<h3><span class="strongInContent">世界最大の高級ブランド複合企業…</span><span class="strongInContent">DFS</span><span class="strongInContent">や韓国の芸能事務所、渋谷の再開発にも投資</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>日本人にも大人気の「ルイ・ヴィトン」や「ディオール」、「セリーヌ」「フェンディ」に「ティファニー」「ブルガリ」「ウブロ」「リモア」そして「ドン ペリニヨン」に「ヘネシー」など。</p>
<p>実は、これら世界的な高級ブランドは全てLVMH（モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン）という巨大企業が有し展開しているものだ。LVMHの方針により、個々のブランドの独立色が強く打ち出されているため、多くの消費者は、同じ会社系列と意識することなく、LVMHの様々なブランド品を購入している。</p>
<p>フランス・パリを本拠地とする巨大コングロマリット（複合企業）であるLVMHは、1987年に世界的高級ブランドで知られる「ルイ・ヴィトン社」とシャンパンやコニャックなどで有名な「モエ・へネシー社」の合併により設立された。その後も様々な高級ブランドの買収を進め、2021年に加わった「ティファニー」を含め、LVMHは、現在75もの高級ブランドを保有している。</p>
<figure id="attachment_300355" aria-describedby="caption-attachment-300355" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="82344a43"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/1_aflo_175638882.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300355" class="wp-caption-text">1987年に「ルイ・ヴィトン社」とシャンパンやコニャックなどで有名な「モエ・へネシー社」の合併により設立されたLVMH（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">事業の分散と地域の分散が効いている</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>LVMHの最大の特徴は、事業セクターと売上地域がともに分散されていることだ。75あるブランドは、①ファンション＆レザーグッズ、②ワイン＆スピリッツ、③香水＆化粧品、④時計＆ジュエリー、⑤セレクティブ・リテーリング、⑥その他の活動と6つの部門にバランスよく配置されており、これら全ての分野で売上が増加している。</p>
<p>地域別売上高では、本拠地のフランスを含む欧州で24％、米国が27％、日本が7％、日本を除くアジアが30％と、地域バランスも完璧だ。</p>
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<h3><span class="strongInContent">コロナ禍・インフレでも売上高は</span><span class="strongInContent">11</span><span class="strongInContent">兆円を突破</span></h3>
<p>実際、LVMHの2022年末の通期決算では、コロナやインフレなどの逆風をものともせず、売上高が前期比23％増の791億8400万ユーロ（約11兆857億円／1ユーロ＝140円換算・以下同）、純利益は同17％増の140億8400万ユーロ（約1兆9717億円）と増収増益だ。</p>
<p>部門別の売上高では、主力事業の「ファッション＆レザーグッズ」が同25％増の386億4800万ユーロ（約5兆4107億円）となり、特に「ルイ・ヴィトン」単体の売上は200億ユーロ（約2兆8000億円）を突破した。その他、「時計＆ジュエリー」、「ワイン＆スピリッツ」などを含め6部門全て売上が増加している。</p>
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<p>また、地域別の売上高では、フランスが同47.6％増、フランスを除く欧州は同28.9％増、米国は同29.8％増、日本は同24.0％増といずれも大幅な増収だった。</p>
<figure id="attachment_300356" aria-describedby="caption-attachment-300356" style="width: 3500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="078b2275"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/2_aflo_55645833.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300356" class="wp-caption-text">2022年末に発表された通期決算では、売上高が前期比23％増の791億8400万ユーロ、純利益は同17％増の140億8400万ユーロと増収増益だった。写真は、LVMHのトップであるベルナール・アルノー会長兼CEO</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="イーロン・マスクを超える世界一の富豪"></div>
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<h3><span class="strongInContent">イーロン・マスクを超える世界一の富豪</span></h3>
<p>こうした好調な業績と堅調な株価の推移を受けて、LVMHのトップであるベルナール・アルノー会長兼CEOは、米国ブルームバーグによれば、昨年末には、テスラのCEOでもある米起業家イーロン・マスクを抜いて、欧州一の富豪から、世界一の富豪に踊りでている。その総資産は日本円に換算して23兆円を超えるという。</p>
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<p>LVMHでは、お馴染みの高級ブランド以外にも、世界中の富裕層を主要なターゲットとした投資開発の運営を行っている。例えば、世界400カ所以上に店舗を展開し空港の免税品販売でおなじみのDFSや、フランスでは、五つ星ホテルや3つ星レストランも運営している。</p>
<p>また、投資・開発事業では、2014年8月には、LVMHグループの投資会社を通じて、韓国の大手芸能事務所YGエンターテインメントに出資したり、LVMHグループの投資ファンドが、シンガポールの著名な中華レストラン「クリスタル・ジェイド」を運営する会社を買収したりもしている。</p>
<p>日本においては、LVMHグループの不動産開発投資会社が、東急及び東急百貨店と共同で、渋谷の東急百貨店本店跡地に、2027年度の竣工を目指し高級ブティックやホテル、レジデンスなどからなる複合施設（地上36階、地下4階）の建設を予定している。ホテルは外資系ラグジュアリーブランドホテルの「ザ・ハウス・コレクティブ（The House Collective）」が日本に初進出する予定だ。</p>
<figure id="attachment_300358" aria-describedby="caption-attachment-300358" style="width: 5000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="396b7fdf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/3-1_main.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300358" class="wp-caption-text">渋谷の東急百貨店本店跡地に建設予定の複合施設（東急株式会社のプレスリリースより）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_300360" aria-describedby="caption-attachment-300360" style="width: 3226px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="347e9380"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/3-2_sub7.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300360" class="wp-caption-text">日本初上陸のスワイヤー・ホテルズが展開する「ザ・ハウス・コレクティブ」。写真は、イタリア建築家ピエロ・リッソーニが担当した「ザ・ミドルハウス上海」（Swire Properties Hotel Management Limitedのプレスリリースより）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">この先も富裕層は増加し、</span><span class="strongInContent">LVMH</span><span class="strongInContent">も更に成長へ</span></h3>
<p>LVMHが好調な背景には、「世界的なカネ余り」も関係している。コロナショックにより、LVMHの主要マーケットである日米欧では、史上最大規模の金融緩和策がとられて、世界中でおカネが市中に流れ込むことになり、株式市場や不動産市場が高騰した。こうしたカネ余りの恩恵を最も受けたのが、既に資産・資金を十分に持ち、その資産・資金を元手に更なる投資や消費ができたLVMHの主要顧客でもある国内外の富裕層だったワケだ。</p>
<p>足元では、利上げを伴う金融引き締めに転じた米国や欧州に続き、ついに日本でも日銀が従来の金融緩和策を「修正」した（2022年12月）ものの、賃金上昇が伴わない物価高が続く国内状況を勘案すれば、植田日銀新総裁の就任以降も直ちに大幅な金融政策の変更は困難であり、しばらくは従来に準じたカネ余り状態が続きそうだ。<span class="strongInContent"> </span></p>
<h3><span class="strongInContent">日本の富裕層は</span><span class="strongInContent">336</span><span class="strongInContent">万人</span></h3>
<p>実際のところ、保有する株式や不動産価値の増加や新たなる投資で得られた利益などもあり、日本を含む世界の富裕層数は増加している。</p>
<p>クレディスイスの「グローバル・ウェルス・レポート2022」によると、日本の富裕層（100万ドル以上の資産を持つ成人数）は、336.6万人に達している（2021年）。さらに、2026年には、2021年と比較してなんと42％増の479万人に達すると予想されている。</p>
<p>世界最大の富裕層国である米国でも富裕層数は増加しており、2021年は2448万人、2026年には13％増加して2766万人に達するという。</p>
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<p>日米に加え新興国などにおける富裕層の増加を主因に、2021 年末の全世界の富裕層の数は、6248万人に達している。2026年には40％増加して8756万人となり、今後5年間で約2500万人も増加するという。富裕層の増加と歩調を合わせるように、高級ブランドを多数抱えるLVMHの業績も好調を維持しそうだ。<span class="strongInContent"> </span></p>
<h3><span class="strongInContent">LVMH</span><span class="strongInContent">のビジネスモデルから学ぶ</span></h3>
<p>世界最大の高級ブランド複合企業のLVMH。そのトップは世界一の富豪だ。事業と地域の分散とクロスセリングに強みがあり、個々の高級ブランドの独立色が強く、消費者が同じ会社系列と意識することがないのも特徴だ。</p>
<figure id="attachment_300362" aria-describedby="caption-attachment-300362" style="width: 5070px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8f72d9e9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/4_aflo_152465770.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300362" class="wp-caption-text">ティファニーの買収劇が話題になった2021年、LVMHグループが買収したドイツ発のフットウェアメーカー「ビルケンシュトック」。同じドイツのブランドでは、「リモワ」も2016年にLVHMグループの傘下に</figcaption></figure>
<p>カネ余りが続くなか、富裕層はこの先も増加しそうだ。安売りする必要がなく、大量生産大量出店も不要であり、むしろ、毎年値上げするのが基本である高級ブランド。この先もLVMHは、株価上昇・高収益が期待できそうだ。</p>
<p>こうした①富裕層に特化、②世界的ブランドを持ち、③事業は多角化、④値上げで増収増益、というビジネスモデルが確立できている日本企業は見当たらない。古い体質を引きずる日本企業はJTC（ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー）と海外からも揶揄されるなか、LVMHに学ぶべき点は多そうだ。</p>


株式会社マリブジャパン代表取締役、金融コンサルタント。1969年、岐阜県生まれ。三菱銀行、シティグループ証券、シティバンクなどを経て、2013年に同社を設立。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。映画「スター・ウォーズ」の著名コレクターでもある。1993年慶應義塾大学経済学部卒、2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。著書に『銀行ゼロ時代』（朝日新聞出版）、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』（講談社+α新書）、『地銀消滅』（平凡社）など多数。

高橋克英（たかはし・かつひで）

アフロ

「ルイ・ヴィトン社」と「モエ・へネシー社」の合併により設立された巨大複合企業LVMH。現在75もの高級ブランドを保有しているが、その傘下には韓国の芸能事務所やDFSなど意外な企業名も…。

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