<figure id="attachment_303317" aria-describedby="caption-attachment-303317" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f4e68fce"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/87212365f2a58f5159352f9b03924981.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303317" class="wp-caption-text">ブラント戦に勝利し、２度目のミドル級王者に輝いた直後の村田（&#8217;19年８月２日号）</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「自分自身がこれからのキャリアをしっかり作って、競技だけが人生ではない、と示すことで、これからのボクサーだけでなく、アスリートの良いロールモデルになればいいし、目指すべき未来はそこにあると思う」</span></p>
<p>３月28日、元WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太（帝拳ボクシングジム所属・37）が都内で会見を行い、現役引退を正式表明した。プロボクサーになった時の目標であったゲンナジー・ゴロフキン（カザフスタン）と昨年４月９日に２団体統一戦を行い、９回TKOで敗れた村田。その後、去就が注目されていたが、今年２月にジムの本田昭彦会長には正式に引退の意向を伝え、了承されていた。村田は、今後の動向について具体的な明言は避けた。だが冒頭の言葉に続き、</p>
<p><span class="strongInContent">「今を大事にして、瞬間を積み重ねた結果、何かが残る。神様からの試練に応える積み重ねだと思う」</span></p>
<p>と村田らしい独特の言い回しで心境を語った。本誌はこれまで何度か村田の独占インタビューを敢行。これまでの彼の人間味あふれる言葉の数々を振り返ってみたい。</p>
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<h3>ゴロフキンは怖くない。（怖いのは）自分を失う怖さです（’16年12月23日号）</h3>
<p>ロンドン五輪金メダルを手土産にプロ転向。これまで11戦全勝８KOと順風満帆な村田（30、当時）。12月30日には世界前哨戦が予定されており、その直前のインタビューとなった。村田は、</p>
<p><span class="strongInContent">〈いいパンチを打てているのは確かで、少しは自信もつきましたけど、自信なんて脆くも崩れやすいもの。『これでイケる！』なんて確信は今もないですね。僕は世界ランキング３位（WBOとIBF）ですけど、チャンピオンとは死ぬほど差があります〉</span></p>
<p>と語った。当時、世界チャンピオンに最も近いと言われ、飛ぶ鳥を落とす勢いの村田だったが、その発言は驚くほどネガティブだった。</p>
<p><span class="strongInContent">〈ネガティブ……というか、怖がりなんでしょうね。『イケる！』と思って潰された時のショックって、大きいんです。エクスキューズがない分、傷つく〉</span></p>
<p><span class="strongInContent">〈プロデビュー戦前、親父と電話で話した時、最初は子どもの話なんかをしていたのに、『試合したくない』みたいな流れになって、いつの間にか泣いていました。親父からは、こんなメールが届きました。〈前に、息子がジャンプする動画を送ってくれただろう？あれと同じじゃないか。子どもは誰かに見てもらうためにジャンプしているんじゃなくて、自分が成長しているのが嬉しくてジャンプしているだけだろう？〉これで変わりましたね。『村田諒太らしく、KOで勝たなきゃ』などと、気負わないようにした。あまり考えすぎず、シンプルに自分のできることをやる〉</span></p>
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<p>当時から、ゴロフキンとの戦いを最終目標にしていた村田。自分を“怖がり”と言いながらも、ゴロフキンに対しては、</p>
<p><span class="strongInContent">〈怪物・ゴロフキンが頂点に君臨していますが、怖くないですね。考えてみてください。会場にレフェリーとジャッジしかいなかったら、仮にやられても『やっぱり強かった』で終わり。観客がいて初めて、プレッシャーを感じる。それは『自分を失う怖さ』です。『村田、やられたな』と言われるかも、KOシーンを動画サイトにアップされるかも…という恐怖であって、ゴロフキンと戦うのが怖いわけじゃない。言うは易しですが、そういうメンタルに近づきたい〉</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="「不安がないわけないでしょう（笑）」"></div>
<h3>不安がないわけないでしょう（笑）。不安があるから成長できる。（’19年８月２日号）</h3>
<p>‘18年10月、WBA世界ミドル級王者として聖地・ラスベガスで挑戦者ブラントと対戦した村田は、大差の判定負けを喫した。「手数が足りない」「消極的」「もっと獰猛に攻めないと勝てない」とバッシングを浴びた。帰国後、村田は本誌記者に、</p>
<p><span class="strongInContent">〈引退を考えている〉</span></p>
<p>と漏らしていた。しかし、長男の、</p>
<p><span class="strongInContent">〈もう１回負けたらボクシングをやめてもいいよ〉</span></p>
<p>という言葉に燃えた。’19年７月12日に行われた再戦で２回２分34秒TKO勝ちを収め、９ヵ月ぶりの王者返り咲きを果たした。そのわずか数十分後、勝利の興奮冷めやらぬなか、新チャンピオンはこう穏やかに語ってくれた。</p>
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<p><span class="strongInContent">〈不安がないわけないでしょう（笑）。不安はあっていいと思います。不安があるから頑張れますし、不安があるから成長できる。人間的だからこそ、共感していただけるのだと思う〉</span></p>
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<p>そして、</p>
<p><span class="strongInContent">〈今回、初めてチャンピオンになれたと思っています。一度は世界一になれましたが、それは実力というより運と縁によるものだった。今回、自分を見つめ直して強くなり、そのうえで、タイトルを獲得できたことは、自分にとって凄く大きな人生経験だと思っています〉</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="「負けたことで大切なものが見えてくる」"></div>
<h3>負けたことで大切なものが見えてくる（’22年４月12日号）</h3>
<p>そして、運命のゴロフキン戦直前、村田の心は我々が想像した以上に穏やかに見えた。</p>
<p><span class="strongInContent">〈ボクシングは勝って騒がれることを目的としますが、負けたことで大切なものが見えてくる。敗北から得るものがあり、自分の人生に色が付いていくんです。先日、ふと夜中に目を覚まして、ホテルの窓から東京の夜景を見ました。奈良の田舎から出てきた俺が、東京にいる。ゴロフキンとの試合、日本中が注目してくれる試合をやろうとしている。</span></p>
<p><span class="strongInContent">ガキの頃、ボクシングを始めた頃のお前、中学時代に修学旅行で東京に来た頃のお前は、こんなこと想像していなかったよな？　お前にとってボクシングって何だ？　一番大事な物って何だい？　って自分に問いかけたんですね。その答えは、やっぱり家族でした。ここまで大事な試合を前にしないと、本当に大切な物を自分自身に問えなかったと思うんですよ。前を向いてゴロフキンに向かっていく今だから、こういう精神状態になれたのかな。それだけでも僕にとっては大きい〉</span></p>
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<p><span class="strongInContent">〈娘には『一生懸命やるよ。頑張るよ。でも勝つか負けるかは、神様しか知らないからね。勝つとは約束できないな』と話したのですが、小５の息子の発言が面白かったんですよ。『そうだね。試合って、試し合いって言うもんね』と。この言葉、以前やっていたメンタルトレーニングで耳にしたものと同じなんです。</span></p>
<p><span class="strongInContent">試合は力や技を試し合うことであって、100回やって100回勝つわけじゃない。だから〝試し合い〟なんですよね。息子の言葉を聞いて勇気付けられたというか、諭されたような感じがしました〉</span></p>
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<p>引退会見で村田は、このようにも語っている。</p>
<p><span class="strongInContent">「欲を出せば稼げたけど、それ以上のものが見つけられなかった。欲を求めてしまうんじゃないか、執着が芽生え始めている自分に気づいたのが、最大の引退理由かなと思う」</span></p>
<p>どこまでも正直で人間味あふれる村田の次なる挑戦をこれからも本誌は応援し続けたい。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="本誌が見てきた村田諒太の姿"></div>
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<figure id="attachment_303411" aria-describedby="caption-attachment-303411" style="width: 783px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="611e9e92"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/cff8343ce6ddbea528f7b3527ae901e7-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303411" class="wp-caption-text">デビュー戦直後のオフのひととき（&#8217;13年９月27日号）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_303331" aria-describedby="caption-attachment-303331" style="width: 1770px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="30773a1b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/b5637a4faf19d3ead0b58fdb34325fe5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303331" class="wp-caption-text">ロードワークをする村田（&#8217;16年９月５日号）</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_303335" aria-describedby="caption-attachment-303335" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6cd5d097"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/e02a19016104532b803f08a0af26e893.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303335" class="wp-caption-text">ゴロフキン戦直前の村田諒太（’22年４月12日号）</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_303336" aria-describedby="caption-attachment-303336" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="83c1bbe7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/db466a1fd2c29842a15fae802063df8b.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303336" class="wp-caption-text">ゴロフキン戦直前の村田諒太（’22年４月12日号）</figcaption></figure>
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福山将司、原一平（３枚目）鬼怒川毅（４、５枚目）

ブラント戦に勝利し、２度目のミドル級王者に輝いた直後の村田（&#8217;19年８月２日号） 「自分自身がこれからのキャリアをしっかり作って、競技だけが人生ではない、と示すことで、これからのボクサーだ

「怖いのは自分を失うこと」「不安があるから成長できる」現役引退の村田諒太が本誌に語っていた言葉

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