選びの失敗」による「爆死の悲劇」を2つ紹介しよう。「安直なMC選び」がそれはそれは悲惨な「爆死の悲劇」を招いた実例を見てみることにより、反面教師的に「過ちは繰り返さない」のが良いと思うからだ。

爆死の悲劇その①『スーパーJチャンネル』石田純一さんの場合

若い読者のみなさんは「本当に?」と思うかもしれないが、テレビ朝日系列の夕方のニュース番組『スーパーJチャンネル』の初代メインMCが石田純一さんだったことをご存知だろうか?

テレビ朝日は公式には認めていないが、「スーパーJチャンネルのJは純一のJ」と社内ではもっぱらの噂だった。1997年3月31日からわずか1年しか番組はもたなかったから知らない人が多くても無理はない。

しかもこの時は、金曜日だけメインMCが田代まさしさんだったから、実に驚きだ。ニュース番組だというのに、いったいどんな基準でMCを選んだのか? といまだに首を傾げてしまうが、ひとつだけ事実として言えることは、当時のテレビ朝日報道局のとても偉い人と石田純一さんは親戚関係にあった、ということだ。

その後MCを、当時『ニュースステーション』のサブMCとして人気だった小宮悦子さんに変えて、スタッフも大幅に入れ替えてプロデューサーも変えて、「ほぼ別の番組」として再スタートを切ることでようやく『スーパーJチャンネル』は再起の道を歩み始めることができたが、それでも長年他局の後塵を拝することになった。そして視聴率トップの座に着くまでには長い年月がかかったのだから、驚くべき「爆死事例」として語って良いのではないか。

誤解なきように言うと石田純一さんは非常に「いい人」だったし、スタッフ人気も高かった。そして石田さんが多才な素晴らしいタレントであることは言うまでもない。ただ、ニュース番組のメインMCにはどうにも合わなかったというだけだ。

爆死の悲劇その②『スーパーモーニング』前田吟さんの場合

これも若い読者のみなさんは「本当に?」と思うかもしれないが、いまや朝のワイドショーのトップを走る『羽鳥慎一モーニングショー』の枠でかつて放送していた『スーパーモーニング』のメインMCを、『男はつらいよ』シリーズなどで知られる俳優の前田吟さんが務めたことがあった。

このキャスティングには、大袈裟ではなくテレ朝中がぶったまげた。筆者自身、「前田吟???はあ?どこからそんな話が」と目を剥いて叫んだ報道の先輩の姿を鮮明に記憶している。前田吟さんをどうして起用したのか? 正確なところはいまだに定かではないが、当時のテレビ朝日の超絶偉い人の奥さんが「前田吟さんのファンだった」という噂がまことしやかにテレビ朝日社内では囁かれている(いまだに)。

そして、テレ朝のワイドショー関係者の間では、「前田吟さんの名前」は禁句だ(いまだに)。

2002年4月から9月までのわずか半年で「前田吟さんのスーパーモーニング」は終焉を迎えた。この番組は当時「ミスターモーニング」と呼ばれていたエースディレクターのプロデューサーデビュー作だったのだが、その「才能ある情報番組制作者」はこれを最後にモーニングを去ることとなり、今でも「前田吟ショック」として関係者の間で語り継がれている。

これも、言うまでもないが前田吟さんが悪いわけでは少しもない。あくまでも「ワイドショーのMCに向かなかっただけ」だ。いつの時代も「メインMC選びの失敗」は取り返しのつかない悲劇を生むのだ。だから、『DayDay.』で堅実な選択をした日本テレビの慧眼を褒めたいと思う。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。江戸川大学非常勤講師。MXテレビ映像学院講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)。『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が2月22日発売。

  • 撮影原 一平

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