<figure id="attachment_303862" aria-describedby="caption-attachment-303862" style="width: 2233px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dc8c73c1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/2b6233f8ad6db8ddfe1e15760b0a2834.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303862" class="wp-caption-text">ボールまで最短距離で向かい、送球への移行や連携が速い。肩は強くないが、フィールディングで補った（写真左、町田氏本人提供）</figcaption></figure>
<p>セカンドに打ってしまえば望みはありません――。’08年夏の甲子園、常葉菊川(とこはきくがわ)高校（現・常葉大菊川高校）の二塁手、町田友潤(ともひろ)氏（32）がグラウンドを駆け回る姿を、実況はそう表現した。身長171㎝の小柄な身体が、プロ顔負けのフィールディングでゴロを捌(さば)き、一、二塁へ冷静に送球する。「甲子園史上最高のセカンド」と評され、常葉菊川４季連続甲子園出場の黄金期を支えた。だがその後彼は、プロはおろかアマ球界からも姿を消した。</p>
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<p>あれから15年、名セカンドの姿は浜松にあった。障害のある子供たちの放課後支援施設を運営する「株式会社Ｇｒｅｅ」の社長を務めているのだ。町田氏は、挫折を経験しながらも新しいフィールドで躍動している。 「『ＹｏｕＴｕｂｅでプレー集を見た』と言われることが増えました」と笑う町田氏だが、もともと守備は苦手だった。</p>



<p><span class="strongInContent">「１年の秋の地方大会で７つのエラーをしてチームに迷惑をかけた。それが嫌で、冬は全体練習に加えて、ショートの先輩とずっとノックを受けていました。当時の監督に言われたのは、プレーに対して『選択を誤るな』ということ。アウトにできても、それが正しい選択でないと良しとはならなかった。反対に、正しい選択をしてエラーしても『ヘボは練習や』と一言いわれるだけでした」</span></p>



<p>練習量に裏打ちされた堅守だった。’08年の夏、常葉菊川は決勝まで駒を進めたが、浅村栄斗(ひでと)（現・楽天）を擁(よう)する大阪桐蔭高校に０−17の大敗を喫した。</p>



<p><span class="strongInContent">「１学年上の佐藤由規(よしのり)さん（元ヤクルト）や、同学年の浅村のプレーを見て、圧倒的な差を感じました。プロに進むような選手は、身体の強さや潜在能力が違う。特に、調子が悪くてもここぞという時に結果を出すのがスゴいところ。もしプロに入れたとしても、結果を何年も出し続ける実力が自分にあるとは思えなかった」</span></p>



<p>卒業後は早稲田大学に進学、野球部に入部した。しかし１年経たずに退部、大学も辞めてしまった。町田氏は少し言葉を選びながら、経緯をこう話した。</p>



<p><span class="strongInContent">「大学での寮生活で……今なら聞き流せることも、当時は真に受けてしまっていました。自分自身が未熟でした。退部から約半年後、ヤマハの野球部に声をかけていただき、社会人野球に進む決心をしました」</span></p>
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<p>地元企業・ヤマハに&#8221;凱旋(がいせん)&#8221;した町田氏は、ファンに温かく迎えられた。だが、今度は身体が言うことを聞かない。</p>



<p><span class="strongInContent">「一度野球を離れた僕を拾ってもらった恩に報いるために頑張っていました。ところが、高校時代から悩まされていた腰痛が悪化したんです。大学から社会人へ、カテゴリーが上がるごとに誤魔化しが利かなくなる。結局、23歳で引退を決意しました」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="「いいプレーができた時の喜びに通じる」"></div>



<h2 class="wp-block-heading">「まちくん」と子供に呼ばれて</h2>



<p>引退後、選んだのは経験ゼロの「福祉」の道。きっかけは高校球児時代まで遡(さかのぼ)る。</p>



<p><span class="strongInContent">「’07年にセンバツで優勝した時の報告会で、ある親子に『町田さんのプレーが励みになりました』と声をかけていただいた。その子供が障害のある方で、野球でも勇気を届けられるのかと気付かされました。いつか引退した時は、障害のある子供たちに直接貢献できる存在になりたいと考えていたんです」</span></p>
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<p>ツテを辿って経験を積み、放課後支援施設「グリーピース」を開設した。障害のために社会での意思疎通が難しい子供をはじめとする約100人が通い、今年４月で施設は５ヵ所に拡大する。ビジネスとしても成功したが、そこに胡坐(あぐら)をかくようなことはない。町田氏は職員のひとりとして、子供と触れ合う時間を最大限作り、子供たちにも「まちくん、まちくん」と親しまれている。</p>



<p><span class="strongInContent">「野球で学んだことは今の仕事に活きています。二遊間はコミュニケーションが大事で、わかっていても細かい連携を確認する。施設では大切な命を預かっているので、職員間で安全面や支援方法などを、常に確認しています。子供たちはできなかったことができた時に喜びを大きく表現する。いいプレーができた時の喜びに通じるものがありますね」</span></p>
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<p>母校は10年ぶりの春の陣を迎えた。勝ち進めば、昨夏優勝の仙台育英や強豪の大阪桐蔭と決勝で当たる可能性があったが、初戦で専大松戸（千葉）に敗れてしまった。</p>



<p><span class="strongInContent">「初めて自分が出場した時は、優勝候補ではありませんでした。甲子園って何が起こるかわからない場所で、期間中にチームがすごい勢いで成長することもある。結果を求めるのではなく、今やれることをやってほしいと思います」</span></p>



<p>かつて甲子園を沸かせた天才のエールが、子供たちと夏に再び甲子園を目指す後輩の未来を後押しする。</p>
<figure id="attachment_303863" aria-describedby="caption-attachment-303863" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="333ad463"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/RE_SH542009.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303863" class="wp-caption-text">重い障害で意思疎通が難しい子供も、町田氏には時折心を開く。「とにかく安全な場所だと感じてもらうのが大切」（撮影：濱崎慎治）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_303864" aria-describedby="caption-attachment-303864" style="width: 1698px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="bf0284bc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/RE_SH542190-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303864" class="wp-caption-text">ひとり親家庭や児童養護施設の子供に野球道具を提供する一般社団法人「日本未来スポーツ振興協会」の静岡支部長も務める。「野球で人間性を鍛えてもらった。今度は野球界にも恩返しをする番だと思って参加しました」（撮影：濱崎慎治）</figcaption></figure>


本人提供（１枚目） 濱﨑慎治

ボールまで最短距離で向かい、送球への移行や連携が速い。肩は強くないが、フィールディングで補った（写真左、町田氏本人提供） セカンドに打ってしまえば望みはありません――。’08年夏の甲子園、常葉菊川(と

センバツに出場した静岡･常葉菊川OB「甲子園史上最高のセカンド」が｢福祉の世界｣で社長になるまで

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