料金は4~5倍でも予約殺到…「マリカー」そっくり「ド派手改造レンタカー」は公道を走って平気なの?
外国人観光客に大人気だけど……
ドゥルル……ドゥルルル……。
エンジン音を轟(とどろ)かせながら、人気ゲーム『マリオカート』を思わせる集団が、東京・秋葉原のど真ん中に現れた。奇抜な衣装を着たドライバーたちはスマホを向けた通行人に笑顔でピース。信号が変わると颯爽と走り去っていった──。
数年前に都心の繁華街でよく見た光景が復活しつつある。きっかけは昨年10月に行われた、訪日外国人向けの入国規制の緩和だ。
「日本を訪れる外国人の数は、今年1月には150万人弱まで回復しました。コロナ前の’19年1月と比べて約56%の水準まで戻ってきました。それに合わせて、インバウンド向けのサービスもどんどん増えています。中でも外国人観光客から人気なのが、ド派手な車で都心を走るレンタカーサービスです」(自動車専門誌ライター)
冒頭のサービスを提供する『アキバカート』は’12年に日本で初めて公道カートのレンタルを始めた。コロナ禍では客足はまばらだったが、現在は連日、予約が埋まっている。料金は1時間5500円。安全面の対策としてツアー形式になっており、従業員に先導されて秋葉原周辺をドライブする。利用した外国人旅行者は、
「普通の車ではありえない体験ができて最高だった! そびえ立つビル、華やかなネオン、雑踏を行きかうたくさんの人々……。何もかもが新鮮でした」
と、興奮気味に感想を語った。
盛り上がりを受けて、昨年12月から新規参入した会社もある。『ICHIOKU TOURS』は、人気スポーツカー「ロードスター」の初代モデルを200万円かけてド派手に改造。海外でも「車好きの聖地」として有名な大黒パーキングや、レインボーブリッジなどの観光名所をガイドドライバーと巡る。料金は1時間半で1万6800円と、ツアーということもあり通常のレンタカー相場の4~5倍はするものの、予約が殺到中だという。
一方で、危険性を指摘する声もある。カートは車高が極端に低く、並走する車には見落とされがちだ。ロードスターはヘッドライトが色つきのもので、白色が義務付けられている道路運送車両法に抵触する。こういった車で公道を走ることは問題ないのか。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が語る。
「カートは道路運送車両法ではミニカーに分類され、原動機付自転車として扱われます。そのため車高に関する規定はないんです。またロードスターのヘッドライトも基本は色つきですが、ボタン一つで白色に切り替えられる。法律スレスレの、ややグレーな状況だと思います」
さらに加藤氏は別の懸念点も指摘する。
「隊列を組んで走るため、一般の車の邪魔になることは否定できません。また隊列維持のため、強引な割り込みが発生することもある。危険運転にならないよう、ドライバーには注意が求められます」
類似サービスのトラブルといえば、’17年に任天堂が品川区のレンタカー会社を提訴したことが記憶に新しい。マリオなどのコスプレを無断使用したことに加えて、カートの利用法にも注目が集まった。今回のブームが、大事故につながらなければよいのだが……。




『FRIDAY』2023年3月31日・4月7日号より
PHOTO:加藤博人 ICHIOKU TOURS