<figure id="attachment_300435" aria-describedby="caption-attachment-300435" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="07467f26"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/KB6_5568.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300435" class="wp-caption-text">愛用しているという長州力とのコラボシャツで現れた。「プロレスLOVE」ポーズを決めると、取材会場へ”リングイン”！</figcaption></figure>
「おいFRIDAY！　来るのが遅いよ。普通は引退試合の前に来て、煽るのが仕事だろ（笑）！」
眼をカッと見開き、厳しい檄を飛ばしたかと思えば、豪快に笑って場を和ませる。「プロレスリングマスター」武藤敬司（60）は登場から″らしさ″全開だった。
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２月21日に東京ドームで行われた「武藤敬司引退試合」で現役生活にピリオドを打った。平日にもかかわらず会場には３万人を超える観客が押し寄せ、独占生配信した『ＡＢＥＭＡ ＰＰＶ ＯＮＬＩＮＥ ＬＩＶＥ』ではプロレス興行の最高券売数を更新した。レジェンドの幕引きとしては最高の舞台だったが、その裏で、武藤はある恐怖を抱えていたという。
「試合前は不安で不安で仕方なかったよ。１月22日の試合で、両足のハムストリングの肉離れを起こしたんだ。試合が来るのが怖いって感じたのは初めてだったな。毎日、八王子にある専門施設に通って、患部に負荷をかけないように筋トレをしたり、高気圧酸素治療室に入ったり。やれることは全部やったよ」
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両ヒザには人工関節が入り、身体は満身創痍。痛み止めの注射を打ちながらの戦いだった。それでもリング上では痛みを堪える姿すら見せず、自身を「憧れの存在」と公言する内藤哲也（40）と30分近くにわたる死闘を演じ、敗れた。
「負けた瞬間はドームの天井を見上げて『終わったな』って。達成感とか、感動とかは、特になかったな。でも通路に引き上げてからは、気付けば試合の反省をしてるんだよな。次の試合なんてねぇのに（笑）。関係者の挨拶回りやら、記者会見やらに追われて、気付いたら深夜。帰って女房が作ってくれた料理を食べて、一人、焼酎で乾杯したよ」
引退試合について、こんな逸話も明かした。
「対戦相手はいろんな候補があったんだ。一番の大物は″ザ・ロック″ことハリウッド俳優のドウェイン・ジョンソン（50）。でもよ、アイツは破格のギャラを要求してきた。『ふざけんな！　友情価格とかねぇのかよ』ってツッコんじまったよ」
蝶野正洋（59）との前代未聞の″２本目の引退試合″については、こう振り返る。
「最後の相手に蝶野を指名するのは、会場が東京ドームに決まった去年の９月から思い描いていたんだ。デビュー戦も最後の試合も同じ選手なんてドラマチックだろ？　リング上で対峙して、アイツの鋭い眼を見た時には興奮した。全盛期と同じ……いや、それよりもっと鋭かった。最後の最後に全力のアイツと戦えたのは誇りだよ」
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<h2>見つけた″新たな生きがい″</h2>
武藤は’84年、21歳の時に新日本プロレスの門を叩いた。橋本真也（享年40）や蝶野と共に「闘魂三銃士」を結成。’88年からは自身２度目の海外修行を敢行し、「悪の化身　グレート・ムタ」として全米をも席巻した。さらに新日本、全日本、プロレスリング・ノアとメジャー３団体で、シングル＆タッグ王座を完全制覇するという史上２人目の快挙も成し遂げている。
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かつて武藤は「プロレスはゴールのないマラソン」という名言を残した。走り続けた38年間を終えた今、生活はどのように変化したのか。
「さすがに引退試合の翌日は休んだなぁ。でも翌々日からは現役時代と同じルーティーンで生活してるよ。朝５時半に起きて、朝ドラを見て、８時半にはジムに向かう。帰ってくるのが昼の１時半で、その後は仕事をこなす。この生活をずっと続けてるよ。 
現役時代の筋肉量に合わせて人工関節を入れてるから、筋肉が弱くなると器具に身体が耐えられなくなっちまうんだ。だから鍛え続けないといけない。生涯トレーニングだよ。楽隠居する気はサラサラねぇよ。でもその生活が、俺には合ってるんだよな」
それでも一つの疑問が湧いてくる。戦いのない日々に物足りなさを感じないのか。率直に質問をぶつけると、意外な答えが返ってきた。
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「物足りなさはねぇよ。それに戦いは日常のいろんな場面にあるじゃねぇか。たとえば二日酔いで辛い日もサボらずにジムに行くとか。それも立派な戦いだろ（笑）。楽したいって思う自分との戦い。それはどんなことでも変わらねえよ」
今後の野望について聞くと、「そんなもん、具体的にねぇよ」と言いながらも、一つだけ挙げてくれた。
「俺は飲み道楽だからさ。当面の楽しみは、引退試合の後に５～６本もらったオーパス・ワンを飲むことかな。トレーニングした後に飲む酒が、一番うめぇんだ」
<h2>猪木との思い出で見せた涙</h2>
武藤の現役生活は、師と仰ぐアントニオ猪木（享年79）と同じ38年間だった。55歳で引退するまでアントニオ猪木であり続けた師匠について、60歳まで武藤敬司を貫いた弟子は何を思うのか。
「俺の思い出の中の猪木さんは、いつも怒ってるんだよ。俺が作った『作品』の中でも、’95年の高田延彦戦は今でも『名試合だった』っていろんな人から褒めてもらえるけど、あの試合の後でさえ猪木さんには怒られてんだから（苦笑）」
猪木は武藤の派手なポーズや華やかなパフォーマンスを嫌がり否定してきた。闘志を前面に出す「闘魂・猪木プロレス」と真逆なスタイルに、解説席から辛辣な言葉を浴びせたこともある。だが「それだけ猪木は武藤を意識していた」という見方をするレスラーや関係者は多い。
その点を問うと、武藤はじっと黙り込み、そしてポツリと呟いた。
「昨年、引退試合の開催が決まってからずっと、ビデオでいいから猪木さんに出演してほしいって思ってたんだよ。猪木さんの誕生日は2月20日で、俺の引退試合が21日。猪木さんは本当なら80歳の誕生日を迎えていた。でも最後まで打診するタイミングがなかった。それでも亡くなった後に、猪木さんに近しい人から、『80歳になって最初の仕事が武藤かよ、とよくボヤいていたよ』って聞いて。直接言わなくてもわかってくれていた。ずっと気に掛けてくれてたのかって思うと、ウルッと来たよ……」
取材中、一度も詰まらなかった武藤だが、この時だけは言葉を探す沈黙があった。その瞳は涙ぐんでいるようにも見える。もし師匠が東京ドームに来場していたら、愛弟子の引退試合にどんな感想を持ったのだろうか。
「……わかんない。でも変な話、俺は猪木さんの引退試合があんまり記憶にないの。もちろん『道』を詠ったこととかは覚えてるよ。でも誰と試合したかとか、内容とかは覚えてない。だから、自分の試合はすごい意識した。絶対に記憶に残るものにしたいって」
「いい試合でした」と伝えると、武藤は嬉しそうに笑顔をのぞかせた。最後には「最近の『ＦＲＩＤＡＹ』はグラビアばっかりで家に持って帰れないよ（笑）。もっとスクープも頼むよ！」と本誌への″提言″まで飛び出した。リングを離れても、38年間の戦いの雄姿はファンの心に永遠に焼き付いている。
<figure id="attachment_300434" aria-describedby="caption-attachment-300434" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="350ba763"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/10000000000000090960_20230306120507019417_P230222000083.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300434" class="wp-caption-text">引退試合で内藤と技を掛け合う武藤。両脚に爆弾を抱えながら、現役トップレスラーをあと一歩まで追い詰めた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_300436" aria-describedby="caption-attachment-300436" style="width: 2101px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="232b79f7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/KB6_5806.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300436" class="wp-caption-text">試合とは打って変わり、取材中は笑顔が絶えなかった。取材時間をオーバーしても、最後まで笑って取材に応じた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_300437" aria-describedby="caption-attachment-300437" style="width: 1667px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7641face"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/KB6_5823.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300437" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　武藤敬司激白！ 「楽隠居する気はサラサラねぇよ！」引退記念スペシャルインタビュー</figcaption></figure>
<figure id="attachment_300438" aria-describedby="caption-attachment-300438" style="width: 1667px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="480ea323"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/KB6_5902.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300438" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　武藤敬司激白！ 「楽隠居する気はサラサラねぇよ！」引退記念スペシャルインタビュー</figcaption></figure>
<figure id="attachment_300439" aria-describedby="caption-attachment-300439" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0c3adf2c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/KB6_5913.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300439" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　武藤敬司激白！ 「楽隠居する気はサラサラねぇよ！」引退記念スペシャルインタビュー</figcaption></figure>
『FRIDAY』2023年3月24日号より

茂田浩司

小檜山毅彦　産経新聞社（引退試合）

２月21日に東京ドームで行われた「武藤敬司引退試合」で現役生活にピリオドを打った"武藤敬司"に引退記念スペシャルインタビュー！プロレスリングマスターが還暦を越えて描く新たな野望とは！？

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